2024年7月26日(金)21:30発表(日本時間)
米国 PCE
【1】結果:物価指数は概ね市場予想通り、個人消費支出は底堅さを示す
PCE価格指数の6月の結果は、概ね市場予想通りとなりました。すべての品目を含む総合指数は、前年比ベースで2.5%と市場予想と一致し、前回の2.6%から低下しました。前月比では0.1%と、前回の0.0%からやや加速しました。
一方で、食品とエネルギーを除いたコア指数は、前年比ベースで2.6%となり、市場予想の2.5%を上回りましたが、2021年3月以来の低い水準です。前月比では0.2%と市場予想通りで、前回の0.1%からやや加速しました。
また、米国の6月の個人消費支出は前月比0.3%増となり、5月の0.4%増(0.2%増から上方修正)を下回ったものの、15ヶ月連続の増加となりました。
【2】内容・注目点: インフレ目標まであと一歩、個人消費支出は堅調も不透明性あり
PCE価格指数とは、GDPを算出する際に家計の財・サービスの消費金額を集計する個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)を基に作成される物価指数です。
CPIと同様に米国の消費段階における物価動向を測定する指標ですが、PCE価格指数の方が対象品目の幅が広く、また消費者の価格変化に伴う購買行動の変化をより捉えることができるため、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決定する際にはPCE価格指数をより重視しています。インフレ目標2%と言った際、一般的にこのPCE物価指数の数値を指しています。
CPIの方が、速報性があるため市場では注目度が高くなっていますが、より厳密にはPCE価格指数の方が重要であると言えるでしょう。
そして、今回6月のPCE価格指数は概ね市場予想通りの結果となりました。変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数は前年比+2.6%と前月から横ばいながら、2021年3月以来の低い伸びを保っており、インフレ目標値の2%まであと一歩といったところです。
また、FRB当局者が「スーパーコア」として注目するエネルギーと住宅を除くPCEサービス価格は、前月比で+0.19%となり、前月の+0.18%とほぼ同水準の低い伸びが続きました。前年同月比では+3.4%となり、前月の3.5%から低下しています。年明け以降、やや高めの水準で横ばいが続いていましたが、今回は低下を見せ、落ち着きの兆候を示しています。
インフレの伸びに鈍化傾向が見られるなか、個人消費は底堅さを保っており、6月の実質個人消費支出は前月比+0.2%となりました。その一方、個人所得は前月比+0.2%と前月の+0.4%から伸びが鈍化しており、貯蓄率は3.4%と2022年12月以来の低水準となりました。労働市場が冷え込みつつある背景から所得の伸びが鈍化しており、消費者は貯蓄に回す分を消費に回している状況と言えます。現状では個人消費支出は底堅さを保っていますが、その持続性には不透明さがあります。
【3】所感:インフレは順調に鈍化で9月利下げに期待、次の焦点は労働市場の状況へ
FRBはインフレ退治のために高金利の維持を続けていますが、金融政策によって制御できるのは主に需要サイドのインフレです。以下の図表6はサンフランシスコ連銀がまとめているPCEコア価格指数を需要要因と供給要因に分けたグラフですが、青色バーで示された需要要因のインフレは徐々に低下しており高金利の効果が表れていることがわかります。
今回の結果も市場予想こそ上回りましたが、順調な鈍化傾向を示しており、9月の利下げを示唆するのに十分な進展があったと言えます。とはいえ、依然として2%は上回っており個人消費も堅調であることから、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが予想されます。
インフレの鈍化傾向という良いニュースが確認できた次は、米経済が景気を保てるかが焦点となります。そして、それは労働市場が過度に冷え込みすぎないか(失業率が上がりすぎないか)にかかっていると言えます。7月の雇用統計は、8月2日に公表されます。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐