ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演は上首尾
市場関係者の耳目を集めたジャクソンホールでのパウエルFRB議長(米連邦準備制度理事会)の講演は、過不足ない内容で上首尾だったと言えるだろう。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げの道を開いたと市場は受け止め、ダウ平均は前日比846ドル高と大幅に上昇し、昨年12月に付けた最高値を更新した。 しかし、だからと言って、パウエル議長は市場の歓心を買うような「リップサービス」を行ったわけではない。むしろ、パウエル議長は、これまでと同様に非常に抑制されたトーンで、米国経済の現状とそれに対する金融当局トップとしての見解を中立的な姿勢で示したものと僕には映った。しかし、市場にとってはそれでじゅうぶんだった。 ジャクソンホールで取材にあたった日本経済新聞の三島記者は現地で聞いた、こんな言葉が印象的だったとレポートしている。 「Silence is acceptance」- つまり、9月利下げは既定路線なので、パウエル議長が利下げを否定するような発言を行わなければ(silence)、それは利下げを認めた(acceptance)ということだ、そんなコンセンサスがジャクソンホールの会場には出来上がっていたという。
それに加えて、株式市場が大幅高で応えたのは、事前に「パウエル・リスク」-すなわち、パウエル議長が利下げに対して消極的な態度を示す可能性を織り込んでいたからという面もあった。S&P500指数はジャクソンホール会議まで5日続落した。 パウエル議長講演を受けて大幅に反発したものの、続落前につけた史上最高値には届いていない。利下げの道が開かれたという安堵感からの上昇(リリーフ・ラリー)の典型ではあるが、事前にヘッジで売った分を買い戻したに過ぎないと見ることもできる。
いずれにせよ、最高値圏にある米国株がさらに上値を追えるかどうか。それは日本株の行方にも大きく影響する。
27日エヌビディアの決算は警戒して見守り
今週の注目材料はエヌビディア[NVDA]が27日(日本時間28日)、に発表する2025年5~7月期の決算だ。アナリスト予想では、売上高が約459億ドル(前年比+53%)、1株当たり利益(EPS)が約1.00ドル(前年比+47%)と見込まれている。投資家の関心はファンCEOによる決算説明だ。 対中規制の影響や今後の業績見通しについてどのように語るのか市場の注目が集まる。エヌビディアは複数の調達先に中国向けのAI半導体「H20」関連品の生産停止を要請している。それを反映して8~10月期の売上高に関して弱気な見通しを示すリスクもあるだけに警戒して見守りたいところだ。
国内は自民党の選挙管理委員会2回目会合に注目
国内の注目材料は27日に予定される自民党の選挙管理委員会2回目会合だ。自民党の総裁選前倒しの議論をめぐり、党の選挙管理委員会が実施を求める議員には書面の提出を求めた上で、氏名の公表も検討していると伝わる。選挙管理委員会2回目会合では詰めの協議がおこわなれる見込みで、それが石破首相の進退も左右しそうだ。 一方、去就が注目されていた森山裕幹事長が鹿児島県連の会長を続投する方針を決めた。政局の行方も混とんとしてきた。参院選で盛り上がった日本の国政の変化への期待がしぼむことは株価には悪影響と考える。
予想レンジは4万2000円~4万4000円とする。