モトリーフール米国本社、2024年8月25日 投稿記事より

小売大手のターゲットは、ようやく危機を脱した模様

ディスカウントストア・チェーンを運営するターゲット[TGT]は8月21日、四半期決算を受けて株価が11%急騰しました。2024年度(2025年1月期)第2四半期の売上高は前年同期比3%増の254億5,000万ドルとなり、アナリスト予想を2億4,000万ドル上回りました。既存店売上高は2%増でした。調整後1株当たり利益(EPS)は42%増の2.57ドルとなり、コンセンサス予想を0.39ドル上回りました。

ターゲットの決算は素晴らしい内容でしたが、株価は依然として、2021年11月に付けた過去最高値から40%超下落しています。最新の決算発表を受け、この優良小売銘柄もついに上昇に転じるのでしょうか。

ターゲットの株価が3年間も低迷している理由

ターゲットは、「小売業の終末」を生き延びた数少ない大手小売企業の1社です。アマゾン・ドットコム[AMZN]やウォルマート[WMT]の価格に合わせ、プライベートブランドを立ち上げ、eコマース機能を拡充するなど、競合他社と歩調を合わせています。また、全米人口の75%超がターゲットの店舗から10マイル以内に住んでいることから、既存店舗を、配送や店舗での受け取りといったオンライン顧客のフルフィルメントセンターとして機能させることにも成功しています。

2020年度(2021年1月期)の売上高は20%増、既存店売上高は19%増と急増しました。この加速を後押ししたのはオンライン既存店売上高で、新型コロナウイルスの感染拡大時にオンラインで買い物をする顧客が増えたことで、オンライン既存店売上高は145%という急増を遂げました。この勢いは2021年度も続きましたが、2022年度と2023年度には成長が鈍化しました。

出所:ターゲット

指標

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

既存店売上高成長率

19.3%

12.7%

2.2%

-3.7%

売上高成長率

19.8%

13.3%

2.9%

-1.6%

粗利益率

28.4%

28.3%

23.6%

26.5%

出所:ターゲット

2022年度にはサプライチェーンの混乱が続き、インフレによる個人消費への逆風もありました。そして、前年度までのパンデミックを背景とした急成長との厳しい比較にも苦しみました。成長が冷え込み、在庫水準が上昇したことから、同社は多くの商品を値下げしました。しかし、こうした大幅値下げに加え輸送コストが上昇したことで、粗利益率は大幅に低下しました。

この状況は2023年度も改善しませんでした。インフレと競争の逆風が成長の足かせとなっただけでなく、万引きや安全性の問題、さらには性的マイノリティーの権利を促進する「プライド月間」キャンペーンに対する保守層によるボイコットも、成長鈍化を悪化させました。輸送コストの安定や在庫の削減で粗利益率は改善したものの、依然として2020年度や2021年度を下回ったままです。ターゲットの株価が、過去3年間にわたりウォルマートを大幅にアンダーパフォームしているのはそのためです。

ターゲットの事業はようやく回復に転じたのか

2024年度第1四半期にターゲットの既存店売上高は3.7%減少しましたが、コスト削減が値引きを相殺し、粗利益率は140ベーシスポイント(bp)改善して27.7%となりました。こうした強弱混在の結果は、同社がまだ危機を脱していないことを示唆しています。

しかし、第2四半期になると既存店売上高は2%増加し、粗利益率は190bp上昇して28.9%となり、コロナ禍で記録した高水準を上回りました。第3四半期および通期の既存店売上高は、いずれも0~2%の増加が見込まれています。

この見通しは全ての懸念がなくなるというほどではありませんが、ターゲットが2023年度の業績の谷を乗り越え、2023年に経営破綻したベッド・バス・アンド・ビヨンドのようにならずに済むであろうことを示唆しています。会社側は、緩やかですが着実な回復の要因として、即日配達サービスの2桁成長、裁量的支出の増加(特に衣料品や美容関連商品)、店舗内のショッピングエクスペリエンスの向上、多くの日用品を対象とした戦略的値下げを挙げています。同社はまた、万引きの被害が深刻な店舗の閉鎖、一部商品の施錠、警備員の増員により、盗難対策でも成果を上げています。

ターゲットは引き続き、業績の悪い店舗を閉める一方で、実店舗を拡大しています。第2四半期末時点の店舗数は1,966店舗であり、前年同期の1,955店舗、2020年度末時点の1,897店舗から増加しています。小売り企業が既存店売上高と粗利益率を伸ばしながら新規出店を続けられるのは、一般的に良い兆候でしょう。

ターゲットは、第3四半期のEPSが前年同期比で0~14%増、2024年度通期では1~8.5%増と予想しています。これは、4%減~7%増という従来の通期予想から上方修正されたものです。アナリストは4%増を予想しています。

ターゲット株に投資妙味はあるか

足元のターゲットの株価は約160ドルで、2024年通期の調整後EPSガイダンスレンジの中央値に基づくと株価収益率(PER)はわずか17倍です。配当利回りは約3%とまずまずの水準であり、53年連続で増配している配当王の一員です。

つまり、ターゲットは足元の水準で購入しても安全な銘柄に見えます。すぐに過去最高値まで回復することはないかもしれませんが、安定的成長、低いバリュエーション、信頼できる配当により、昨今のボラティリティの高い市場でも株価下落の可能性は限定的と思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Leo Sunは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アマゾン・ドットコム、ターゲット、ウォルマートの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。