S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。
構成銘柄の定期見直しは四半期ごとに行われ、新陳代謝を繰り返します。2025年に新たに採用されたのは21銘柄で、4年ぶりに20銘柄を超えました。今回は2025年12月22日からS&P500に加わったカーヴァナ[CVNA]やCRH[CRH]を含め、合わせて5銘柄をご紹介します。
カーヴァナ[CVNA]、自動車大国で中古車ビジネスを展開
サプライチェーンとオンライン販売の垂直統合が強み
カーヴァナ[CVNA]は2016年に創業した企業で、中古車売買のEコマース事業を手掛けています。買い手が求める多様な選択肢、高い品質、価格決定の透明性、簡素で負荷のかからない取引などを運営方針に掲げ、業容を拡大させています。
自動車関連サービスのコックス・オートモーティブによると、2024年の米国での中古車販売数(小売りベース)は3740万台。新車販売では年間3000万台を超える中国に水をあけられていますが、中古車を加えれば中国と肩を並べる水準です。自動車大国だけに市場規模は大きく、ビジネスの機会も広がっています。
カーヴァナの強みは垂直統合型のサプライチェーンとオンライン販売を組み合わせている点です。まず中古車の調達ですが、消費者からの直接的な買い取りをはじめ、中古車オークションや卸売業者からの買い取りなどで在庫を確保します。Eコマースのプラットフォームで売り手の消費者に接触し、直接買い取ることができればオークション費用などの節減につながります。
点検・補修から自動車ローン、自動車保険までカバー
消費者から買い取る場合は自社または外部の物流機能を使って売り手の自宅などに引き取りに行き、検査・整備センターに運びます。操作系統や各種機能、ブレーキ、タイヤ、外観などを点検し、自社規定に沿って機能面と外観の補修を行います。こうした整備を経て、基準を満たした車両だけがEコマースのウェブサイトに掲載されるのです。基準を満たせなければ卸売りに出して販売します。
ウェブサイトは検索やフィルタリングの機能が充実しており、利用者は在庫の中から好みや予算に見合った車両をピックアップすることができます。2024年末時点でウェブサイトに掲載されている中古車は5万3000台以上。外観と内装を全方位から眺められる360度イメージ画像を載せており、高画質の画像で外観の疵やへこみなどをチェックすることが可能です。
カーヴァナはまた、自動車ローンも手掛けています。さらに提携先の保険会社を通じて自動車保険も提供しており、自動車関連の金融をワンストップで済ませることもできます。
業績は2023年12月期に通年で初めて黒字に転換し、2024年12月期も黒字を維持してます。2024年通年の中古車販売数は前年比33%増の41万6348台でした。2025年は1-9月に43万3199台を販売しており、すでに2024年通年の実績を上回っています。
サンディスク[SNDK]、企業用サーバー需要増で急成長
「サンディスク」ブランドで知られるデータストレージ製品
サンディスク[SNDK]は、ウェスタン・デジタル[WDC]の全額出資子会社でしたが、2025年2月に完了した分社化を受け、上場企業として再スタートを切りました。ウェスタン・デジタルがハードディスクドライブ(HDD)技術に特化する一方、サンディスクはNANDフラシュ技術に基づくデータストレージ製品の開発と製造を手掛けています。
製品は「サンディスク」ブランドで販売しています。ただ、分社後の移行期ということもあり、一部の製品は「ウェスタン・デジタル」や「WD」のブランドで提供しています。
「エッジ」「コンシューマー」「データセンター」の3事業
売上高は最終市場別に「エッジ」、「コンシューマー」、「データセンター」に分かれています。「エッジ」事業ではパソコンやゲーム機、デコーダーなどにデータソリューションを提供するほか、携帯電話やノートブックパソコン、ウエアラブル端末、車載デバイスなどに向けた組み込み型のストレージ製品を開発しています。2025年6月期の売上高は前年比1%増の41億2700万ドルでした。
「コンシューマー」事業の売上高は横ばいの22億6800万ドル。SDカードやマイクロSDカードといったメモリーカードをはじめ、USBフラシュドライブなどを提供しています。
市場別で急成長しているのが「データセンター」事業です。高性能な企業向けのソリッドステートドライブ(SSD)を軸に展開し、企業用のサーバーなどで利用されています。最近では人工知能(AI)関連の作業で利用されるケースが増え、売上高は3倍の9億6000万ドルに急増しています。
株価は分社後、2025年8月ごろまでもみ合う展開が続いていましたが、9月以降に急騰し、時価総額がS&P500の採用基準である227億ドルを超えました。
CRH[CRH]、建設資材の製造・販売のスペシャリスト
CRH[CRH]は建設資材の製造と販売を手掛けています。骨材、セメント、コンクリート、アスファルトなどの基本資材に加え、建物の建設時に必要な鉄鋼製品なども提供します。
CRHの源流はアイルランドで1936年に創業したセメント社と1949年創業のロードストーン社に遡ります。両社は1970年に合併し、CRHが誕生しました。米国への進出は1978年で、コンクリートメーカーを買収し、足場を築きました。その後も建設資材メーカーを相次いで買収し、事業を拡大させています。
現在の主力マーケットは米国で、2024年12月期の売上比率は約58%に上ります。ただ、今もアイルランドに本社を置くなど欧州でのプレゼンスは大きく、欧州を中心とする国際部門は売上比率が39%に達しています。
CRHは28ヶ国で事業を展開しており、製造機能も広範な地域に点在しています。セメント工場は米国南部に4ヶ所、西部に6ヶ所、五大湖周辺に2ヶ所で合わせて12ヶ所。欧州では英国、アイルランド、フランス、ポーランド、ウクライナ、ルーマニア、スロバキアに計16ヶ所、アジア太平洋ではオーストラリアとフィリピンに計7ヶ所のセメント工場を稼働させています。
また、骨材やセメントなどの原材料となる砕石、砂、砂利、石灰なども自社採掘で調達します。北米や欧州、オーストラリア、フィリピンに採掘場を持っています。
アレス・マネジメント[ARES]、オルタナティブ投資の運用会社
アレス・マネジメント[ARES]はオルタナティブ投資の運用会社です。オルタナティブ投資は、上場株式や債券といった伝統的な投資対象とは異なる対象への投資を意味します。アレス・マネジメントはクレジット、不動産、プライベート・エクィティ(未公開株)などに投資し、2024年末時点の運用資産額は4844億ドルに上ります。
運用資産額の内訳は、企業への融資をはじめ債権や証券に投資するクレジット部門が3488億ドルに上ります。中でも企業に直接資金を貸し付けるダイレクトレンディングが2337億ドルと運用資産全体の約48%を占めています。このほかではシンジケートローンやハイイールド債などに投資するリキッド・クレジットが469億ドル、不動産やプライベート・エクィティに投資するオルタナティブ・クレジットが415億ドルに上ります。
リアル資産部門では不動産やインフラに投資し、運用資産額は753億ドル。プライベート・エクィティ部門は北米、欧州、アジア太平洋の未上場企業に投資しており、運用資産額は240億ドルです。また、セカンダリー投資部門はプライベート・エクィティや不動産、インフラ、クレジットのセカンダリー市場に投資し、運用資産額は292億ドルに上ります。
業績は堅調で、2024年12月期決算は経常収益が前年比6.1%増の42億1500万ドル、純利益が9.5%減の4億1000ドルです。純利益は2年ぶりに減少に転じましたが、4億ドルを確保するなど高水準を維持しています。
コンフォート・システムズUSA[FIX]、建物の機械工事が中核
米国136都市でサービスを展開
コンフォート・システムズUSA[FIX]は建物の機械・電気工事を手掛けています。米国の136都市でサービスを提供します。
主力事業は機械工事サービスで、2024年12月期の売上高の約79%を占めています。暖房・換気・空調(HVAC)の空調システムに加え、配管や機械系統の制御、モニタリング、防火システムなどが工事の対象です。電気工事サービスの売上比率は21%で、電気系統全般の据え付けを担います。
工事の主な対象は、工場、病院、学校、店舗、政府庁舎などで、機械・電気システムの据え付けだけではなく、保守、修理、交換も手掛けています。
エンジニアリング企業の好調の背景にある、データセンターの建設需要
米国では人工知能(AI)時代に技能の高い肉体労働者が高収入を得る「ブルーカラービリオネア」現象が注目を集めました。株式市場でも2025年9月にエンジニアリングのエムコア・グループ[EME]がS&P500に採用され、同業のコンフォート・システムズUSAが12月に採用銘柄になるなど、こうした流れには共通項があるようです。
ただ、エンジニアリング企業が注目を集める現象のもとをたどれば、AIのトレーニングに必要なデータセンターの建設需要に行き着きます。コンフォート・システムズUSAとエムコアはそれぞれ2024年12月期決算が好調でしたが、データセンターの建設が活発化し、機械工事部門や電気工事部門の売上高を押し上げたことが好業績に結びついています。
コンフォート・システムズUSAの2024年12月期決算は売上高が前年比35.0%増の70億2700万ドル、純利益が61.5%増の5億2200万ドルと順調に成長しています。
