モトリーフール米国本社 – 2025年1月7日 投稿記事より
エージェント型AIが困難な問題を自律的に解決していく可能性
2025年は人工知能(AI)ソフトウェアの年になりそうです。過去2年間、AIブームはエヌビディア[NVDA]のような半導体銘柄に集中していましたが、生成AIコンピューティングの規模に対応したデータセンターを構築した今、次にこの新たなテックブームの恩恵を受けるのはソフトウェア企業になりそうです。
ウェドブッシュ証券のテクノロジーアナリスト、ダン・アイブス氏は最近、「ユースケースが爆発的に増えていると思われる今こそ、より広範なソフトウェア分野がAIパーティーに参加する時が来た」と語っています。
エージェント型AI(自律型AI)は、業界で急速にバズワードになりつつあります。自律エージェントを介してAIを利用することは、チャットボットを超えて、生成AIの最も直接的な応用例の1つであると思われます。エージェント型AIによって、AI技術は高度な推論と多段階計画を使って困難な問題を自律的に解決することが可能となります。
各社は急速にエージェント型AIツールを構築していますが、この新たなテクノロジーのリーダーになりそうなのが、セールスフォースのAgentforceです。
セールスフォースがエージェント型AIで行っていること
セールスフォースはクラウドソフトウェア専業として最も歴史のある銘柄のひとつで、顧客関係管理(CRM)ソフトウェア市場を長年リードしてきました。セールスフォースは、エヌビディアや他のAIリーダー企業と同様に、長年の研究とデータをもとに、新しいAI製品Agentforceを開発しています。同社主催の世界最大級のAIイベントである「Dreamforce」の9月カンファレンスでAgentforceを発表しました。
Agentforceを利用すると、ユーザーは従業員や顧客に24時間365日対応できる自律型AIエージェントの構築およびカスタマイズができます。セールスフォースによれば、Agentforceはヘルプサイト訪問者のリクエストについて、その83%を解決しており、利用範囲はCRMからSlack、Tableauまでセールスフォースの製品全体にわたっています。
こうした接点とセールスフォースの25年にわたる歴史によって、ほとんどの競合他社より、より深い顧客関係を築いています。マーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は最近の決算説明会で、エージェントAIとAgentforceが同社の獲得可能な最大市場規模(TAM)を大幅に拡大したと説明しました。同氏は次のように述べています。「私たちは本当に全く新しい市場、新しいTAMを創造しました。このTAMは、データ管理市場よりもはるかに大きく、はるかにエキサイティングで、その全容を完全に把握するのは難しいほどです。」
セールスフォースはすでにAgentforceで200件の契約を結んでおり、ベニオフ氏はそのパイプライン(仕掛案件)を「驚異的だ」と表現しました。
AIで株価が急騰した理由のひとつは、この技術が生産性を大幅に拡大する力を持っているからであり、Agentforceはそれを利用した最初のツールのひとつです。ベニオフCEOは、「これはまさに、生産性がもはや労働力の増加に依存せず、このインテリジェントテクノロジーによって無制限に拡張可能となった瞬間なのです」と述べています。
エージェント型AIは、セールスフォースのゲームチェンジャーとなるか
セールスフォースの増収率は、パンデミック前の水準から大幅に鈍化しており、第3四半期はわずか8.3%でした。また、現在の業績見通しには、Agentforceが顕著な成果をもたらしているという証拠はまだ見られません。
第4四半期については、売上高が7%から9%成長し、今後1年間の受注残(RPO)が9%成長するとの見通しを示しました。
AgentforceとAgentic AIは2024年9月に発売されたばかりであるため、同社の成長に影響を与え始めるにはあと数四半期かかるとみられます。
また、Agentforce のような製品は、一般的なソフトウェアと同様に拡張性が高く、追加顧客に提供する際の限界コストが実質的にゼロであるため、セールスフォースに高い利益率をもたらす可能性があります。知的財産が創出されると、主にその運用に必要なクラウドコンピューティングの能力に関連するコストが発生します。製品の開発に必要な研究開発はすでに完了していますが、セールスフォースはそれを改良していく可能性が高いとみられます。結果として、Agentforce からの増収分はほとんどが利益となるはずです。
これが、クラウドインフラ企業がAIインフラを構築するために、エヌビディアのコンポーネントに数百億ドルを投じることを厭わなかった理由なのです。Agentforceのようなソフトウェア・プログラムの可能性は非常に大きく、セールスフォースの顧客に大きな付加価値と生産性の向上をもたらし、顧客はその対価を喜んで支払うでしょう。
AgentforceがセールスフォースのTAMをどれだけ拡大し、成長を促進するかはわかりませんが、投資家はベニオフ氏の言葉に耳を傾けたほうがよいでしょう。この新しいテクノロジーはセールスフォースにとって、ゲームチェンジャーになる可能性が高いと思われます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者 Jeremy Bowmanは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はエヌビディアとセールスフォースの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。