2025年10月8日(水)14:00発表
日本 景気ウォッチャー調査2025年9月分
(その他:最新の家計調査・商業動態統計速報・消費動向調査・消費活動指数より)
【1】結果:全体的な消費は横ばい圏
2025年9月の家計調査では、二人以上勤労者世帯の実質消費支出は、前年同月比5.7%増の34.7万円と6ヶ月連続となる前年同月比プラスとなりました(図表1)。実収入は3ヶ月ぶりにプラス圏を回復する同2.8%増の60.8万円と、収入面の持ち直しが確認されました。
結果として、可処分所得(収入のうち、税金や社会保険料を控除した所得、いわゆる手取り収入)は前年同月1.9%増となりました。その他の消費指標を概観すると、小売売上高は経済産業省の基調判断では一進一退で据え置かれるも、指数の鈍化傾向は顕著です。また、前月比ベースでは2ヶ月連続で低下となっています。一方、百貨店売上は前年同月比でプラスに回復しており、持ち直しの動きがみられます。消費マインドは2指数ともに改善も、水準としては低位での推移と言えるでしょう。
総合的な指数から消費を評価します。世帯消費動向指数とは、別名CTIミクロと呼ばれ、「世帯における平均消費支出額」を指数化したものです。8月の二人以上世帯における、季節性を加味したCTIミクロは前月比1.6%上昇も、トレンドで見れば横ばいから緩やかな上昇と評価できます(図表2、青色)。日本銀行が算出する消費活動指数も横ばい圏から若干の低下基調が見え(図表2、黄色)、総合すれば消費は横ばい圏といった印象です。
【2】内容・注目点:弱さうかがえる小売売上高の持ち直しに注目
足元では小売売上高の伸びの低下が確認されます。図表3は東証33業種の業種別株価指数の小売業と、商業動態統計で発表される小売売上高指数をグラフにしたものです。
小売売上高の増加に伴い、株価も右肩上がりで推移してきたことがわかります。もっとも、先行きへの期待など売上高以外の観点が、株価には多分に影響するものですが、直近における売上鈍化は、小売業株価のファンダメンタルの観点における懸念材料と言えるでしょう。
日銀短観や景気ウォッチャー調査から示唆される小売業の先行きは、2指標ともに底打ち傾向がうかがえます。図表4から楽観的に判断すると、前述の小売売上高の低下は次第に持ち直していくと考えることができるでしょう。米ドル/円相場も、高市自民党新総裁が就任したことで、足元では円安に振れています。
市場のコンセンサスでは、先行きにおいて過度な円安が進行していくとは想定されておらず、個人的には、次第に150円を割り込む程度の水準に落ち着いていくと想定しています。ただ、円安基調は直近数年の内需を支えたインバウンドの底堅さにつながるとも考えられ、その点でも小売業の持ち直しにつながると推測できます。
【3】所感:年末商戦や冬のボーナスが消費増に寄与か
小売売上に懸念がみられる状況ですが上述の通り、持ち直していく見通しでいます。過度な楽観は禁物ですが、年末商戦や冬のボーナスなども控えており、消費増となる材料もプラスに働いていくでしょう。全体的な消費は現在横ばい圏とみていますが、年後半にあたって緩やかながらも上昇基調となっていくことが期待されます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
