現在のファンダメンタルズ:米中協議も含め主要国との協議進展を見守る
先週(5月12日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 144.916円~148.647円 145.631円
・ユーロ/米ドル:1.10654ドル~1.12655ドル 1.11610ドル
・ユーロ/円: 162.464円~165.209円 162.550円
先週(5月12日週)の米ドル/円:米中の報復関税引き下げも効果は短く
先週(5月12日週)は週末に行われた米中協議の結果が欧州市場序盤に発表されました。米中双方とも報復関税を115%引き下げ、90日間は米国の対中関税が30%、中国の対米関税が10%に。これがポジティブ・サプライズとして歓迎されたことで米ドル/円はNY市場で一時148.647円まで上伸しました。
しかし、株式市場も為替市場も過剰反応の面もあり、その後は調整が進む動きが目立ちました。ポジティブ・サプライズと言っても元の報復関税の水準が異常であったことや、90日以内にまとまる保証もない中で、4月の相互関税導入前に比べれば関税自体の水準は高くなっていることを考えると、楽観的な地合いが続くとは考えにくいところです。
また主要国で協議が終わった国は英国程度で、しかも英国は当初の相互関税の税率のままで合意に至ったことから、今後の日米協議を含め他国との協議も、関税がなかった時に比べれば状況は悪化ということになるでしょう。
まだ最終的な数字が出てこないため確かなことは言えないものの、鉄鋼・アルミ、自動車などの個別関税も含めると、米国が課す関税率は15%を超えてくると見られ、その影響が大きく出てくるのは夏以降になると考えられます。それを打ち消すほどの世界経済全体に与える好材料が出てくるとは思えず、リスクオンの動きが出てきたところではありますが、しばらくは次のリスクオフの動きにも警戒という、株と米ドルの戻り売りという流れが続きやすいと見ています。
また5月16日の大引間際にムーディーズが米国の信用格付けをAaaからAa1へと引き下げました。S&Pやフィッチと異なりムーディーズが米国の格付けを引き下げたことはこれまでありませんでしたが、財政悪化の懸念を理由に初めて引き下げることとなりました。この影響も今後米国債の戻り売りとして影響が出てくると思われますので、中期的には常にトリプル安の懸念を抱えた状態と言えるでしょう。
また日米間の関税交渉において為替調整の話はないという前提でこれまでは進んできましたが、今後どこかで出てくる可能性も否定できません。5月20~22日にカナダでG7が開催されますので念のため注意しておきたいイベントです。
先週(5月12日週)のユーロ/米ドル:1.10台半ばまで下げた後に反発
先週(5月12日週)のユーロ/米ドルは、週初は米ドル/円同様に米ドル買いの動きが強まったことから、5月12日NY市場で一時1.10654ドルの安値をつけました。しかしそこからは反発する動きが強まり、5月14日には週間高値1.12655ドルをつけ、週後半は高値圏で横ばいの動きのままで一週間を終えています。
現在は米国の主要国との関税協議の進展を見守る状況が続いています。対EUでは対象分野を定め、ようやく先週、協議への足がかりができたところです。しかし、トランプ大統領は各国との協議時間が足りないことを理由に、今後数週間のうちに新たな関税率を各国に通知すると5月16日に発言しました。
この通知の対象にEUが含まれるかどうかはわかりませんが、英国の10%より高くなることは間違いなく、さらに当初の20%よりも低くなるとしたら、15%といった数字を出してくる可能性は高いと思われます。仮に3週間とすると6月6日が目処となり、それまでには具体的な国・地域に対する関税の税率等が提示されると思われますが、米英・米中の関税協議に対するポジティブな反応を一気にひっくり返して、金融市場がネガティブな反応をするリスクが一つ増えたとしか思えません。
米国にもEUにも悪影響となるとユーロ/米ドルの動きは悩ましいところですが、私自身は最終的には米ドル安方向のリスクの方がより大きくなるという見方をしています。
米ドル/円チャート(週足)、下降トレンド継続、チャンネル上限上抜け失敗
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開は継続中ですが、年初来高値からのレジスタンスラインは上抜け、先週末終値もラインを上抜けたため、長期のレジスタンスラインを年初来高値と先週高値を結んだライン(黄色)に引き直しました。当面はこのラインよりも下での推移を考えることとなります。つまり週足移動平均線とレジスタンスラインから、長期的な下降トレンドは継続です。
また下側のラインは平行ラインを引けないこと、また2024年末の安値からのラインが比較的これまでの安値が並ぶことから当面このライン(黄色)を見ていくこととします。つまり2つのラインは拡散型のチャンネルという一番読みが難しいパターンになってしまったということになります(図表1)。
しばらくはこれら両ライン、そして年初来高値と安値とのフィボナッチ・リトレースメントを見ながら、短期的には日足でのヒントを探っていきます。日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、5月15日にデッド・クロス
短期的な判断は日足で行います。

・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
日足チャートでも、ラインを引き直しました。週足チャートで示した拡散型下降チャンネル(黄色)に加え、年初来安値からのサポートラインと上側の目処となるラインですが、こちらも拡散型上昇チャンネル(青)という難しいチャートパターンとなってしまいました(図表2)。
しかし、移動平均線の方は長らく続いたゴールデン・クロス状態が5月15日のデッド・クロスで解消し、長期下降トレンドに沿った売りシグナルが出現したことになります。下げに転じる前の高値が3月高値と4月安値の76.4%戻しで止められたこともテクニカルには補強材料です。当面は米ドル/円は下値を探る展開となりそうですが、下値の目処としてまずは上述したサポートラインが現在144円に位置していますので、144円をトライして更なる下げがあるかという見方で良いと思います。
ユーロ/米ドル、長期トレンドはユーロ買い継続
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。


週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持していますが、4月高値からの調整局面は続いています。
日足チャート(図表4)でもこの高値からの短期下降チャンネル(黄色)の中での下げが継続中であることに変化はありません。また、フィボナッチ・リトレースメントでは年初来安値と年初来高値を起点としたもの(黒)、3月下旬安値と4月高値を起点としたもの(青)のどちらも1.10ドル台半ばをターゲットとしていたことから、先週安値1.10654ドルはほぼターゲットに到達したと見て良さそうです。
そうなると、底固めからいったんユーロ/米ドル買いという動きが出てきそうです。2本の移動平均線も5月16日終値時点ではデッド・クロス状態でしたが、本日5月19日の動き次第ではゴールデン・クロスが発生する可能性が高そうです。19日の終値が決まるまでは確定ではないものの、注意して見ておきたいところです。個人的には米ドル全体が下げる可能性を考えていることもあり、そろそろ下降チャンネルを上抜ける動きが始まる可能性を探っています。
ユーロ/円は、日足チャートでの判断継続、今後の展開次第ではトレンド発生の可能性も
次にユーロ/円のチャートです。

ユーロ/円週足では移動平均線よりも上にあるためトレンド的には上昇トレンド継続中ですが、これまでやや上向きだった移動平均線がほぼ平らとなってきたことで方向感が出にくい流れとなっているという見方の方が良いでしょう。引き続き長期方向性の判断は行わず、短期的な方向性を日足で判断します。(図表5)。

日足チャートでは5月9日のゴールデン・クロスから15日にデッド・クロスが発生したことでユーロ売りとなりました。(図表6)。直近高値が週足のフィボナッチ・リトレースメントの半値で抑えられたこともあり、年初来安値と高値によるフィボナッチ・リトレースメント(青)を新たに追加しました。
またトレンドラインとしては年初来安値からのサポートラインと上側のラインを組み合わせた上昇ウェッジ(黄色)も追加しましたが、現状サポートラインの下抜けをトライ中で、ここを抜けてくると青のフィボナッチ。リトレースメントの38.2%押し161.231円をターゲットにした下げになってくると考えています。
全体的な米ドル売りが出てくる場合、ユーロ/米ドルより米ドル/円での下げが大きくなりやすいため、ユーロ/円では下げるバイアスがかかりやすくなるため、今後の展開次第ではユーロ/円にもトレンドが発生してくる可能性が出てきました。
それでは今週も良いトレードを!