過去最高の米ドル買い越しから大幅売り越しへ急転換

ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(円、ユーロ、英ポンド、カナダドル、豪ドルの5通貨で試算)は、2024年4月には38万枚と過去最高の買い越しを記録した(図表1参照)。このように、米ドル買いが過去最大規模に広がる動きは、「米ドル1強」時代とも呼ばれた。

【図表1】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ところが、足下の同ポジションは10万枚以上の大幅な売り越しとなった。この1年で米ドルは、過去最大の買い越しから大幅な売り越しへ急転換したわけだ。「米ドル1強」時代が急変したということになるだろう。

しかし、このような変化は、1年をかけて起こってきたということではなかった。米ドルは2024年7月以降、対円で161円から140円を割れるまで「大暴落」を演じる中、大きく売り越しに転換したが、その後は2025年1月にかけて再び買い越しが30万枚以上に回復していた(図表2参照)。トランプ政権「復活」で米金利上昇、米ドル高との予想が増えたことが大きかっただろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ところが、この2025年1月が米ドル買い越しのピークで、その後は買い越しが急ピッチで縮小に向かい、足下では大幅な売り越しになってきた。つまり、買いから売りという米ドルに対する評価の変化は、この2~3ヶ月で急激に起こったというのが正確なところではないか。

トランプ政策への強い不信感=米ドル危機は阻止できるか

評価の急変が加速するきっかけになったのが相互関税発表だった。発表から間もなく、米国株、米国債、米ドルの「トリプル安」、「米国売り」が急拡大した。こうした動きについて、ベッセント財務長官周辺では、放っておいたら「米ドル危機」に陥りかねないとの強い警戒感を抱いたと見られている。

ほんの一年で、「米ドル1強」から「米ドル危機」の瀬戸際に追い込まれるという米ドル評価の激変は、関税政策に代表されるトランプ政権の政策に対する不信感が大きいだろう。そのような不信感を払しょくし、「米国売り」再燃を回避、「米ドル危機」発生を阻止することができるか。当面、綱渡りの状況が続くことになるのではないか。