クロス円と米ドル/円で異なるトレンド評価
米ドル/円は2024年7月に161円まで上昇した後140円割れまで暴落したものの、最近にかけて一時159円近くまで上昇した(図表1参照)。対米ドルでの円安の流れは何ら変わらない印象になるが、クロス円になると、かなり印象が変わりそうだ。
ユーロ/円は、2024年7月に175円まで上昇した後に155円割れまで暴落した。その後は反発に転じたものの、最近は160円近辺と、2024年以降でみると安値圏に近い水準での推移となっている(図表2参照)。
これは豪ドル/円の場合も基本的に同じで、豪ドル/円の2024年の高値は109円、一方安値は90円。これに対して最近は、2024年のほぼ中間点と言える100円を下回る水準での推移が続いている(図表3参照)。以上のことから、米ドル/円とユーロ/円などのクロス円では、後者の円安への戻りの鈍さが目立つと言って良いだろう。
トレンドが円安から円高へ転換した可能性
テクニカルに見ても、クロス円では円安トレンドが2024年7月で終わり、円高トレンドへ転換した可能性が高まっているケースが増えている。ユーロ/円は、2024年7月以降の暴落局面で52週MA(移動平均線)を大きく割り込んだ。その後の反発局面で52週MAを上回ったものの、最近にかけて再び52週MA(1月17日現在で164円)を大きく割り込んできた(図表4参照)。これは経験的には、継続的な動き、つまりトレンドが円安から円高へ転換した可能性を示している。
豪ドル/円52週MAを比較的大きく下回る水準で推移
豪ドル/円についても見てみよう。豪ドル/円も2024年7月以降の暴落で52週MAを大きく割り込んだ。その後52週MAを上回るまで反発したものの、最近にかけては足元で99.8円程度の52週MAを比較的大きく下回る水準での推移となっている(図表5参照)。
米ドル/円は52週MAを上回る状況が継続
これに対して米ドル/円は、足下で152円程度の52週MAを上回る状況が続いている(図表6参照)。米ドル/円も、これまで見てきたクロス円と同様に2024年7月以降の暴落で52週MAを大きく割り込んだ。経験的には、それは上昇から下落へ、円安から円高へのトレンド転換を示すもので、それと逆行する一時的な上昇、つまり円安は52週MAを長く、大きく上回らない可能性が高い。その意味では、今回は異例の展開となっていると言って良いだろう。
円安トレンドに戻るか、円高トレンドへの転換に向かうのか
以上を整理してみると、米ドル/円とクロス円では、前者は円安トレンド継続、後者は円高へトレンド転換と評価が異なっている。その意味では、最近の状況はどちらのトレンド評価が正しいか試されているともいえそうだ。
米ドル/円で米ドル高・円安が再燃したのは、トランプ大統領の経済政策を巡る思惑の影響がやはり大きいだろう。これを受けて、再びクロス円も含めて円安トレンドに戻ることになるのか、それとも米ドル高・円安が異例に長い「一時的動き」であることを確認することで、全体的な円高トレンドへの転換に向かうのか。当面そうした分岐点に立っているのかもしれない。