株式を始めとする金融資産の運用の手法は、大きくインデックス運用とアクティブ運用に分けられます。

インデックス運用は日本株であれば日経平均やTOPIXのような市場平均に連動した運用成果を目指す運用で、アクティブ運用はインデックスを上回る成果を目指す運用です。

アクティブ運用の3つの根本問題

このコラムの読者の皆さんは、私がマネックス証券に在籍していた1999年からずっと「インデックス投資派」であることをご存知かもしれません。

私がアクティブ運用に関して積極的に評価できないのには、
1)コスト
2)構造的問題
3)隠れインデックス
の3つの根本問題が存在すると考えるからです。

アクティブ運用は高コスト

アクティブ運用を行う投資信託は、インデックス運用を行う場合と比べて、年間の管理コストである信託報酬が高めになる傾向があります。

信託報酬が高ければ、同じ運用実績であっても、コストを引いた後では不利になります。この点から、アクティブファンドには優位性がありません。

アクティブファンドの半分以下しかインデックスを上回る運用成績をあげられないという世界共通の傾向の理由の1つはこのコストにあるのです。

アクティブ運用の好成績が続きにくい構造的な理由

アクティブファンドのもう一つの問題は、運用成績の上昇に伴って発生する成績低下という構造的な問題です。

運用成績の良いアクティブファンドは、マネー雑誌やSNSなどで優良なファンドとして紹介され人気がでます。それに伴い、投資資金が短期間に大量流入し、ファンドのサイズが急拡大していきます。

投資信託は投資先が見つからないからといって、現金資産を長期にわたって保有するわけにはいきません。有望な投資対象を見つけることができなくても、流入する金額に見合った投資先を無理矢理選ばざるをえなくなります。その結果、運用パフォーマンスが低下していく。

これは多くの人気アクティブファンドに見られる共通の傾向です。

インデックスファンドが、規模が拡大するほど運用成績が安定し、目標とするトラッキングエラーが小さくなって運用成績が改善していくのとは対照的です。

アクティブ運用とは言えないアクティブファンド

さらに、アクティブファンドの中には銘柄構成を見るとインデックスと大きな違いが見られない「隠れインデックスファンド」も少なくありません。

構成銘柄数が極端に多い場合や、時価総額が大きな著名企業の構成比率が高いファンドはインデックス化のリスクがあると考えた方が良いでしょう。

インデックス運用に近いアクティブファンドに高い信託報酬を支払う理由はありません。

このようにアクティブ運用の問題点を挙げればキリがありません。

ただし、物事には常に例外があります。逆にアクティブ運用の可能性についても考えてみました。

アクティブ運用にも収益機会が存在する

市場の効率性が高くないマーケットにおいては、株式価値が正当に評価されず株価に「歪み」が生じるケースがあります。

例えば、時価総額の大きくない、いわゆる中小型株の中には、アナリストなどのプロの投資家のリサーチの対象から外れ、企業価値が過小評価されている銘柄が存在します。

あるいは、企業規模が小さすぎて機関投資家の投資対象になりにくく、大口の買い手の少ない割安な銘柄も存在します。

このような銘柄を丹念に拾い上げ、ポートフォリオを構成することによって、インデックスに対抗できる可能性はゼロではありません。

また同じ株式でも、インデックスの対象とならないような上場前の未公開株式に投資をして、ハイリスクハイリターンな運用成果を目指す方法もあり得ます。

インデックス運用至上主義に囚われない

私はアクティブ運用には否定的ですが、固定観念にとらわれることなく、マーケットや運用手法の変化に柔軟に考えることが大切だと思っています。

インデックス運用にも問題があり、完璧な投資法とは思っていません。逆に、上記で指摘したようにアクティブ運用にもインデックスを上回るリターンを上げる可能性がある事は事実です。

しかし、インデックス運用はトータルで見れば、今なおアクティブ運用より「ベター」な運用手法といえます。

なぜなら、インデックスを上回るアクティブファンドが存在したとしても、それをどのようにして事前に見つけられるのかがわからなければ、意味がないからです。