先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業版指数、香港ハンセン指数は揃って続伸となりました。もっとも値動きは小幅であり、方向感に欠ける展開となっています。中国本土市場に関して、プラスの要因としては、中国の不動産市況が軟調なことから、ここのところ不動産に関する規制緩和が相次いで発表されており、更なる緩和策の期待感が高まったことや、李克強首相が政策の微調整を適宜行うとコメントしたことを受けて景気刺激策への期待感が高まったことがあります。その他、中国が自動車産業の強国となるには新エネルギー車の発展が必須だと、習近平国家主席が述べたことを受け、電気自動車関連銘柄が大幅高となりました。
一方、マイナス材料としては小規模企業が新株発行を行って資金調達をする場合、総資産に対し負債が45%以下であることが条件となる規制強化政策の発表があります。これによって、5月26日(月)に大きく上昇していた創業版指数は27日(火)に反落。また、週後半に中国当局の幹部が不動産に関する大きな規制緩和は行われないとの見通しを示したことから不動産株も再び軟調な動きとなっています(ただし、米国債の金利が下がったことから、香港市場では週末に不動産株は上昇しています)。
香港株については大きなニュースがありました。香港政府の梁行政長官が26日(月)に開かれた戦略発展委員会で、本土から香港を訪れる個人旅行者数を2割削減する案を提言したのです。2003年から「自由行」と呼ばれる簡易手続き制度が開始され、中国本土の個人旅行者は簡単な手続きで香港・マカオを訪問できることとなりました。その効果は絶大で、本土から香港への旅行者数は2004年の426万人から2013年の2746万人へと増加。今や香港小売売上高の3分の1が本土旅行者による買い物で占められているような状態です。しかし、近年になって中国本土旅行者のトラブルが問題視される中、香港側のインフラ設備や受け入れ能力を超える訪問者の拡大には対策が必要となった模様です。一方で、同委員会に出席した香港の大手流通、小売関係者からは強い反対もあり、意見はまとまっていません。結論は出ていないながらも、翌27日(火)には小売やレジャー株、商業施設を保有する不動産株が下落し、相場の足をひっぱりました。もっとも、最終的に自らの首を絞めるような決定をする可能性は薄いと見ることも出来、それほど心配する必要はないかもしれませんが、この問題は香港経済に大きなインパクトを与えるため、今後の成り行きには注目する必要があります。
コラム執筆:戸松信博