モトリーフール米国本社、2024年12月24日 投稿記事より

電気自動車(EV)市場は、米連邦政府によるEV税控除が打ち切られる可能性や、一部の消費者がEVよりもハイブリッド車を選ぶなど、現在、不透明な状況にあります。

EV中心の未来への移行は当初の予想よりやや時間がかかっていますが、投資ポートフォリオにおけるEVセクターへの投資比率を高めるとしたら、リーダーとして不動の地位にあるテスラ[TSLA]とスタートアップ企業のルーシッド・グループ[LCID]のどちらに資金を投入するのがよいでしょうか。

ルーシッド・グループ:いくつかの課題に直面している

ルーシッドの2024年第3四半期決算は、精彩を欠く内容でした。純損失は9億9,200万ドルで、前年同期の6億3,100万ドルから赤字が拡大しています。若い自動車会社が、生産を増強する間に利益を生み出せないのは珍しいことではありませんが、ルーシッドが生産を開始して3年が過ぎ、赤字は拡大ではなく、縮小しても良いはずです。

ルーシッドの第3四半期の生産台数は1,805台であり、第2四半期の2,110台から減少しています。前年同期比では16%増でしたが、増加幅は小幅で、年内に大幅な好転は見込めません。経営陣は、2024年の年間生産台数を9,000台と予想しており、これは前年比で7%増に届きません。

さらに悪いことに、ルーシッドは数ヶ月前、資金調達のために公開市場で新株約2億6,300万株を売り出しました。同社はまた、筆頭株主であるサウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)に3億7,470万株を直接売却し、追加出資を受けています。これら株式の追加発行によってルーシッドは約16億7,000万ドルを調達し、2026年まで事業を継続するには十分とみられます。

駆け出しのスタートアップ企業が資金調達を必要とするのは驚くことではありませんが、それにしてもルーシッドは莫大な現金を消費しており、第3四半期にわずか2億ドルの売上高に対して9億9,200万ドルの赤字という状況を見ると、同社が近い将来にさらなる資金調達が必要になるのではないかとの疑問も残ります。

生産台数の伸び悩みと赤字の拡大から見て、ルーシッドは投資先としてあまり魅力的とは言えません。

テスラ:初期のリードを依然として維持している

テスラは長らくEV市場において圧倒的な強さを誇ってきましたが、最近はやや押され気味です。中国の自動車メーカーだけでなく、米国の伝統的自動車メーカーによる新型EVモデルとの競争激化に伴い、販売面で厳しい戦いを強いられており、競争から抜け出すのには程遠い状況です。

2024年第3四半期の売上高は前年同期比8%増の251億ドル、非GAAPベース1株当たり利益(EPS)は9%増の0.72ドルでした。売上高はアナリストのコンセンサス予想をわずかに下回ったものの、利益はウォール街の予想を上回りました。

第3四半期の生産台数は前年同期比9%増の46万9,796台、出荷台数は同6%増の46万2,890台でした。生産台数の前年同期比伸び率はルーシッドを下回りましたが、自動車メーカーが成長して生産台数が増加するにつれて、成長率が減速するのは当然のことです。

テスラをめぐっては、低価格EVを2025年に売り出すとの報道もありました。実現すれば、販売台数に弾みがつく可能性があります。一方で、もし実現しなかったとしても、テスラには、自律走行ライドシェアサービスの「Robotaxi」の開始や、監視付きでの完全自動運転システムといった既存サービスの拡大など、他にも収益拡大のチャンスがあります。後者に関しては、第3四半期に既に3億2,600万ドルの売り上げを上げています。

結論:EV銘柄として優れているのはテスラ

テスラはルーシッドと比べて成長ストーリーのはるか先を行っているため、両社を比較するのは簡単なことではありません。しかし、非常に多くのEVを生産し続けていること、そして利益を生み出していることを考えると、テスラ株の方が優れていると思われます。現時点において、ルーシッドはどちらの面でも太刀打ちできません。

テスラ株は高いプレミアムで取引されており、予想株価収益率(PER)は135倍となっています。S&P500種指数の平均PERの約30.7倍と比べると、かなり割高です。しかし、ルーシッドが赤字に歯止めをかけ、生産台数が増加するまでは、この2社で比較するとテスラは優位な立場となるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Chris Neigerは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はテスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。