スパークス・グループ(8739)が株主優待を導入
12月19日にスパークス・グループ(8739)(以下、スパークス)が新たに株主優待を導入しました。300株以上の株主に対して、プレミアム優待倶楽部という株主優待の取扱サイトで利用できるポイントを付与するものです。付与は半年に1回で、たとえば300株保有の場合、半年ごとに2,000ポイントが付与され、当該サイトで食品・宿泊券などに交換できます。交換対象はいわゆるカタログギフトなどを想像していただくとよさそうです。商品との交換なので、交換レートが有利な商品・不利な商品はありそうですが、基本は1ポイント1円相当とされているようです。
「株主優待が増加の背景、優待開始がこれから見込まれる会社は?」の記事で解説したように、一時は減少していた株主優待はアクティビストの投資が増えている影響などから、増加傾向にあります。これは会社が個人株主を含む株主との関係性を重視する傾向を示していると言えそうです。
上記のプレミアム優待倶楽部はウィルズ(4482)という会社が提供しているサービスです。従来は株主優待と言えば、一方的に株主に商品券や商品などを送る場合が多数でした。ところが、最近はこのようにウェブサイトに登録などを行うものが増えています。こういう形式であれば、個人株主への情報提供やアンケートなどが容易に行えるということでしょう。三井住友信託銀行では「株主パスポート」というアプリを提供しています。会社によってはこのようなアプリを使って株主優待を利用できるようにしているようです。
スパークスの優待内容は株数が増えるほど有利な設計、その意図は?
さて、スパークスの株主優待は、300株以上の株主が対象となります。もちろん、スパークスも100株から株式が買える会社です。多くの会社は株主優待の対象を比較的少額で購入できる100株からに設定し、株数を増やすと優待が増える場合でも100株を有利にしていることが多いです。特に小売業や個人向けのメーカーなどは自社ファンを増やそうということもあってか、そういう傾向が強そうです。
スパークスは投資信託の運用会社で、もちろん個人向けの投資信託もあります。株主として重視しているのは投資金額かも知れません。株数に対し付与されるポイント数がなかなか面白く、300株で半年ごとに2,000ポイントが付与されますが、600株の場合、半年ごとに8,000ポイントとなり、株数が倍になると付与ポイントは4倍となっています。600株保有の方が株数あたりの優待は大きく有利な設計になっているのです。
1,500株では半期ごとに25,000ポイントで、これは600株よりさらに有利です。スパークスはより多くの株を持ってほしいというメッセージがあるようです。この後に触れるように、株主優待の設定などを考える際は、このような会社側の意図を考えることが非常に大事です。
ニュースや決算説明、株主優待などで「株主優待」への意図が見える場合も
12月19日の取引時間終了後にスパークスの優待導入が発表されました。それを受けた週明けの取引ではスパークス株が大きく買われ、12月19日の終値1,500円から80円上げた1,580円で取引が始まり、高値では1,595円まで上昇、最終的にはほぼ始値と同水準の1,577円で取引を終了しています。実に5%程度の値上がりで、株主優待の導入の株価への好影響は引き続き大きい印象です。
今回のスパークスの優待導入で興味深かった点は、10月の時点で同社の阿部社長が株主優待の導入を検討というニュースが報じられていた点です。10月10日のブルームバーグの記事で、「スパークスが株主優待検討、余裕資金で還元強化-成長性向上も目指す」と報じられ、阿部社長は同社の「安定性や収益性が株主に十分に評価されていないとみて、成長性を向上させるとともに株主還元を積極的に行う考えを示した」とされています。
報道を受け、10月9日終値で1,571円だった株価は10月10日に1,647円と大きく上昇しました。しかし、10月14日には1,577円と報道前の水準に戻ってしまいました。その後、10月31日に決算発表があったのですが、その際も優待の発表はなかったこともあり、株価は11月5日には1,422円と大きく下落しました。その後、12月19日に1,500円まで回復しました。同日の16時に優待の導入発表がありました。このように、株主優待については報道などで経営者が導入意向などを発表することもあり、ニュースや決算説明会、株主総会などで株主優待についてどのように話しているかは非常に注目できます。まさに、会社側の意図が見えるからです。
「優待開始」見込みの会社、6社のうち3社が優待を開始
「株主優待が増加の背景、優待開始がこれから見込まれる会社は?」の記事では、株主優待の開始が見込まれる会社について説明しました。具体的には、(当時の数字で)外食の会社は109社あり、そのうち6社だけが株主優待を行っておらず、今後株主優待が見込まれるのではないかとしたものです。実際、その6社のうち、3社が記事掲載後に株主優待を開始しています。実際の記事の記載内容と優待開始については以下のとおりです。
サイゼリヤ(7581)は優待再開の可能性は薄いか
→サイゼリヤは株主優待開始せず
ホリイフードサービス(3077)、マルシェ(7524)は優待再開の可能性あるか
→ホリイフードは11月4日に株主優待開始、マルシェは株主優待開始せず
フレンドリー(8209)は優待再開の見通しは厳しいか?ゼネラル・オイスター(3224)は可能性あり
→フレンドリーは株主優待開始せず、ゼネラル・オイスターは12月10日に株主優待開始
優待開始の可能性が最も高い光フードサービス(138A)
→光フードは10月14日に株主優待開始
上記のように、株主優待の開始(一部は再開です)を見込んだ会社は概ね株主優待を開始しています。株主優待を開始する可能性があると見たなかで、開始していないのはマルシェのみです。マルシェは業績もまだ厳しい印象ですが、出資している会社のグループが優待を実施していることもあり、引き続き可能性はあるように思えます。各社とも株主優待の開始発表後は株価が大きく上昇しており、株主優待の導入には引き続き注目してよさそうです。
「優待開始の可能性が最も高い」とした光フードは、経営者が実際に決算説明会などで「現在、株主優待の準備等は粛々と進めておりますので、そちらの方はご期待いただければと思っております」という発言から可能性が高いとみたとおり、同社は有言実行だったと言えるでしょう。いずれにせよ直近では、アクティビストなど株主との関係や新しいNISA制度の開始に伴う個人株主の増加基調などの背景もあり、企業側で株主優待を開始しようという意欲が高まっています。このように株主優待開始を予測して投資するのも面白いのではないでしょうか。
「鉄道」業界は株主優待の拡充が目立つ
先述の記事で書いたように、飲食店のような株主優待と相性のいい業界はあり、その業界でまだ優待を導入していない会社には注目できそうです。そこで今回は、2つの業界に注目したいと思います。まず、直近で優待の拡充が相次いでいる鉄道業界です。「9月の配当・優待落ちで株価下落の鉄道会社、2026年3月に向けて仕込み時か?」の記事でも解説しましたが、鉄道業界は保有資産などの関係でアクティビストの投資も続いており、個人株主との関係強化を重視してると考えられます。
株主優待の拡充としては、東武鉄道(9001)が11月26日、近鉄グループホールディングス(9041)が11月14日、京浜急行電鉄(9006)と京成電鉄(9009)が10月31日と、直近でも相次いでいます。今年度で優待を拡充した他社もあり、こうした動きは続きそうです。ただ、いずれも対象となる株数を増やすことや対象施設を増やすという内容で、株価に大きく影響がした印象はありません。ただ、各社とも増配を含めて株主還元に努めている状況は注目してよいでしょう。
鉄道会社やバス会社はすべての会社が株主優待を実施しており、開始という観点では妙味が薄いものの、拡充の方向性では、興味深いものとして、現在200株の株主からという条件を100株からにすることはありえそうです。鉄道会社やバス会社の優待はもちろん乗車券が中心です。また、グループ会社が多いこともあり、グループ各社(スーパーなどの小売店や、ホテル、観光施設など)の優待券を冊子などで配るものも多数です。
しかし、その提供方法は会社によって違いがあり、100株株主から乗車券を優待としている会社もあれば、100株株主には乗車券は提供せず、一定株数からのみ乗車券とし、100株株主には他の優待を提供している会社もあります。また、100株では優待対象とせず、一定株数以上を対象としている会社もあります。もともと、100株では対象としていない会社も多かったのですが、100株の株主も対象にする会社が増えてきています。
たとえば、相鉄ホールディングス(9003)は基本的には200株以上の株主を優待対象としているものの、100株株主も3月のみ乗車券を優待としています。東日本旅客鉄道(9020)は、鉄道の割引券は300株以上の株主のみが対象で、100株の株主には株主限定イベントへの招待(抽選)のみです。
鉄道業界で注目の会社は?優待の拡充で株価への好影響も期待か
こうした中で、注目できそうなのは優待対象を100株ではなく、一定株数以上としている会社です。主要な鉄道会社でいうと、東京地下鉄(9023)が200株以上、名古屋鉄道(9048)が200株以上、小田急電鉄(9007)は500株以上、京阪ホールディングス(9045)は300株以上です。上場して間もない東京地下鉄や優待を変更して間もない京阪については優待の変更は想像しにくいですが、他の2社はチャンスがありそうです。
鉄道会社の優待は先ほども書いたように乗車券が多くなっており、基本的にその会社の全線で乗れるものになっています。たとえば、相鉄や東急(9005)はそもそも路線網が限定的でもっとも高い運賃も限定的なため、優待として乗車券を配布しやすいというのはありそうです。両社も新横浜への延伸で高い運賃も出ていますが、東急の場合500円、相鉄の場合は440円です。近鉄や東武鉄道(9001)は路線網が大きく、近鉄の場合、大阪難波から近鉄名古屋の運賃は2,860円、東武の浅草から新藤原は1,590円です。東武、近鉄はそもそも株価が2,500円を超えており、100株の金額も大きくなっています。
その意味では、上記の2社で路線が長い名古屋鉄道は株価も1,600円台のため、3社の中では劣後しそうです。小田急はもう少し路線は限定的で、株価こそ同じく1,600円台ですが、乗車券は500株からなので、変更の可能性はより高そうに思われます。もっとも、鉄道会社の場合、もともと株主優待を実施していることもあり、拡充により飲食店ほど大きな影響はなさそうですが、一定の株価への好影響は期待できるでしょう。
「食品」業界も注目、まだ優待を実施していない会社で見込みが高いのは?
もう一つ注目できそうな業界は食品です。もともと食品会社も個人向けのビジネスということで優待を実施している会社が多数です。直近でもカルビー(2229)が11月5日に株主優待の導入を発表しました。決算発表・増配と同時だったので、影響の分析は難しいですが、決算を受けて下落していた株価が下げ止まったようにも映ります。ほかに、明治ホールディングス(2269)も12月5日に優待の拡充(長期株主への感謝BOX追加)を発表しています。
食品会社はほとんどと言っていいほど株主優待を実施していますが、その中で実施していない主要な会社は雪印メグミルク(2270)、アサヒグループホールディングス(2502)、サントリー食品インターナショナル(2587)、ニチレイ(2871)です。アサヒは2023年をもって優待を終了、ニチレイは2011年をもって優待を終了しています。雪印とサントリーは会社のウェブサイトでは、比較的強く優待よりも配当という旨を書いています。質問も多いのかも知れません。
これらを見ると、優待を開始する会社は見込みにくい印象ですが、優待廃止の2社よりは雪印とサントリーの見込みが上でしょうか。アサヒは直近でシステム攻撃を受けており、株価も落ちていることが判断に影響する可能性もあるのかも知れません。
より小さな食品会社であれば、もう少し面白い例もありそうです。優待等に関心がある方は、気になる内容などをこの画面下部のアンケート欄からぜひ教えてください。
