S&P500、ナスダック100など主要指数は、大きく回復

このところ米国株式市場は堅調に推移、上昇を再開しています。先週(8月12日週)1週間でS&P500は3.9%上昇しました。これは週間ベースでは2024年ベストの上昇率です。S&P500は、7月16日に史上最高値をつけ、8月5日までに9.7%下落しました。しかし、先週末までに大きく回復し、史上最高値まで残すところ2%下げたレベルとなっています。

ナスダック100についても先週は5.4%上昇、2024年ベストの週となりました。同指数は7月10日の史上最高値から8月5日まで15.7%下落しました。その後マーケットは順調に回復し、先週末時点では高値まで残り6%となっています。

あっという間の今回のスピード調整の原因は一体何だったのでしょう。日本初の日本版ブラックマンデーも米国株の下げを加速したのは事実です。ただし、米国では突然不合理な景気後退懸念が起きたのが理由と言えます。

8月1日に発表された新規失業保険申請件数、翌2日の雇用統計がエコノミストのコンセンサス予想を下回り、市場には突然米国景気後退懸念が浮上したのです。これまでマーケットには、9月には利下げが起きるだろうというコンセンサスが支配的だったのですが、このような経済指標の発表により米国経済はマーケットが思っているより悪化しており、ひょっとすると9月の利下げでは遅いのではないかという見方がでてきたのです。

米国消費者の消費活動は堅調、市場では経済の着地はソフトランディングの見方

BofA証券のグローバル投資家サーベイでも、米国景気後退リスクは市場の最大のテールリスクとして挙げられていました。テールリスクとは、通常では起こりにくいものの、起こった場合には非常に大きな影響を与えるリスクを指します。つまり、まさかのことが起きたのではないかとマーケットは突然不安になってしまったのです。

その翌週8月8日に発表された新規失業保険申請件数では、前週の数字が気候による一時的な弱さを示したものであることが確認され、米国経済が景気後退へ陥っているのではないかという疑いを払拭したのです。また、先週8月13日に発表された7月の生産者物価指数(PPI)も、2021年に始まり2024年初頭に再び急上昇したインフレは過去のものとなったという楽観的な見方を裏付けるものでした。

加えて、8月14日に発表された消費者物価指数(CPI)は前月比0.2%上昇しました。12ヶ月間のインフレ率は3.0%から2.9%に鈍化し、2021年春以来の最低水準に達しました。食料とエネルギーを除いたコアCPIの前月比も同様に0.2%上昇、年率のコアCPIも3.3%から3.2%に低下、こちらも3年ぶりの低水準となりました。

また、8月15日に発表された米国小売売上高については、2023年初頭以来最大の上昇となりました。7月は自動車販売の急回復によって支えられ先月比で1%増加の発表となりました。自動車販売は、6月に発生した自動車ディーラーへのサイバー攻撃により大幅に減少したのですが、今回強く反発となりました。電子機器と家電製品も堅調な伸びを見せました。

今回の発表では、物価高、高金利により借入コストが上昇し続けているものの、米国消費者の消費活動は堅調であることを示すものとなったのです。このような発表が続く中、市場は米国経済についてはソフトランディングという見方でいけると判断、先週S&P500は2024年最大の上昇率を演じたのです。

今後はジャクソンホール、エヌビディア[NVDA]の決算、大統領選の行方に注目

さて、今後のマーケットの方向性に影響を与えるマクロ的なイベントとしては、8月22~24日に開催されるジャクソンホール会議です。マーケットは9月の利下げについてのヒントを得ようとするでしょう。また、8月28日には同じく世界中の投資家が注目するエヌビディア[NVDA]の決算発表があります。

今週はシカゴで民主党大会が開催されカマラ・ハリス副大統領が正式に民主党の大統領候補となる予定です。ここから11月の大統領選挙に向かってトランプ前大統領共和党候補とハリス副大統領候補との戦いが激化していくことになります。