モトリーフール米国本社 、2024年9月8日 投稿記事より

インテル[INTC]が安定した利益成長を実現するには思い切った手段が必要

インテル[INTC]は、PCやサーバー向けの中央演算処理装置(CPU)であるx86 CPUの世界最大手メーカーであり、かつては半導体セクターをリードする存在でした。しかし、過去10年間で株価は50%超下落しており、同業のアドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]、エヌビディア[NVDA]、クアルコム[QCOM]と比べて半導体メーカーとしての価値が大幅に低下しています。

インテルの凋落の原因は、製造上の問題、製品の遅れ、市場シェアの低下、過去3人のCEOによる戦略転換の失敗にあります。モバイル向けチップへのシフトに乗り遅れ、コスト削減に注力し過ぎ、長引く製造上の問題を解決し、新しいチップに投資する代わりに、自社株を買い続けました。

2013~2023年まで、インテルの売上高の年平均成長率(CAGR)は、マイナス0.3%というひどい有様でした。一方、自社製チップの生産をインテルのライバルである台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]に委託しているアドバンスト・マイクロ・デバイシズの売上高は、同期間に年平均15.6%という成長を遂げています。

そのため、インテルが苦境にあえぐ事業の規模を適正化するために、思い切った手段を模索していると報じられても、それほど驚くことではありません。報道されているようなアイデアは、果たしてインテルの株価上昇につながるでしょうか。

インテルが抱える主な問題

インテルは、今でも統合デバイスメーカーであり、半導体の設計、製造、販売を自社で手掛けています。これはアドバンスト・マイクロ・デバイシズやエヌビディアとの大きな違いで、この2社は製造を外部のファウンドリに委託しているファブレスメーカーです。

インテルのファウンドリは、かつては世界最先端の半導体を製造していました。しかし、過去10年の間に、より小さく、より高密度で、より電力効率に優れた半導体を製造する「プロセス競争」において、TSMCとサムスン電子というアジアの競合メーカーの後塵を拝する結果になりました。

インテルの問題は、14ナノメートル(nm)チップから10nmチップへの移行に手間取ったことに始まり(2018~2019年)、その後の7nmチップへの移行にさらに遅れたことで悪化しました(2020~2023年)。こうした致命的な遅れを背景に、多くのPCメーカーがインテル製CPUからアドバンスト・マイクロ・デバイシズ製のCPUに乗り換えました。

PCの性能を測定しているパスマーク・ソフトウェアによると、インテル製x86 CPUの市場シェアは、2016年第3四半期の82.5%から2024年第3四半期には61.8%まで低下しています。同期間にAMDの市場シェアは17.5%から35.4%に上昇しています。

研究・開発支出を積極的に拡大したTSMCと異なり、インテルは設備投資を厳しく管理し、自社株買いや配当のために多くの現金を確保してきました。2019~2021年にCEOを務めたボブ・スワン氏は、製造上の問題を恒久的に解決するために、一時はアドバンスト・マイクロ・デバイシズに倣ってファブレスメーカーになることまで検討しました。

スワン氏の後任のパット・ゲルシンガーCEOは、自社のファウンドリの拡張に積極的に投資し、TSMCやサムスン電子に追い付こうとしました。これはコストのかかる戦略でした。ゲルシンガーCEOはそのコストを欧米各国の政府補助金で相殺しようとしましたが、そうした政府補助金の一部はTSMCの海外工場に流れました。

インテルが再び成長するには、縮小が必要なのか

ゲルシンガー氏がCEOに就任して以降、インテルはOptaneメモリー事業、ネットワーク・スイッチ事業、4G/5Gコネクティビティ・ソリューション事業、プレビルド・サーバー事業、暗号通貨マイニング事業など、多くの事業を手放してきました。さらに、NANDメモリー事業を韓国のSKハイニックスに段階的に売却し、自動車向け半導体事業のモービルアイ・グローバル[MBLY]をスピンオフし、モバイル向け半導体を設計するアーム・ホールディングス[ARM]の残りの持ち分を売却しました。

インテルは、8月上旬には、配当の停止に加え、従業員の15%削減によって2025年までに100億ドルのコスト削減を実施することを発表しました。これらの衝撃的な発表と同時に第2四半期決算も発表されましたが、決算内容もアナリスト予想を大きく下回る散々な内容で、最新のMeteor Lakeチップの増産がうまくいっていないことが明らかになりました。

最新の報道は、インテルが低迷するファウンドリ事業をスピンオフまたは売却する可能性があると報じています。この動きは、アドバンスト・マイクロ・デバイシズが2009年にグローバルファウンドリーズをスピンオフしたのと同様ですが、ゲルシンガーCEOの当初の計画とは正反対の内容です。

もしこれが実現すれば、インテル自身はファブレスメーカーとなり、新たにスピンオフする事業やTSMCのような第三者のファウンドリに製造をすべて委託することで、コストは大幅に削減されるはずです。しかし、このような思い切った手段に出たとしてもアドバンスト・マイクロ・デバイシズと似たような企業になり、TSMCに依存することになるだけです。

他にも、インテルが2015年に買収した、プログラマブル半導体を手掛けるアルテラを売却するという噂もあります。しかし、この売却は、2022年にアルテラの最大のライバルであるザイリンクスを買収・統合したアドバンスト・マイクロ・デバイシズに対する防御力の低下につながります。

インテルの事業縮小が、他社にTSMCやアドバンスト・マイクロ・デバイシズに追い風となる可能性

インテル側は、これらの噂について一切認めていませんが、2025年までにプロセス競争における主導権をTSMCから奪還するという、ゲルシンガーCEOの壮大な計画にもはや固執していないことを示唆しています。それどころか、ファブレスメーカーになるというスワン元CEOのアイデアに立ち戻ろうとしているようにさえ見えます。

そうなれば、事業規模は適正化し、安定した利益成長を取り戻せるかもしれませんが、それは、これまでの3年間に多くの貴重な時間と莫大なコストを無駄にしたことを意味します。つまり、インテルが事業縮小に取り組むことは、実際には明らかな危険信号であり、TSMCやアドバンスト・マイクロ・デバイシズにとって追い風となる可能性があります。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Leo Sunは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ、エヌビディア、クアルコム、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、インテル、モービルアイ・グローバルの株式、および以下のオプションを推奨しています。インテルの2024年11月満期の24ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。