モトリーフール米国本社 – 2025年6月1日投稿記事より

横ばい相場の中、長期視点で狙う2025年6月の投資先

6月になり2025年の半分に近づく中、市場の混乱にもかかわらず、本稿執筆時点でS&P500指数は年初来、ほぼ横ばいの水準です。その点を懸念する投資家もいるかもしれませんが、筆者は長期的な視点に注目しており、多くの企業にとって先行きは依然として明るいと見ています。

5ヶ月先ではなく5年先に注目すると堅実と思える魅力的な5銘柄をご紹介します。

エヌビディア[NVDA]

半導体大手のエヌビディアは人工知能(AI)分野のトップ銘柄であり、AIモデルの学習やコンピューティングに広く使用される画像処理ユニット(GPU)を供給しています。ただし、現在のコンピューティング能力は、経済全体でAIを中心としたビジネスを展開するには、まだ遠い状況にあります。そのため、エヌビディアは第三者機関による推計を引用して、データセンター(DC)向け設備投資が2024年の4,000億ドルから2028年には1兆ドルに増加するとしています。

これは極めて大きな成長です。エヌビディアがそのトレンドから大きな恩恵を受けるのは、特にデータセンター向けGPUが売上高の大部分を占めているためです。

エヌビディアは2025年4月27日に発表された2026年度第1四半期決算において、売上高が69%も増加するという驚異的な成果を見せました。中国事業にはかなりの逆風が吹いているものの、それでも、エヌビディアはさらに株を購入したくなるような魅力的な成長ストーリーを示しています。

台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]

半導体を受託生産するTSMCは、AI競争に参加する上で、より中立的な選択肢と言えます。というのも、ほぼすべてのテクノロジー企業が半導体製造の委託先(ファウンドリー)としてTSMCを利用しているからです。TSMCのビジネスモデルは、最先端の半導体生産技術を提供することで、半導体製造の委託を希望する顧客を引きつけることにあります。TSMCが自社製造の半導体を顧客に販売することはないため、他の半導体ファウンドリーが直面しているような利益相反の問題は生じません。

TSMCは世界で最も広く利用されているファウンドリーの1つであり、素晴らしい未来像を描いています。半導体製造は数年前に発注されることが多いため、経営陣は今後5年間の年平均成長率は、AI関連の売上高で45%、総売上高でも20%近くになると予想しています。5年間の成長としては目覚ましい成長率です。

本稿執筆時点で予想株価収益率(PER)は21倍程度と、S&P 500指数の22.1倍を下回っているため、市場を上回る成長を期待できそうです。

アルファベット[GOOGL]

グーグルの親会社アルファベットは予想PERがわずか18倍と、TSMCよりさらに割安です。このPERはS&P 500指数を下回り、他の大手テクノロジー銘柄にも後れを取っています。アルファベット株を巡る悲観論には、AIによる混乱や米国政府による会社分割の可能性などが含まれています。このことが株価の下落を招き、PERは市場平均を下回っていますが、筆者はそれを間違いだと思っています。

アルファベットは既にAI競争に参入しています。AI駆動の検索機能や、情報・データをまとめて簡潔に表示するAIオーバービュー機能を提供しており、従来の検索機能と完全な生成AI体験とのギャップを埋めています。そして、さまざまな訴訟の結果が判明するまでには、まだ数年かかるでしょう。

結論として、筆者は、アルファベットに対する懸念は過剰であり、現在は優れたバリュー投資になると思っています。

アドビ[ADBE]

電子画像・文書ソフトウエア大手のアドビも、アルファベット同様、AIが引き起こす懸念に直面しています。投資家は生成AIによって作成された画像が、アドビの市場シェアを奪うのではないかと懸念しています。

しかし、ほとんどの画像作成エンジンは、アドビ製品が提供するようなコントロール能力に欠けます。さらに、アドビ独自の生成AIソフトウエアであるファイヤーフライ(Firefly)は、同社の既存の商品群とうまく連携しています。アドビに大きな混乱は起きておらず、売上高は今でも着実な増加基調にあります。

本稿執筆時点でアドビのPERは20倍前後です。これは割安と思われます。特にアドビの自社株買いのペースを考慮すると、1株当たり利益(EPS)は売上高よりもはるかに速く増加することになります。

これにより、アドビは2025年6月の優れたバリュー投資銘柄となります。忍耐強く待てば、株主は市場を上回るパフォーマンスが得られるでしょう。

アマゾン・ドットコム[AMZN]

最後に、多くの投資家はアマゾンに対し、関税が同社のeコマース事業にどのような影響を与えるかについて懸念しています。この懸念は妥当と言えますが、投資家は、アマゾンが利益の大部分をeコマース事業ではなく、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)から上げていることを理解する必要があります。

AWSはアマゾンのクラウド・コンピューティング部門で、第1四半期では売上高のわずか19%を占めるにすぎません。しかし、営業利益率はeコマース事業よりもはるかに高く、営業利益全体で見るとAWSが63%を占めました。

AWSがアマゾンの利益の原動力であるため、その成長につれて株価も上昇すると考えられます。クラウド・コンピューティングは、AIとクラウドへの全体的な移行という2つのトレンドから恩恵を受けています。AWSが利益の大部分を占めるため、今後数年間に予想されるAWSの急速な成長によって、アマゾンの利益は押し上げられるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。John Mackeyはアマゾン・ドットコムの子会社Whole Foods Marketの元最高経営責任者(CEO)であり、モトリーフール米国本社取締役会メンバーです。アルファベットの役員であるSuzanne Freyはモトリーフール米国本社取締役会メンバーです。元記事の筆者Keithen Druryはアドビ、アルファベット、アマゾン・ドットコム、エヌビディア、台湾積体電路製造の株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アドビ、アルファベット、アマゾン・ドットコム、エヌビディア、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングの株式を保有し、これらを推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。