円安が止まらぬ為替市場

日銀が19日の金融政策決定会合で利上げを決定したにもかかわらず、為替市場では円安が止まらず、ニューヨーク市場では一時1ドル=157円台後半まで円が売られた。利上げそのものよりも、植田和男総裁の会見内容を「追加利上げには慎重」と受け止め、日米金利差が当面縮小しにくいとの見方を強めたとの解説がされている。概ねその通りなのだが、ポイントは植田さんのスタンス云々ではなく、「中立金利の下限」などという言葉を持ち出したことが、致命傷である。

『2026年 日本株相場展望』で為替について触れた時にも述べているが、中立金利の下限を1%とするなら、あと1回の利上げで届く。そうなれば、そのあと1回の利上げは相当慎重にならざるをえない。植田総裁は利上げ後の政策金利は「(中立水準の)下限にはまだ少し距離がある」と述べたが、逆に言えば、少ししか距離がないのである。つまり、そんなにガンガン利上げできる状況にはないと宣言したも同じである。これでは為替プレーヤーは安心して円を売るだろう。

25日経団連審議員会での植田総裁の講演内容に注目

この円安基調は、日本株にとって短期的にはプラス材料である。特に外需株や指数寄与度の高い大型株にとっては、業績の円換算押し上げ効果が意識されやすく、株価の下支え要因となる。一方で、為替の動きが急である分、日銀の政策姿勢に対する市場の不信感が残る点は無視できず、植田総裁が25日に予定している講演は今週最大の国内注目イベントとなる。植田さんの耳にも批判は届いているだろうから、巻き返しを意図してタカ派的な発言が出るかもしれない。

そうは言っても植田総裁の講演がよほどタカ派的でない限り、円安トレンドが一気に反転する可能性は低い。投機筋のポジションや過去の経緯などから、ここでの介入は効果なしと市場も見切っている。

閑散相場の波乱注意

しかし今週はクリスマスウィークだ。海外勢が不在で閑散相場となるなか、波乱には備えておきたい。

先週末19日の米株式市場では、オラクルをはじめとするAI関連株が軒並み上昇しており、ハイテク株への資金回帰が確認された。これを受けて、東京市場でも半導体関連やAI関連銘柄が物色され、高く始まる可能性が高い。ただし、米国では年末を控えた利益確定売りも出やすく、一本調子の上昇にはなりにくい点には注意が必要である。

内需ディフェンシブや高配当株は、年末の資金置き場として引き続き選好され、指数の下値を支える役割を果たすだろう。

予想レンジは4万9500円-5万1000円とする。