2025年3月11日(火)8:30発表
日本 家計調査2025年1月分

【1】結果:消費は全般に減速傾向がうかがえる

【図表1】直近の消費関連統計
※<単位>の補足がないものは指数値、またカッコ内は前年同月比%
出所:総務省、内閣府、日本銀行、経済産業省よりマネックス証券作成

2025年1月の家計調査では二人以上勤労者世帯の実質消費支出は、前年同月比1.1%増の33.1万円と3ヶ月連続で前年を上回る伸びとなりました。一方で、前月の2024年12月からは消費の伸びが鈍化しています。また、図表1に記載はないものの、個人営業世帯や無職世帯を含んだ二人以上の世帯における実質消費支出は同0.8%増となっており、前月の同2.7%増から伸びが鈍化する結果となりました。

そのほかの指標を概観すると、日銀の発表する消費活動指数は低下傾向がうかがえ、また消費マインド指標も緩やかながら縮小傾向にあると判断できるでしょう。

【2】内容・注目点:需要供給ともに縮小が確認でき、今四半期のGDPには下押しが

【図表2】二人以上、勤労者世帯の消費支出、実収入、可処分所得の推移(実質ベース、前年同月比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

家計調査は、世帯の家計簿をベースとした経済指標であり、需要サイド(実際に消費を行う主体⇔販売統計等、財やサービスを提供する側の動向は供給サイド)の消費動向が捕捉されるものです。

2024年12月の需要サイドの消費は強さが見られる内容でした。冬のボーナスや、2024年中に積み上げられた可処分所得(図表2)が消費に転嫁されたものと推測され、その消費の基調が継続されるかが注目されていました。しかし、最新のデータではプラス圏であるも消費支出の伸びが鈍化する内容となりました。グラフからは実収入、ないしは可処分所得の落ち込みが寄与したことがうかがえ、実質ベースでの収入、可処分所得がマイナスに転換したことが消費減退につながったものと考えられます。

【図表3】消費活動指数の推移(2015年=100)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

日銀が発表する消費活動指数は、供給サイドの消費を把握する指標とされています。足元では、明らかな減速傾向がうかがえ、インバウンド消費を控除した旅行収支調整済指数は縮小が顕著なことがわかります。先の2ヶ月では生鮮食品を中心に大きく物価上昇となったことが、主な要因と考えられますが、現時点では2025年1~3月期の消費動向、ないしはGDPの民間最終消費支出は弱含む確度が高いと推察されます。

【3】所感:健全な消費回復にはまだ時間がかかると予想

【図表4】消費マインド指標の推移
出所:内閣府よりマネックス証券作成

消費マインド指標をみても、特段の改善がうかがえる内容ではなく、基調判断も足踏みの状態が長く続いています。マインド指標は先行きへの不安等で下押される指標であり、経済のみならず足元の日本の不安定な政治情勢も先行き不安に寄与している一面があるでしょう。

過去に実施された定額減税や2024年の賃上げ機運をもってしても、図表4の指標の改善は限定的であったことを考えると、マインドが急速に改善する特効薬の出現を期待することは難しいと感じています。政府当局は、先の半年間を消費は緩やかな改善にあるといった評価をしているものの、マインドが伴った健全な消費の改善にはまだ時間を要すものだと考えられます。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太