年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2023年度業務概況書を公表しました。当該年度の運用実績が示されているのですが、どのような運用を行っているのか、どのようなことを心掛けているのか、といった我々の資産運用においても参考になる点に触れたいと思います。
GPIFは年金給付のためのお金の一部を将来の世代のために運用しています。日本では高齢者の生活を現役世代が支える制度が採用されており、少子高齢化が進むと将来の現役世代の負担が大きくなる懸念があり、現役世代が収めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかったものが将来世代のために積み立てられています。 それを運用して財源を確保するということからも100年単位の長期的な運用計画となっております。
【長期投資を基本】
様々な資産は短い期間では収益がプラスやマイナスに大きく振れる可能性があるものの、長期にわたって持ち続けることによってプラスとマイナスが互いに打ち消しあうことで年率平均の収益の振れ幅を小さくする効果が期待でき、安定的な収益を目指しています。
【分散投資】
卵を一つのカゴに盛るなというように性質や値動きの異なる国内外の複数の資産に分散して運用することにより、安定的な運用成果を目指しています。 また様々な資産に投資することで収益獲得の機会を増やし、世界中の経済活動から収益を得ると同時に資産分散の効果により、運用資産全体の価格のブレを抑制することで大きな損失が発生する可能性を抑えています。
【資産構成割合に基づいた運用】
長期的な運用においては、短期的な市場動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが効率的で良い結果をももたらすとされています。 GPIFでは具体的に国内外の株式・債券に25%ずつ配分しながらも、変動を考慮して許容乖離幅を定めています。この運営によって例えば株価が上昇して株式ウェイトが増えた場合には増加分を売却してほかに割り当てることになるので、相対的に価格の上がった資産から価格の下がった資産に入れ替えることになります。
運用目標とする賃金上昇率+1.7%に対して、2001年以降年率4.36%の収益率を上げており、同じ期間の賃金上昇率が平均0.09%なので実績は目標を上回っております。 当初は債券中心のポートフォリオでしたが、徐々に株式のウェイトを積み増し2023年度は22.67%の収益率となりました。短期的な振れを気にせず安定的な収益を目指すスタイルは皆さまの投資配分においても一つの目安になるでしょう。 また、来るインフレ時代には資産運用がより重要となる中で、来年3月に控えるGPIFの投資配分見直しがどのような変更になるのかも注目されます。
なお、アクティブ運用の投資割合は低下基調にありますが、株式運用において国内外ともにアクティブファンドの採用数が増加しています。 どのような株式を保有しているのかがGPIFのウェブサイト(※)に開示されており、アクティブマネージャーに人気の銘柄を確認することもできます(GPIFの個別企業に対する評価を表しているものではありません)。