上海総合指数は10年以上ぶりとなる高値を更新

中国株の2025年9月30日終値~2025年10月31日終値までの騰落率について、上海総合指数は+1.9%、香港ハンセン指数は-3.5%とまちまちの動きとなっています。中国本土株は上昇しており、米中首脳会談前日の10月29日(水)には、中国本土株の代表的な株価指数である上海総合指数が、終値ベースで10年以上ぶりとなる高値を更新しました。上海と深センに上場している大型300株で構成されるCSI300指数も同様です。米中首脳は貿易摩擦緩和のために、関税を下げ、中国のレアアース規制を1年延期しました。

香港市場は米中貿易交渉への期待から、伝統的な業種・銘柄が選好された


一方、香港市場の方はハイテク株が調整しており、9月に大きく上昇した後に調整する形となっています。ハンセンテック指数の構成銘柄で、10月に上昇したのはビリビリ(09626)だけでした。下落率の大きい銘柄は理想汽車(02015)、小米集団(01810)、センスタイム(000020)、舜宇光学科技(02382)、金蝶国際軟件(00268)などで、大体15%~20%ほど下げました。ハンセンテック指数は月間で8.6%安となっています。

10月の香港市場では米中貿易交渉への期待から、ハイテクよりも伝統的な業種・銘柄が選好された模様で、香港市場でもハンセン指数採用の恒生銀行(00011)、中国石油天然気(00857)、中国農業銀行(01288)、中国人寿保険(02628)が10月に大きく上昇したほか、関税緩和期待から申洲国際集団(02313)なども大きく上昇しました。

しかし、2025年初来で見ると、ハイテク株の上昇率が圧倒しており、半導体ファウンドリー大手2社やアリババ集団(09988)、地平線機器人(09660)などが+100%超の上昇率となっています。ほかにも、小鵬汽車(09868)、快手科技(01024)、金蝶国際軟件(00268)、センスタイム(000020)、網易(09999)、テンセント(00700)なども大きく上昇しています。

中国のAIバブルは終わったのか?

中国のAIバブルは終わってしまったのでしょうか?さきほどの上昇率上位銘柄にも出てきた金蝶国際軟件(00268)は、ERPなど企業向けソフトウェアで中国2位の企業です。2025年1月末のディープシーク登場によって中国AIブームに最も乗った銘柄の一つと言えるでしょう。しかし「ディープシーク・モーメント」と呼ばれたAI熱狂は沈静化し、前述したように特に10月はハンセンテック指数が調整気味に推移する中、同指数採用銘柄の中で最も大きく下げている銘柄の1つとなっています。

中国ITセクター全体がAIブームの期待剥落期に入ったのでは?との懸念は、世界的なAIブーム・熱狂に湧く相場の持続性も合わせ、議論の尽きないテーマといえ、今のところ正確な答えが分かる人はいないでしょう。しかし、少なくとも当初期待されていた生成AIが直ちに利益を生むという期待は剥落してきている様子です。将来的にAIによって利益が拡大するとしても、現時点では収益モデルが見えにくく、確立まで相当な時間がかかると考えられます。

AIクラウド事業は依然として薄利構造

生成AIは中国でも急速に普及しています。ディープシーク、テンセント、アリババ、バイドゥ、ファーウェイ、センスタイム、JDなどのテック大手のほか、多数の新興AI企業も参入し、それぞれ独自のAIモデルを提供して、累計5億人を超えるユーザーがサービスを利用しています。

しかしながら、無料または低価格で利用可能なAIサービスが乱立し、収益化(利益化)が困難な状況です。アリババ集団(09988)やテンセント(00700)、百度(09888)のAIクラウド事業も依然として薄利構造で、価格競争と電力コストで3年間は赤字継続見通しとの予想も出ています。AI関連投資が嵩み、フリーキャッシュフローも圧迫されています。もっとも、これは中国に限った話ではなく、米国のOpenAI、Anthropic、xAIなども生成AIでまだ明確な利益モデルを持っていない(すべて赤字)という点で共通します。

それでも「OpenAI」などが1兆ドル規模でAIインフラ投資を進めるのは、利益化、つまり投資を回収できるかという視点よりも、誰が次世代の情報インフラ基盤を支配するかという「覇権争い」に没頭しているように見えます。明確な利益モデルを確立するより先に、投資回収という収益率よりも、「領土確保」を何よりも優先しているようで、大きな賭けとも言えるでしょう。このあたりの「生成AIがどれほどの利益を生むのか(今の株高を支える上では少なくとも数百兆円単位で生む必要ある)」という議論は、あまりにも大きなテーマで、現時点では答えが出ていないのです。

中国AI関連株はテック自立化という国策による追い風を受けている

2025年1月末に起きたディープシークによる中国生成AIが、ソフトウェア企業に革新的な新サービスを与え、直ちに新たな利益成長ドライバーになるという期待は萎んできていると考えられます。当初アナリストはハンセンテック指数採用企業の利益予想を引き上げましたが、早期の利益寄与は望めなくなり、8月以降の予想利益は大幅に引き下げられています。金蝶国際軟件(00268)の株価も第1四半期は期待先行で大幅上昇、第2四半期も上昇しましたが、8月に19.00の高値を付けてからは大きく下げており、中国テック指数の利益予想の下方修正と一致した動きとなっています。

当初見られた生成AIが新たな成長ビジネスを生むという期待は中国のAI関連株全体として実現しておらず、その期待剥奪で株価は調整しています。しかし、金蝶国際軟件(00268)はクラウドを中心としたサブスクリプションファーストの戦略が進んでおり、緩やかな成長は実現しています。中国AI関連株はテック自立化という国策による追い風を受けている様子もあります。ディープシーク・モーメント時に期待されたような即効性のある高成長は期待しにくくなりましたが、緩やかで着実な成長が続くことは予想され、株価の底打ちを待ちたいところでもあります。