トランプ氏の大統領選勝利以降、暗号資産の価格が驚異的な上昇を見せました。暗号資産業界からトランプ氏への選挙期間中の献金額は1億ドル(≒150億円)を超えるとされています。同氏の合計の調達額が10億ドル強とされる中ではかなりのウェイトです。業界や市場が何らかの『見返り』を期待するのは無理もないことでしょう。

具体的に、何が期待されているのでしょうか。

第1に、規制緩和です。一部の暗号資産は、SECの管轄から商品先物取引所の管轄に移される可能性も報じられており、例えば、銀行等が暗号資産の保有や関連業務の取り組みが容易になるなら新たな朗報でしょう。

第2に、トランプ氏と共和党議員の「戦略的準備金」構想です。トランプ氏が政府が犯罪から押収したビットコインを準備金として活用すると表明したのに加え、共和党の議員が、今後5年間にわたりビットコインを買い増していくことなどを含む「ビットコイン法案」を提出しました。

そして、第3に、「暗号資産諮問委員会」設立への期待です。ロイター等の報道によれば、トランプ氏は、この諮問機関の設置を7月に約束しています。

しかし、暗号資産の価格は足元で大きく調整しており、この3日間で、ビットコインは5%超下落、イーロンマスク氏お気に入りのドージコインは10%超下落しています。この程度で止まるのであれば、11月からの急上昇の調整ととらえられる範囲と思われますが、今後再度の上昇の可能性はあるのでしょうか。

様々なトランプ氏の政策期待の中でも、ビットコインの政府準備金としての活用は最も注目される政策です。実は、世界の政府部門は、既に様々な理由でビットコインを保有しており、その金額は、市場全体の2%に上るとされています(Bitcoin Treasuries by BiTBO)。こうした法定通貨以外の資産の準備金への追加は、各国政府の財政拡大に伴う、法定通貨の価値低下懸念へのアンチテーゼとしても興味深い動きです。まだ可能性は高くないと思いますが、仮に、米国のような大国の政府が暗号資産を価値貯蔵の手段に選ぶようなことがあれば、大きなパラダイムシフトになるでしょう。実現は、まさに献金の『神通力』にかかっていると思います。