インフレを恐れて慌てて投資する人が増えている

日本でもようやく経済のインフレ基調が定着し、預貯金を保有しているリスクが認識され始めました。給与が上がりにくい中、物価上昇に対応するために資産運用に興味を持つ人も増えています。しかし、慌てて投資を始めて投資詐欺にあったり、思うような投資の結果が得られない人も増えています。

利回りが高い不動産は当然ハイリスク

年金だけでは毎月の生活費に不安がある人にとって、定期的に家賃収入が入ってくる不動産投資は魅力的です。一方で日本国内でも不動産価格は上昇しており、賃貸利回りは相対的に低くなっています。そのような中、高い利回りが安定的に得られると宣伝される不動産投資商品は特にまとまった現金を持つシニアに人気です。

しかし、投資対象をしっかり調べた上で判断をしなければ思わぬ罠にはまってしまいます。利回りが高いということは当然その分リスクも高いからです。中には、年配者で投資に失敗して、受け取った退職金の大半を失ってしまう人も出ています。

「みんなで大家さん」が投資家とトラブルに

最近、メディアで報道されているのが「みんなで大家さん」という不動産投資商品に関わるトラブルです。「みんなで大家さん」に出資した投資家はすべてのプロジェクトでこれまでに3万7000人と膨大です。投資家から調達した資金は総額で2000億円に達しています。

中でも「みんなで大家さん シリーズ成田」という不動産投資商品は1口100万円で年7%の想定利回りということで人気となり、2020年11月から出資者を募っています。これは空港近くの東京ドーム10個分の広い敷地にホテルなどを備えた巨大複合施設を建設するというプロジェクトで、1500億円近くの資金が集まったとされています。

しかし、現地に行くとまだ建物は建っておらず、開発計画が大幅に遅延し、配当の支払い遅延が発生している状態です。分配金の遅延が生じると不安に感じる投資家が解約をするようになり、より資金が不足します。

不動産購入に充当された投資家からの資金は短期で現金化することが難しく、運営会社の資金繰りを圧迫します。メディアの報道によって解約が殺到すれば、更にプロジェクトがとん挫する可能性が高まります。この配当の支払いが止まった状態が続けば、さらに投資家の解約請求が増え、資金繰りに窮して事態が悪化する悪循環になります。

「かぼちゃの馬車」との共通点

今回の投資家とのトラブルを見て思い出すのが「かぼちゃの馬車」という商品名で広く販売された一棟もののシェアハウス投資です。こちらは信用力の高い医者や高収入サラリーマンに多額の借り入れをさせて、家賃保証をしたシェアハウスを購入してもらうスキームでした。

本来価値の低い物件を高い家賃を保証することで高値で販売されていたものの、最終的には家賃保証会社が破綻することで、物件価値が大きく下がりました。数億円単位の借金を残した投資家も少なくなく、自殺者が出る騒ぎとなり7年ほど前から大きな社会問題となりました。

みんなで大家さんも今後かぼちゃの馬車と同じような大規模な不動産投資のトラブルになる可能性が出てきました。

投資で失敗しないために大切な「3つのこと」

一方で、同じ不動産投資でも優良な物件を購入して、毎月堅実な家賃収入を得ることに成功している人もいます。成功者と失敗者の違いを分けるものは何でしょうか?

【1】投資対象を自分で調べる

1つは投資対象をきちんと自分の目で調べているかどうかです。

不動産投資のトラブルに巻き込まれている人の多くは、物件をきちんと見ることなく、友人や知り合いの紹介ということだけで投資を始めています。シェアハウスも成田の物件も実際に現地を見に行って確認した投資家はあまりいないと思います。利回りが高い不動産というだけで安易に資金を投入してしまう。だから後から悔やむことになるのです。

【2】リスクから考える

そして、2つ目はリターンではなくリスクから考えることです。

現状の日本国内の空室リスクが低く資産性の高い都心不動産の賃貸利回りは4%前後です。それよりも高い賃貸利回りが得られるということは、それに伴うリスクがあると認識すべきです。全ての不動産から預金のような確定利回りが得られると思うのは幻想です。

【3】資産を分散させる

さらに最も大切なのは投資のリスクを回避するための資産の分散です。

確実性が高いと思われている投資であっても、マーケット環境によっては思わぬダメージを被る事があります。投資の予測できない事態に対応するために必要なのは、値動きの異なる資産への分散です。

今回の「みんなで大家さん」の投資家の中には高い利回りに惹かれて数千万円の自己資金を集中投資している人もいるようです。このような投資のセオリーに反した行動は、取り返しのつかない結果になってしまうリスクが存在します。

投資で失敗しないためには、投資対象を自分の目で確認し、リスクについて十分な理解をした上で投資対象を分散することです。そうすれば、最悪の事態を避けることが可能なのです。