モトリーフール米国本社 – 2025年10月13日 投稿記事より
この半導体企業は、AIデータセンターの中核アーキテクチャを担う可能性がある
チャーリー・マンガー氏は優れた投資アイデアを見つけるための裏技として「他の賢い人たちが何を買っているかを見ること」を挙げていました。
米国証券取引委員会(SEC)による開示義務の導入から、インターネットの進歩によって、その情報に誰もが簡単にアクセスできるようになったことで、トップクラスの投資家たちが何を売買しているのかを垣間見ることができます。そのため、今では他の人々が何を購入しているかを知ることが、以前よりも簡単になっています。
注目すべきファンド・マネージャーの一人が、ヘッジファンドの「コーチュー・マネジメント」を率いるフィリップ・ラフォン氏です。公開書類によれば、同ファンドの上場株式ポートフォリオは、2025年6月までの3年間でS&P 500種指数を約95パーセントポイント上回るパフォーマンスを達成しました。同ファンドがSECに提出した最新の13F報告書によると、ラフォン氏がGPU大手メーカーであるアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(以下AMD)[AMD]株を継続して売却していることがわかりました。一方で、2030年までに株価が4倍超に上昇すると同氏が見込む半導体株への新規投資が明らかとなりました。
主力としていたエヌビディア[NVDA]、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]への投資を縮小
ラフォン氏は、生成AIの人気と可能性が明らかになってきた2022年末から2023年初頭にかけて、AMDへの投資を拡大しました。一時はAMDがコーチュー・マネジメントの上場株式保有額で第3位のポジションを占めていました。しかし、2023年半ばに株価がピークを迎えて以降、ラフォン氏はこのGPUメーカーの保有株を89%削減しています。
なお、AIブームに伴う株価急騰を受けてラフォン氏が売却を進めたGPUメーカーはAMDだけではありません。コーチュー・マネジメントは2023年初頭以降、エヌビディア[NVDA]の保有株を約77%削減しました。ただし、直近の四半期にはエヌビディア株の一部を買い戻す一方で、AMDの残存保有株をさらに53%削減しています。
ラフォン氏にとって、その売却のタイミングは必ずしもベストではありませんでした。2025年6月末以降、AMDの株価はエヌビディアを上回るパフォーマンスを示しています。この背景にはOpenAIが複数年にわたって最大6ギガワットのAMD製GPUを購入するという新たな大型契約があります。AMDはOpenAIに対し、購入するGPUのギガワット数に応じて(同社の)新株予約権証券(ワラント)を付与し、実質的にGPU価格を割引する形をとっています。AMDは、これによって大口顧客かつ投資家を獲得しています。
AMDのOpenAIとの提携は、同社が間もなく発表予定のMI450 GPUプラットフォームに対する信頼の表れと言えるでしょう。AMDの経営陣によれば、このプラットフォームはトレーニングと推論の両面でエヌビディアの「ルービン」プラットフォームを上回る性能を発揮するとのことです。これが事実であれば、AMDのチップはエヌビディアのシェアを奪い、データセンター市場で大きなシェアを獲得する可能性があります。
コーチュー・マネジメントのポートフォリオの投資対象とする最新の半導体株とは
一方、ラフォン氏が直近の四半期に実施した最大の投資の1つは、GPU大手企業ほどの成長を遂げていない別の半導体株への新規ポジションでした。ラフォン氏とそのチームは、この投資が長期的には非常に大きな可能性があると考えています。
ラフォン氏は多くの銘柄に対して長期的な視点で投資を行っています。業界や企業の将来性を正しく見極められれば、そのリターンは非常に大きなものとなる可能性があります。同氏が新たにポジションを取ったアーム・ホールディングス[ARM](以下、アーム)もまさにその一例です。
ラフォン氏は、アームの時価総額が足元の約1,790億ドルから、2030年までに7,870億ドルに達すると予測しています。これはわずか5年間で、340%の増加となります。
アームは自社でチップを設計するのではなく、他のチップ設計者が基盤として活用できる「基本チップアーキテクチャ」を提供しています。アームは、エネルギー効率が鍵となるスマートフォン市場で大きな成功を収めました。現在では、エネルギー供給がデータセンターの演算能力を拡大する上で制約要因となり得るため、省エネ性能への関心が高まっているデータセンター分野でのシェア拡大を目指しています。
アームは順調に成長しており、同社のデータセンター向けチップを採用する企業は7万社に達し、2021年比で14倍に増加しています。これは、アームの知的財産を活用して「ホッパー」および「ブラックウェル」サーバーラック向けGrace CPUを開発したエヌビディアの貢献によるものです。しかし、エヌビディアとインテル[INTC]との最近の提携により、GPU業界のリーダー企業の関心がインテルのx86アーキテクチャへと移行する可能性があります。それでも、エヌビディアのチップは、アームが他のGPUメーカーやハイパースケーラーにどれほどの価値を提供しているかを示す好例となっています。
アームは収益性の高いデータセンター市場でシェアを拡大しているだけでなく、最新世代アーキテクチャにおいてより大きな価格決定力を発揮しています。第1四半期のロイヤルティ収入は前年同期比で25%増加しました。これはv9アーキテクチャやその他のライセンスIPに対するロイヤルティ率が上昇したことが要因です。企業が最新アーキテクチャを採用するにつれ、今後数年間にわたって、アームの収益と利益は成長が見込まれます。ラフォン氏は、この成長が株価を大きく押し上げると予測しています。
現時点でアーム株に対する唯一の懸念は、そのバリュエーションの高さでしょう。アームの株価はフォワード収益予測の100倍近くで取引されています。今後数年間で大幅な利益成長が見込まれるとはいえ、この評価水準を正当化するのは容易ではありません。ラフォン氏はこの価格に見合う価値があると考えているようですが、現時点ではアーム株への投資はとてもリスクが高いように思われます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adam Levyは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ、インテル、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。インテルの2025年11月満期の21ドルプットのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。
