アメリカ大統領選討論会ではトランプ氏が勝つと評価
先週6月27日(木)米国現地時間の夜、バイデン氏とトランプ氏との公開討論会が行われました。アメリカの大統領選討論会は、全く遠慮がなく、相手の弱点を攻撃し、それに対しどう上手に交わすかという点を非常にエンタメ的に楽しむことができます。その討論会の結果ですが、討論会後に行われたCNNの調査によると、67%の視聴者がトランプ氏の勝ちであるとの評価を行い、バイデン氏と答えたのは33%という結果となりました。
トランプ氏は、バイデン氏に対し非常に攻撃的、一方、バイデン氏は、いつもに増して声も弱々しく、何度も言葉に詰まっていたのが印象的でした。討論会後にホワイトハウスは「バイデン大統領は討論会の前に風邪を引いていたこともあり声が弱々しかった」と発表しましたが、もし明日選挙があるとすれば、トランプ氏に勝算ありという印象を受けました。
米ワシントン・ポスト/ABC ニュースの世論調査で、7割の回答者が「バイデン氏が責務を遂行できる健康状態ではない」と回答したのは1年前の6月のことです。それから1年が過ぎた今、バイデン氏の体調が以前よりも悪化していると感じる人も多いのでしょう。
民主党は別の候補者を検討か
では、トランプ氏が、討論会という試合をフェアに行っていたかというとそれは別の問題です。今回の討論会での二人の候補者の発言について、ニューヨーク・タイムズがファクト・チェック(事実の確認)を行いました。二人の候補者が討論会中に何回事実に反する発言をしたか、もしくは、明らかな嘘をついたかを調べて公開するのです。それによると90分の討論会で、バイデン氏が9回、トランプ氏は30回と、もっともらしく聞こえた発言も不正確な事実に基づいてのものだったのです。しかし、そんなことは関係なく、トランプ氏の方が勝つだろうという評価を視聴者は下したのです。
バイデン氏が所属する民主党は、この討論会を経て、バイデン氏では11月の大統領選には勝てないと判断したようで、誰か新しい人を民主党の大統領候補として出すことを真剣に検討し始めたという話がでています。また、ニューヨーク・タイムズ紙も同紙の見解として、「アメリカの為に、バイデン氏は今回の大統領選には出馬すべきではない」という強い意見を発表しています。
市場はトランプ氏の再選の確率が高まったとみている
討論会翌日の6月28日(金)のニューヨーク市場では、トランプ氏の当選の確率が高まったと判断してか、いくつかの変わった動きがみられました。トランプ氏は、大統領就任中に色々な業界で規制緩和を行ってきましたが、バイデン氏は規制を強化してきました。私は、トランプ氏が再選されると再度規制緩和の動きになるとの憶測が働いたのではとみています。
6月28日(金)のS&P500は0.41%下落したのですが、大型銀行株で構成されているKBW銀行株指数は2.3%上昇、また米国の地銀株で構成されているKBW地方銀行株指数は、1日で2.8%上昇しました。トランプ氏が、以前大統領に就任した際に金融業界の規制緩和を行ったことが要因でしょう。また、フォード・モーター[F]は金曜日に2.5%上げ、ゼネラル・モーターズ[GM]は1.9%あげています。これは、トランプ氏が大統領に就任すると、輸入車に対する関税の引き上げ、そしてトランプ氏の掲げるMAGA(Make America Great Againアメリカを再度偉大な国に)キャンペーンの恩恵を受けるとの判断があったのではないでしょうか。
実際、バイデン氏が出馬を辞退するかは現段階では誰にもわからないものの、このような市場の動きは投資家の心理を表すので、セクターの動きをみると市場が何を考えているか見えてきます。民主党の大統領候補が誰になるかは、8月の民主党大会にて正式に発表されることになります。