先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業版指数は揃って続落となり、香港ハンセン指数は急反発となっています。本土株式市場については、これまで軟調だった大型株が景気刺激策への期待から反発となり、これまで好調だった小型株が、大型株への資金シフトと景気失速懸念によって急反落となっています。したがって大型株の多い上海総合指数の下落幅は小さく、深セン総合指数と創業版指数の下落幅は大きくなっています。これまでもたびたびお伝えしていたように、ここのところの中国の経済統計は予想よりも悪い結果でした。そのため、昨年7月に行われたような景気刺激策が期待され、銀行株や不動産株などの大型株が大きく反発した格好です。そして実際のところ、先週末に中国の李克強首相は景気の下振れ圧力は無視できないとして、現在の中国経済のスローダウンがより一層鮮明になれば、景気刺激策に乗り出す可能性があると示唆しています。

一方、香港株ですが、週初は中国政府が一部の企業に優先株発行を認める計画を明らかにしたことから銀行株が買われ、相場を牽引しました。不良債権増加への対策で資本増強を画策している中国の銀行にとって、この政策はプラスだからです。また週末にかけては前述の景気刺激策への期待に加え、中国工商銀行(01398)などの中国の大手銀行の2013年の業績が堅調だったことから、中国の銀行株が割安な株価水準となっていることが注目され、買いが集まりました。全般的に見ると、香港株も本土株と同様で、銀行や不動産などの大型株が買われる一方で、インターネット株などの中小型株が大きく売られるような展開でした。

先週発表された経済指標としてはHSBCの3月の中国製造業景況感指数(PMI)の速報値があります。こちらは8ヶ月ぶりの低水準となる48.1に悪化しているのですが、ここのところ続いた悪い経済統計によって、ある程度織り込み済となっていたことからから、株式市場では特に反応はありませんでした。その他ではやはり人民元安の進行があります。もっとも先週は下落に歯止めがかかり、調整となったのですが、基本的に大きく下がった水準で留まっている状況で、中期的に中国の輸出にプラスに働く見通しです。今後の相場展望についてはやはり中国の景気刺激策がどうなるかにかかっていると思います。

コラム執筆:戸松信博