先週(10月13日週)の動き:米中貿易摩擦の再燃、米地銀の信用リスク浮上で内外金価格怒涛の最高値更新 NY金一時4,400ドル接近、JPX金1日で1000円超上昇

マーケット関連の欧米メディアでは金市場のバブル論議が巻き起こっている。先週(10月13日週)の内外金市場の値動きは、まさにバブルを思わせるものだった。ニューヨーク金先物価格(NY金)は、4,000ドル割れの水準から一時は4,400ドルに接近するなど5営業日連続で取引時間中の過去最高値の更新が続いた。終値ベースでも週初10月13日から10月16日まで4営業日連続で最高値の更新が続いた。週末10月17日にはさすがに利益確定売りに大きく反落(前日比91.30ドル安)したが、終値は4,213.3ドルとなった。

終値ベースで見て10月に入り10月17日まで12営業日中9営業日で最高値を更新し、終値では10月16日の4,304.6ドル、取引時間中では10月17日のNY時間外取引のアジア時間に付けた4,392.0ドルがそれぞれ最高値となった。

週足は前週末比212.9ドル高(5.32%)で9週続伸となった。先週のレンジは4,011.3~4,392.0ドルで値幅は380.70ドルと前週の171.8ドルから大きく拡大した。後述するが最高値を更新した10月17日には一時急反落し、1日の値幅が上下196ドルとなるなど、価格水準が上がるにつれ変動率も上がる傾向にある。

いずれにしても、9月は月間で357.10ドル(10.16%)の大幅高となったが、10月は17日までで340.1ドル(8.78%)の上昇となっている。この間に3,800ドル台後半から一時4,400ドルに接近するところまで水準を切り上げた。異例の上昇ピッチの速さといえる。

新たな買い手掛かり材料の浮上

このように価格水準を大きく切り上げたNY金だが、上昇加速の背景は新たな手掛かり材料が浮上したことによる。

米中貿易摩擦再燃

一つは前週来市場全般の関心事として影響度が上がって来た米中貿易摩擦の再燃だ。10月10日にトランプ米大統領が「11月1日付で中国からの輸入品に100%の追加関税を課す」と表明。一方、中国商務省は10月9日、「レアアース(希土類)関連の加工技術への規制を拡大し、無許可で海外企業と協力することを禁止する」と発表した。米国のみを対象にしたものではないものの、レアアース輸出規制強化の阻止を交渉の最優先課題にしてきたトランプ政権にとっては、受け入れかねるものといえる。

圧力を強める中国のスタンスが今後の交渉を優位に進めるためなのか、中国が米国との間で本格的なデカップリング(切り離し)に踏み切るのか、市場は状況を見守っている。

米地銀2行に信用懸念が浮上

もう一つの手掛かり材料として、10月16日に米地銀2行が不正疑惑に絡む融資の問題を明らかにし、信用懸念が強まったことがある。米地銀のザイオンズ・バンコーポレーションは子会社の銀行の融資に関して不正を発見したとして借り手を提訴し、約6000万ドル(約90億円)を貸倒引当金として計上したことを発表。一方、ウエスタン・アライアンス・バンコープも同様の提訴に踏み切ったことが、米証券取引委員会(SEC)への提出資料にて明らかになった。

9月には中古車販売・ローン事業のトライカラー・ホールディングスと自動車部品メーカー、ファースト・ブランズ・グループが相次いで経営破綻しており、いずれも不正や複雑な資金調達手法が債務の実態を不透明にしていたとされ、実態解明が進んでいるところでもある。金市場にとっては、水面下で何か問題が燻っているのではと一部で懸念されていたリスクが浮上した形だ。単発的なものなのか、同様の事例がさらに浮上あるいは連鎖するのか、市場は見守っている。

NY金一時4,400ドルに接近も乱高下

現地時間10月16日午後に明らかになった問題に対しNY金は敏感に反応し、終盤に向け買いが先行し通常取引は前日比103.0ドル高の4,304.6ドルで終了したものの、その後の時間外取引はほぼ高値引け状態の4,344.3ドルで終了していた。

10月17日アジア時間の取引は、NY市場のモメンタムを引き継ぐ形で早々に一時4,392.0ドルまで買われ、最高値更新となった。ところが同日のNY市場では複数の米地銀が発表した7-9月(第3四半期)の決算では、貸倒引当金がアナリスト予想を下回った。過度な警戒感が後退したことは、上昇ピッチの速さから買われ過ぎ感が台頭していたNY金には、売りのきっかけとなり前述のように大きく水準を切り下げた。

JPX金、4営業日連続で最高値更新2万2000円超

このように連日で最高値を更新し、週末に乱高下を演じたNY金だが、国内金価格はNY金の値動きを映し、こちらも記録的な上昇となった。その一方で時差の関係で10月17日のNY金の乱高下は大阪取引所の金先物価格(JPX金)の夜間取引に反映されることになった。国内金価格には主に本日10月20日の価格に反映されることになりそうだ。

先週(10月13日週)のJPX金は祝日(体育の日)の関係で4営業日となったが、連日で取引時間中および終値の双方で最高値更新が続いた。前週10月9日に初めて2万円台に乗せたが、週末10月17日の終値は2万2030円と、5営業日目にして2000円ほど水準を切り上げた。一時2万2060円まで付けた取引時間中の高値を含め、最高値を更新して終了した。

JPX金の週足は前週末比2272円(11.5%)高と9週連続の上昇となった。とくに10月17日は1日で前日比1019円高となったことが目を引いた。先週(10月13日週)の米ドル/円は週末にかけ1円以上円高に振れたものの、NY金の上昇はそれをさらに大きく上回った。

今週(10月20日週)の動き:9月米CPI、10月S&P米PMIに注目、注意を怠れない米金融リスク、バブル論議高まる金市場

9月米CPI、10月S&P米PMIに注目

米与野党の予算協議は物別れ状態のまま、米政府機関の閉鎖が3週目に入る。月初の雇用統計はじめ主要経済指標の発表が軒並み延期される中で、今週(10月20日週)は延期されていた9月の消費者物価指数(CPI)の発表が10月24日(金)に予定されている。総合指数の加速が予想されているが、10月28~29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.25%利下げ見通しは織り込み済みとなっている。FOMCを前にFRB高官による金融政策に関連する発言の自粛(ブラックアウト)期間に入っており情報量は低下する。

さらに10月24日にはS&Pグローバルが10月の米PMI(購買担当者景気指数)の発表を予定している。政府管掌の9月のデータ発表が遅れる中で、速報値ではあるが足元の状況を把握するために注目度は高い。

注意を怠れない米金融リスク

10月16日以降にわかに浮上した米地銀を巡る信用不安観測は、目先は沈静化しそうだ。しかし、プライベート・ローンやプライベート・エクイティなど信用動向の把握が難しいにも関わらず近年急拡大している分野への懸念は根強く指摘されており、金市場の関心事として持続しそうだ。この点でジェイピー・モルガン・チェース[JPM]のダイモンCEOの関連発言には今後とも注目したい。

地政学リスクとしては、今週(10月20日週)末から来週(10月27日週)にかけての米中通商協議の行方は金市場を見る上でも注目事項となる。

バブル論議高まる金市場

調整らしい調整を交えずに4,300ドル台まで駆け上がったNY金には、冒頭で触れたように欧米メディアではバブル論議が高まっている。単なるカネ余りのあだ花か、通貨制度を含む時間を掛けたパラダイムシフト進行の中での過渡期的現象か、意見が分かれそうだ。

先週末のNY金乱高下の中で下げ局面では買いが見られたものの、今週(10月20日週)はさすがに値固めと見る。もちろん何かをきっかけに上昇モメンタム復活となっても不思議はない。想定レンジを4,220~4,350ドルに置く。JPX金についてはスポット価格などの実勢から割高に推移しており、やや慎重に2万800~2万1800円の値幅を想定する。