モトリーフール米国本社 – 2025年1月19日 投稿記事より

エヌビディア[NVDA]は収益源を多様化する予定

エヌビディア[NVDA]は1993年に設立され、世界で初めて画像処理半導体(GPU)を開発しました。GPUはコンピューティングやメディア、ゲーム・アプリ向けに使われています。それから数十年を経た現在、エヌビディアはそれらの強力な半導体をデータセンター向けに進化させ、高度な人工知能(AI)モデルの開発に利用されています。

エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、データセンター事業者がAI開発企業からの需要に応えるため、自社インフラのアップグレードに今後4年間で1兆ドルを支出するだろうと考えています。現在、エヌビディアの売上高の88%をデータセンター向けが占めており、そうした支出はエヌビディアの将来の成功に大きく貢献するでしょう。

しかし、半導体産業は常に循環しており、データセンター需要の拡大が永遠に続くことはありません。それゆえ、エヌビディアにとっては収益源を多様化することが重要です。2025年1月7日に開催されたCES 2025年テクノロジー・コンファレンスにおいて、ファンCEOはこの点に関して、驚くべきニュースを発表しました。

エヌビディアが次に手掛ける数兆ドルのビジネス機会は自動走行車

エヌビディアは自動車の自動走行革命が到来することを予見していました。実際のところ、エヌビディアの自動車向け事業には20数年の実績がありますが、その売上高はわずかなもので、ゲームやデータセンター事業の足元にもおよびませんでした。それがまさに変化しようとしているのです。世界的な自動車ブランドであるメルセデス・ベンツ、現代自動車株式会社、比亜迪股分(※にんべんに分)有限公司(BYD)、ボルボ、トヨタ(7203)をはじめ、さらに多くのメーカーが自動走行を実現するため、エヌビディアの走行プラットフォームを採用しています。

エヌビディアの自動走行プラットフォーム「ドライブ」は、自動走行機能に必要なハードウエアとソフトウエアのすべてを提供します。これには「トール(Thor)」と呼ばれる最新の集中型車載コンピューターが含まれます。Thorは車のセンサーから得られるすべてのデータを処理し、道路上で最適な進路を決定します。しかし、エヌビディアの事業機会はそこで終わりません。自動車メーカーが自動運転モデルを維持・向上させるために必要なインフラも販売しており、競合他社との差別化を図っています。

「ドライブ」に加え、自動車メーカーはエヌビディア最新のAI向けGPU「ブラックウェルGB200」を搭載した、「DGXデータセンター・システム」を購入していると、ファンCEOは語りました。このシステムは自動走行ソフトウエアの継続的なトレーニングに必要なコンピューティング・パワーを提供します。さらにエヌビディアには、新たな「コスモス」多重モード基盤モデルがあります。これは、自動車メーカーがデータを合成して数百万通りにもおよぶ実走行シミュレーションを可能にし、ソフトウエアをトレーニングする材料となります。

ファンCEOは全体を見渡して、新興のロボット工学分野において、自動走行車が初めて数兆ドル規模のビジネスチャンスになると語ります。ファンCEOだけではありません。キャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメントは自動走行車による配車サービスのようなテクノロジーが2027年までに14兆ドルの企業価値を生み出す可能性があり、その大半は自動走行プラットフォームを提供するプロバイダーに帰属すると考えています。この場合、エヌビディアがそれに該当します。

エヌビディアの2025会計年度は2025年1月に終了しますが、エヌビディアは第1四半期から第3四半期までに11億ドルの自動車向け売上高を計上しました。これを換算すると、通期売上高は15億ドル前後になると思われます。ファンCEOは、2026年度の自動車向け売上高が50憶ドルに急増する可能性があると語っています。非常に速いスピードで増加することになります。

データセンター向け半導体が当面の主役

ウォール街のコンセンサス予想(ヤフー提供)によれば、エヌビディアの2026年度総売上高は1,960億ドルに達する可能性があります。そうだとすれば、エヌビディアの自動車向け売上高50億ドルの貢献は、まだまだ小さいと言えるでしょう。これはエヌビディアの将来の成長を確かなものにする長期的なシナリオです。今はデータセンターがすべてなのです。

エヌビディアは新製品であるGPU「ブラックウェルGB200」を顧客に出荷し始めたばかりですが、売上高は急拡大すると予想されています。2025年4月までに、ブラックウェル半導体の売上高が前の世代のアーキテクチャ製品を上回る可能性があります。このことは、エヌビディアのビジネスがどれだけ急速に進化しているかを浮き彫りにします。

「GB200 NVL72」システムは、同等の機能を持つ「H100」GPUシステムよりも最大30倍高速でAI推論を実行できます。「ブラックウェル」は、これまでで最も先進のAIモデルへの道を切り開くことになります。2026年あるいはそれ以降に向け、消費者や企業は「最もスマート」なAIソフト・アプリ(チャット・ボットやバーチャル・アシスタントなど)にアクセスできるかもしれません。

ブラックウェル半導体の需要は供給を上回っています。このことは、エヌビディアの2026年度売上高・利益をさらにしっかりと支えるはずです。さらに複数の報道によれば、「ルービン」と呼ばれるブラックウェル半導体の後継品が年内にも発表される可能性があります。データセンター向けGPU市場における牙城は、さらに堅固になることでしょう。

依然としてエヌビディアの株価が割安な可能性

エヌビディアの株価は2023年の初めから830%急騰し、時価総額はわずか2年で3,600億ドルから3兆3,000億ドルにまで急増しました。驚異的な株価上昇にもかかわらず、依然として株価は割安かもしれません。

本稿執筆時点の株価収益率(PER)は53.6倍で、過去10年間の平均である59倍を下回っています。しかし、ウォール街のコンセンサス予想は2026年度の1株当たり利益(EPS)を4ドル44セントとしており、予想PERは30.6倍にとどまります。言い換えると、PERが過去10年間の平均59倍と同じ水準になるには、今後12ヶ月でエヌビディアの株価は92%上昇する必要があります。エヌビディアには、ウォール街の予想を上回る習性があります。株価はさらに上値余地があるかもしれません。

その反面、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]がブラックウェル半導体の競合品を数ヶ月以内に発表する計画であるなど、他の半導体メーカーとの競争も急浮上しています。この点は2025年、時間の経過とともに投資家が注視しておくべきリスクです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Anthony Di Pizioは記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアドバンスト・マイクロ・デバイシズおよびエヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はBYDを推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。