2023年も残り僅かとなりました。2022年末のコラムでは2023年を「波乱の1年」と位置付けましたが、結果的にはこれとは異なり、比較的安定した、言い換えればややもどかしい相場展開になったと感じています。

実際、年初こそ不安定なスタートとなりましたが、金利政策や新型コロナウイルスの終息による経済活動の活発化などを受けて株価は春から急上昇となり、年末までその水準を維持しています。

2023年後半は高値への挑戦が何度も跳ね返され嫌なムードも漂ったのですが、まさに持ち堪えたというところです。このような流れを受け、2024年は「史上最高値を狙う1年」と位置付けたいと思います。

2023年、注目のテーマを振り返る

さて、今回は年末のコラムということもあり、2015年以来続けている「翌年(今回は2024年)
の注目テーマ」を採り上げたいと思います。

2022年末のコラムでは、日銀総裁、COP28、衆議院解散総選挙を特に注目するイベントとして挙げました。日銀新総裁はまさにその一挙手一投足が株式市場に大きな影響を与えました。

日銀の植田新総裁は、就任直後から為替と金利の難しいバランスに関して、資本市場に大きな動揺を与えることなく、絶妙な手綱捌きで対応されたように思います。就任1年弱でその手腕は金融市場にかなりの安心感を与えたのではないでしょうか。

その一方、ひょっとしたらと思っていた衆議院解散は見送りとなり、2024年以降に持ち越しとなりました。現在の内閣支持率を見る限り、政治はつくづく難しいものだと感じざるを得ません。

また、COP28はやや拍子抜けというのが実感としてあるでしょうか。当初は「化石燃料の段階的な完全排除」にまで踏み込むかとも思われていましたが、「脱却を進める」という内容にややトーンダウンすることとなりました。

もちろん、これが地球環境保全意識を再認識させることには間違いないのですが、対応する企業・政府は少し時間的余力を得たのではと受け止めています。しかし、それ以上に2023年はイスラエル地域でも戦闘が開始され、戦乱を感じさせる1年でもありました。世間でもよく指摘されますが、昨今の世界情勢は第1次世界大戦前の状況に酷似しつつあると感じざるを得ません。

2024年は新デザインの紙幣流通、パリオリンピック・パラリンピックの他、自民党総裁選や米大統領選挙に注目

それでは2024年はどうでしょうか。主なイベントとしては、7月に新デザイン紙幣の流通開始、7~8月にパリオリンピック・パラリンピック、9月に自民党総裁選、11月には米大統領選挙などが予定されています。

ここで私が最も注目しているのが、米大統領選です。大国である米国の今後4年間の舵取りを、誰が、どのような政策で行うのか、これはもう世界的な関心事と言っても過言ではないでしょう。前述の通り、きな臭い雰囲気が世界に蔓延し始めた上、環境問題も難しい舵取りが求められます。候補が絞られる初期段階から、様々なシナリオが株式市場に影響を与えるものと予想します。

また、国内では自民党総裁選にも注目したいところです。それに併せ、2023年の予想では空振りとなりましたが、2024年内の可能性が十分にあると考える衆議院解散総選挙も注目ワードと考えます。

この2つをセットで考えるのは、総裁選の時点で衆議院は任期満了まで残り1年となり、時間が経つほど政権としては解散を打ち出す自由度が急速に低下してしまうだろうと考えるからです。

当然、国内政治においては世界情勢への対応に加え、物価上昇や少子高齢化などへの対応も待ったなしになるなど、懸案は山積みです。これらに内閣や国会はどのように対応するのか、といった点に大きな注目が集まるでしょう。そして、株式投資という観点においても、経験則的に「選挙は買い」であることを忘れてはいけません。

2024年、東証はさらに改革を加速させる見込み

もう1つの注目点として「東証改革の加速」も採り上げたいと思います。

ROE8%を明示した2014年の伊藤レポートを皮切りに、2015年のコーポレートガバナンスコード策定、2022年の市場区分変更、2023年の低PBR改善要請など、東証は取引所としてのブランド価値引き上げ(延いては投資資金の流入増)を目論んでいます。

直近では親子上場に関しての必然性を問う動きを始めました。おそらく、このような動きは2024年も継続する、あるいはより加速するのではないかと予想します。特に注力するプライム市場においては、一旦上場したら安泰ではなく、企業努力を怠ると市場からの退出を求めるという厳しい姿勢で臨んでいる様子が透けて見えます。東証はプライム市場をグローバル基準で通用する正真正銘の「プライム企業群」に絞り込みたい(=を育成したい)ということなのでしょう。

実際、2023年は多くのプライム企業が資本コストの勉強を真剣に始め、ROEへの意識向上は配当増などにも波及するようになってきました。このような動きがさらに重なれば、これも株式市場にとっては大きな追い風になるのではないでしょうか。

なお、2024年の干支である辰年は、「辰巳天井」と呼ばれる高値挑戦の1年と格言的には位置付けられています。本当にそうなるかどうかは「神のみぞ知る」ですが、2008年に日経平均が7,000円を割り込んだ時に、そこから15年で5倍弱に上昇するなど誰が予想したでしょうか。

2024年の史上最高値更新という予測も、2023年にここまで持ち堪えたことを考えれば、あながち夢物語ではないようにも思います。現実はたびたび常識を裏切ってくるものです。いずれにしても2024年も良い相場に期待したいところです。