石破新首相は首相就任から戦後の憲政史上最短となる8日で衆院を解散し、報道は一気に選挙モードとなりました。石破ショックを引き起こすほどに懸念されていた新首相の「金融引締的スタンス」も、選挙モードとなって現実路線に引き寄せられた結果、かなりトーンダウンしてきたように思えます。その結果、日経平均も石破ショック直後はかなりボラティリティの大きな推移にありましたが、選挙モードとなってからは新政権の現実路線に安心するかのようにじりじりと上昇してきています。やはり「選挙は買い」ということなのでしょう。ただし、選挙の行方は自民党総裁選のようにまだまだ混沌としています。株式市場もしばらくは選挙の行方をにらんでの神経質な展開になるものと見ています。

事故発生を未然に防ぐ技術が日々の安全運行を支えている

さて、今回は「鉄道関連銘柄」を採り上げてみましょう。先月、びっくりするようなことが起こりました。JR東日本の運行する東北新幹線で走行中に連結車輛が分離し、緊急停止したのです。原因は連結器分離スイッチに紛れ込んでいた金属片による誤作動とみられており、既にJR東日本ではその他の車輛においても混入金属片の除去などを終えているということです。運行には大きな影響が発生しましたが、怪我人などがなかったことは幸いでした。

ここで注目すべきは、もちろん連結が外れるという異常事態の発生もですが、それ以上に大事故には至らなかったということでしょう。高速で移動する鉄道車輛において、異常事態の発生は乗員乗客の生死にもかかわる問題となります。しかし、今回は自動ブレーキがきちんと作動し、事故の発生を未然に防ぐことができました。このような際に発動する非常ブレーキは伝統的な技術とのことですが、やはり利用者とすれば安心感を新たにするものとなります。

今回のコラムでは、そうした鉄道技術に関連する銘柄群をまとめてみたいと思います。これら銘柄群は日本の交通インフラを支える基幹企業であり、今後は老朽設備更新需要が期待できる他、企業によっては海外へ鉄道インフラの輸出機会を有しているケースもあります。そのような観点で、銘柄群を捉えていただければ幸いです。

鉄道関連銘柄を3つのカテゴリーに分類

鉄道関連と一口に言いますが、大きく3つのカテゴリーに分けて考える必要があります。

1つ目は鉄道車輛そのものの製造・保守です。高速化と安全性という相反するニーズを同時に満たす鉄道車輛は鉄道インフラの根幹と言えるでしょう。

2つ目は周辺設備です。信号機やレール、駅建設などがその代表と言えるでしょう。昨今は、転落防止のための可動式ホーム柵(ホームドア)の設置件数が増加しているうえ、大都市圏では新路線計画も進められています。さらに、老朽化した駅の改築、路線の高架化/地下化に関連するビジネスもこの領域に当て嵌まると位置付けます。

3つ目は、運行システムです。特に大都市圏での過密ダイヤは、このようなシステムなしには実現が不可能ではないでしょうか。また、トラブル発生時にも運行システムは重要な役割を果たします。運転距離の長い鉄道は、一ヶ所で発生したトラブルがドミノ倒しのように広範な地域に影響します。車輛の緊急停止システム、復旧再開までの臨機応変な対応など、その最たるものと考えます。

鉄道関連銘柄は長期投資の観点で注目

1)鉄道車両関連銘柄

では、具体的にどのような銘柄が考えられるでしょうか。1つ目の鉄道車輛に関しては、日立製作所(6501)、川崎重工業(7012)、日本車輌製造(7102)の3社が車輛製造シェア上位企業となります。ただし、日立製作所、川崎重工業は多角的に事業を展開しているため、車輛ビジネスが全社売上に占める割合はともに1割に満たないことは認識しておく必要があるでしょう。また、車輛輸出も手掛けており、日立製作所はイギリス国内高速新線や台湾高速鉄路への車輛を受注したことを明らかにしています。川崎重工業、日本車輌製造もインドネシア・バングラデシュ向けの実績を有しています。

車輛輸出は日本クオリティを追求する運行システムなどとセットで展開されるケースが多く、そのために爆発的な普及にはコストが足枷になっているようです。しかし、その安全性・安定性は世界標準で見ても群を抜いているとの評価にあり、長年使用するインフラとしての価値の訴求に今後は期待したいところです。

2)鉄道周辺事業関連銘柄

2つ目の周辺事業においては、信号やホームドア関連では京三製作所(6742)、日本信号(6741)、大同信号(6743)、三菱電機(6503)、ナブテスコ(6268)といった企業が、レールでは日本製鉄(5401)、大和工業(5444)、JFEホールディングス(5411)などの企業群が挙げられます。

鉄道建設では、リニア新幹線プロジェクトなどが期待される大成建設(1801)、鹿島(1812)、大林組(1802)、清水建設(1803)といったスーパーゼネコンや、一般の鉄道工事に実績のある東鉄工業(1835)、鉄建建設(1815)、熊谷組(1861)、インフロニア・ホールディングス(5076)、飛島ホールディングス(256A)などが注目されるでしょう。

3)運行システム関連銘柄

3つ目の運行システムでは、日立製作所(6501)、京三製作所(6742)、三菱電機(6503)などの企業に実績があります。もちろんJR各社や私鉄大手なども自社もしくは共同開発という形で関与しているケースは少なくありません。

日本の鉄道インフラを維持し、発展させていくには、こうした企業群の貢献は不可欠と考えます。大きなニュースフローが出難い業界ではありますが、長期投資という観点で注目してみるのもいかがでしょうか。