モトリーフール米国本社 – 2025年11月4日 投稿記事より
キンバリークラークが消費者向けヘルス&ウェルネスの巨大企業を誕生させる
キンバリークラーク[KMB] は、ケンビュー[KVUE]を現金と株式による総額487億ドルで買収することに合意しました。この合併により、売上高320億ドル規模の健康・ウェルネス分野における世界的なリーダー企業が誕生し、年間売上10億ドルを超えるブランド10以上を擁することになります。
両社は、いずれも「配当王」として50年超にわたって毎年配当を増額し続けてきた実績を持っています。今回の買収により、統合後の新会社が長期保有に適したさらに優良なインカム株となるかが注目されています。
2026年下半期に合併に伴う取引を完了予定
キンバリークラークは、現金と株式を組み合わせた形でケンビューを買収します。ケンビューの株主は1株あたり現金3.50ドルとキンバリークラークの株式0.14625株を受け取ります。本取引によるケンビュー株式1株当たりの評価額は21.01ドル、企業価値総額は487億ドルとなります。取引完了後、既存のキンバリークラーク株主は合併会社の約54%を保有し、ケンビュー株主は約46%を保有することになります。
両社は、本取引が2026年下半期に完了する予定としています。キンバリークラークは、取引の現金部分である68億ドルを、手元資金、新規借入、および海外(米国外)ファミリーケア事業ならびにプロフェッショナル向け事業における51%の持分売却による収入で賄う予定です。
合併の背景と狙い、統合後の新会社は年間320億ドルの売上高を見込む
キンバリークラークとケンビューの今回の合併は、より大規模な消費者向け健康・ウェルネス企業を誕生させることになります。統合後の新会社は年間320億ドルの売上高を見込み、これはプロクター・アンド・ギャンブル[PG](年間の健康・ウェルネス売上高540億ドル)に次ぐ第2位の規模となります。新会社は、ハギーズ(Huggies)、クリネックス、リステリン、タイレノールなど、年間売上が10億ドルを超える10のブランドを保有することになります。
この大幅な規模拡大により、両社は大きなシナジー効果を得ることができます。キンバリークラークは、コスト面で約19億ドル、収益面で約5億ドルのシナジー効果を見込んでいます。ただし、その一部は約3億ドルの再投資によって相殺される予定です。最終的に、同社は取引完了後4年以内に、この21億ドルの純利益を確保できると予測しています。
この規模拡大は、ケンビューが2023年にジョンソン・エンド・ジョンソンから分離して独立して以降、直面してきた課題の解決にも役立つとみられています。同社はタイレノールをはじめとする製品に関連する市場の課題や法的問題に対処してきました。この過程でCEOが交代し、戦略的選択肢の見直しが進められ、その最終的な結論としてキンバリークラークとの合併に至りました。
両社50年以上増配してきたが、今後の配当への影響は?
キンバリークラークは長年にわたり強力なブランド力を背景に、安定した配当を支払ってきた企業です。同社は91年連続で配当を支払い、過去53年連続で増配しています。一方、ケンビューも63年連続で増配している旧親会社であるジョンソン・エンド・ジョンソンの配当実績を継承しています。
合併後の新会社も、増配を継続できる強固な財務基盤を有していると考えられます。キンバリークラークは買収資金調達のために一時的に負債を増加させていますが、取引完了後2年以内に負債比率を2倍前後まで引き下げることを目指しています。これは足元の信用格付けと整合する、強固なバランスシートを維持する方針に沿ったものです。
潜在的に高リスク・高リターンの取引
しかしながら、本取引にはリスクも存在します。ケンビューは独立企業となって以降、業績が振るわない状況が続いています。さらに、タイレノールと自閉症との関連性を示唆する研究により、潜在的な訴訟リスクに直面しています。加えて、ベビーパウダー製品が癌を引き起こしたという主張をめぐる訴訟も抱えています。
規模が拡大することで、こうした潜在的な法的問題に対処する上で、より有利な立場にあるものの、依然として多額の訴訟費用が発生する可能性があります。これらは株価の下押し要因となる恐れがあり、将来的に配当成長能力に影響を与える恐れがあります。
キンバリークラークとケンビューの合併により、大幅なコスト削減と、ケンビューが抱える法的課題への対応に大きく貢献するでしょう。こうした法的課題を抱える今回の合併はリスクが伴いますが、これらの逆風が収束した際には、合併企業はより強固な基盤を築き、株主価値を高める体制が整うでしょう。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Matt DiLalloはジョンソン・エンド・ジョンソンおよびケンビューの株式を保有しており、以下のオプションを保有しています。ケンビューの2025年12月満期の16ドルプットのショート。モトリーフール米国本社はケンビューの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はジョンソン・エンド・ジョンソンの株式を推奨し、以下のオプションを推奨しています。ケンビューの2026年1月満期の13ドルコールのロング。モトリーフールは情報開示方針を定めています。
