あけましておめでとうございます。本年も、皆様の投資のお役に立てる「分析」をお届けできるよう頑張りますので、引き続きご愛読いただけますと幸いです。さて、2026年も大発会は急騰となかなか熱いスタートとなりました。年初早々の米国によるベネズエラ大統領連行というニュースには度肝を抜かれましたが、今のところ、株式市場は地政学リスクの台頭には至らないという判断なのでしょう。むしろ、年末年始にはガソリン価格が目に見えて低下し、税制見直しや補助施策の効果を実感された方も多いのではないでしょうか。これは物価抑制効果のみならず、「変化が見える」ことで、景気を形成する「気」を高揚させる可能性があります。株式市場はまず、そうした雰囲気の改善に素直に反応したと位置づけたいところです。しばらくはこのような「気」の効果が株式市場を牽引するのではないかと期待しています。
フィジカルAIとは?生成AIとの違いは何か
さて、今回は「フィジカルAI」をテーマに取り上げてみたいと思います。この言葉にはまだなじみのない方も多いかもしれませんが、2026年は一気にこのワードの注目度が高まるのではないかと予想しています。まずはこの「フィジカルAI」とは何か、というところから始めてみましょう。
フィジカルAIを大ざっぱに言ってしまうと、カメラやセンサーを通じて「見る」ことによって「状況を判断」し、それに基づいて「物理的な行動・操作を行う」AIのことを指します。これまで注目されてきた生成AIとの違いは、生成AIが画像のパターン認識や文章・画像の生成などサイバー空間で活用されてきたのに対し、フィジカルAIはそれに物理的検知を加え、実際にモノを動かすという点にあると言えるでしょう。くだけた言い方をすれば、生成AIは資料作成や判断材料の提示までが限界であるのに対し、フィジカルAIは現実に物理的な作業をこなす役割まで期待できるということになります。
その代表例がロボット技術や自動運転技術などです。いずれも機械的な作業・操作はAIがなくとも既に可能ですが、一定の範囲内での活用にとどまっており、刻一刻と変化する状況に合わせた臨機応変な対応までは現時点で難しいものがあります。AIによってそれら臨機応変な対応まで可能にしようというアプローチこそがフィジカルAIなのです。フィジカルAIの活躍する世界は、まさにSFの世界の実現に大きく近づく一歩になると言えるのかもしれません。
フィジカルAI浸透のハードルは生成AIより高い
しかし、これは簡単ではありません。そもそも臨機応変な対応というのは一定以上の経験や知見が必要で、人間はデータの少ない未知の事例に直面してもそうした知見を応用して合理的な判断・行動を選択しています。ところが、AIにその役割を背負わせるとなると、極めて膨大なデータ量を学習させる必要があります。同時に、失敗発生頻度が極めて低いという信頼も確立させなければなりません。もし不測の事態への対応をAIが失敗すれば、物理的な行動・操作を伴うために大惨事を引き起こしかねないためです。そのようなリスクとコストを考えれば、従来通り、人間による処理の方が安価で、即効性があり、確実という判断も根強く残るでしょう。つまり、フィジカルAI浸透のハードルは生成AIよりもはるかに高いと言えるのです。
それでも注目度が高まると予想するのは、AI技術の進化が強烈な日進月歩であるうえ、世界的なAI企業がこぞってこの領域への研究投資を拡大させているからに他なりません。実世界での課題解決につながるフィジカルAIの進化には、どの企業もいち早く先駆けておきたいということなのでしょう。
2022年秋のOpen AI社によるChatGPT公開を契機とした生成AIの領域は、それからわずか3年程度で急速に我々の生活に浸透しました。フィジカルAIにおいても何かを契機にして一気に市場が広がる可能性は十分に大きいと言えます。既にAI分野における中核企業の1つであるエヌビディア[NVDA]はフィジカルAIを「フロンティア」と表現し、注力する姿勢を鮮明にしていますし、ヒト型ロボットを手掛ける企業も続々と名乗りを挙げているというのが世界的な動きなのです。
日本企業のビジネスチャンスと予想されるリスク
では、日本企業はどうでしょうか。おそらく日本企業がその存在感を発揮するのは、「見る」というプロセスのカギとなるカメラやセンサー、そして物理的な行動・操作を行う駆動装置などのハード製品になるでしょう。これらハードの領域は日本企業のお家芸でもあり、その部材・部品では世界的に代替不可能な製品を多く生み出しています。AIが現実世界に実装されればされるほど、ハード領域のビジネスチャンスは広がるものと予想します。
加えて、日本にはモノづくり技術の核となる多くの知見や経験が蓄積されているという点も競争力の源泉となる可能性があります。AIがサイバー空間から現実の世界へと波及するにしたがい、日本のお家芸の重要性はさらに高まるのではないかと期待しています。
ただし、現在は代替不可能な製品も、その製造プロセスがAIシステムによって汎用化されてしまえば、後発企業の参入を容易にします。日本のお家芸はあっという間に競争力を失うリスクがあります。フィジカルAIが進化する中で、日本の持つ知見や経験の競争力をどのように維持するのか、日本企業は戦略的に捉える必要があるでしょう。こうした戦略性が問われることもまた確かなのです。
フィジカルAIの拡大で期待される関連銘柄
関連する企業としては、前述のエヌビディア[NVDA]に加え、ヒト型ロボットの実用化に注力しているテスラ[TSLA]などがグローバル企業として挙げられるでしょう。国内企業では、やはりエヌビディア[NVDA]との連携を進める日立製作所(6501)、富士通(6702)に加え、ロボット関連で世界的プレイヤーであるファナック(6954)、安川電機(6506)、三菱電機(6503)などの企業群はその筆頭と位置づけられます。
その他のハード製品では、センサーや駆動装置関連として、ミネベアミツミ(6479)、ソニーグループ(6758)、ナブテスコ(6268)、ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)、オプテックスグループ(6914)、ソフトバンクグループ(9984)などの名前にも注目しておきたいところです。
