2024年9月5日(木)8:30発表
日本 毎月勤労統計2024年7月
【1】結果:7月も賞与が押し上げ、所定内給与も上昇続く
2024年7月の名目賃金は前年比3.6%増、実質賃金は同0.4%増の結果となりました。前回6月の結果からは勢いを落としたものの、2指標ともに市場予想を上回る伸びを示しており、実質賃金については、市場予想ではマイナス0.6%が予想されている中、プラスで着地しています(図表1)。7月も前回同様にボーナス、賞与にあたる「特別に支払われた給与」が前年比6.2%と大幅に上昇したことが、実質賃金の2ヶ月連続プラスに寄与しました(図表2)。
一方で、ベース賃金の基本給に該当する所定内給与は上昇幅を拡大しています(図表3)。春闘の結果が反映され始めたことが要因と考えられ、2%台後半まで上昇しています。
【2】内容・注目点:企業の余力と人手不足から来年の賃上げ期待も高い
上述の通り、総支給額の名目賃金の上昇が確認できますが、労働時間をみると所定外労働時間が2023年以来、前年比マイナスで推移しており、縮小傾向が顕著なことがわかります(図表4)。時間外労働については、2024年問題など労働時間の上限規制が適用されたことなどが要因と考えられます。
足元の賃上げ要因は、やはりベースアップが反映された所定内給与と賞与等の特別給与が要因でしょう。注目点は、来年もまた同等の賃上げができるかどうかかと思います。
今週初めに発表された、法人企業統計調査から見る労働分配率からも、人件費転嫁の余力はあると考えられること(図表5)や、直近の人手不足動向(※)による、人材確保のための賃上げといった企業行動が期待でき、賃上げ機運は続くのではと考えています。
(※)帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年上半期)」によれば、2014年以来、1-6月間での人手不足倒産件数は2024年が最多であるとのこと。
【3】所感:短期的な実質賃金はプラス推移を予想
足元の物価動向はエネルギーが押し上げている一方で、財やサービスが縮小傾向といった状況です。短期的には物価を押し上げているエネルギーが、政府による政策効果で縮小していくことから秋に出るインフレ指標は落ち着いた結果となるでしょう。図表3にある所定内給与も、上昇した基本給が下がることは考えにくいため、同水準で推移していくことが予想できます。基本給vsインフレを考えた時に、短期的には基本給(所定内給与)の方が上昇していくと考えられ、実質賃金指標はポジティブな内容になるのではないでしょうか(図表6)。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太