カナダドル売り、米10年債売り縮小の意味とは?

一時は4.6%まで低下した米長期金利

米長期金利の10年債利回りは、2024年12月初めの4.1%程度から、先週(1月14日週)は一時4.8%まで上昇した。ただ、1月15日の米CPI(消費者物価指数)発表などをきっかけに、一時は4.6%を割れるなど比較的大きく低下した(図表1参照)。

【図表1】米10年債利回りの推移(2024年10月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

こうした中で、ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、この間記録的な売り越しとなっていたカナダドルや米10年債が先週(1月14日週)にかけて売り越し縮小となっていたことが確認された(図表2、3参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋のカナダドル・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表3】CFTC統計の投機筋の米10年債・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「トランプ関税」リスクを意識したトレード

カナダドルと米10年債の売りに共通するのは、トランプ次期米大統領の肝いり政策である関税政策のリスクが意識されたと見られる点。トランプ氏は、米大統領選挙での勝利の後、「カナダとメキシコに25%の関税を課す」と発言した。またそうした輸入関税は、輸入物価の上昇により金利の上昇、債券価格の下落をもたらす可能性がある。

CFTC統計の投機筋のポジションを見ると、カナダドルと米10年債は最近にかけて記録的な売り越し拡大となっていた。その主因こそは、まさに「トランプ関税」リスクの可能性があっただろう。そしてカナダドルや米10年債の売り越しが先週(1月14日週)にかけて縮小したのは、「トランプ関税」リスクを意識したトレードが、トランプ氏の大統領就任式が近づく中でポジションを調整する動きとなり、それが先週大幅な米金利低下をもたらした大きな要因だったのではないか。

米ドル「買われ過ぎ」懸念が強まる

一方で、カナダドルを含む主要5通貨(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン)で試算した米ドルのポジションは、買い越しが1月14日時点で33.4万枚と1週間前より拡大し、2024年4月などに記録した過去最高の38万枚に迫った(図表4参照)。カナダドル以外の通貨に対して米ドル買いが続いた例もあったためだ。ただそれは、米ドルの「買われ過ぎ」懸念が強まったとも解釈できる。

【図表4】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「トランプ関税」リスクを試す取引は、結果として米ドルの「買われ過ぎ」にもつながっているようだ。トランプ政権が正式にスタートし、「トランプ関税」リスクが見極められる中で、それを試した取引の逆流が起こった場合は、米ドル「買われ過ぎ」の修正ということで、米ドル売り拡大になる可能性も注目される。