フランスに極右政党の首相誕生、英国は政権交代か

6月9日の欧州議会選挙で、マクロン仏大統領の与党連合の敗北、極右政党の躍進という結果を受けて急落したユーロは、その後も反発が鈍いまま先週末にかけて安値を更新、一時は1.06米ドル台まで下落した。ユーロ/米ドルは、過去1年近く値動きの収縮が続いてきたが、今回の下落により、見方によっては一気にユーロは三角保合いの下放れが試される正念場に追い込まれたようでもある(図表1参照)。

【図表1】ユーロ/米ドルの週足チャート(2023年7月~)
出所:マネックストレーダーFX

このユーロ急落の背景は、ドイツなどユーロ圏の金利低下だ。それをもたらしたのは、欧州の政治情勢の流動化への懸念が、リスク回避、安全資産へのシフトとなり、債券買い、債券利回り低下となっていることが大きいだろう。

6月末のフランスの議会選挙でも、このまま極右政党の勝利となるようなら、マクロン大統領と極右政党出身の首相という組み合わせに変わる可能性も出てくる。その先には、英国に続いてフランスもEU離脱に向かう懸念シナリオもささやかれている。

また7月4日には英国で総選挙が予定されている。ここで与党保守党が敗北した場合は、スナク首相は退陣に追い込まれ、労働党への政権交代が実現する見通し。最近の世論調査では、労働党への支持が保守党のほぼ倍となっていることから、政権交代の可能性は今のところ有力といえるだろう。

このような政治情勢の流動化を懸念し、安全資産へのシフトに伴う金利低下が続き、ユーロが三角保合いの下放れ、さらに1.06米ドル割れで年初来安値更新となる可能性には当面注意が必要だろう(図表2参照)。

【図表2】ユーロ/米ドルと独米10年債利回り差(2024年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

ユーロ/円が下落すれば投機円売りへの影響も

そして、ユーロ/米ドルの動向は、ユーロ/円にももちろん影響しそうだ。ユーロ/円は最近にかけて大きく上昇してきたが、日独金利差からはかい離したものだった(図表2参照)。これは他のクロス円同様に、金利差円劣位を拠り所とした投機円売りによってもたらされた可能性が高いだろう。そうであれば、ユーロ/米ドルがさらに下落し、それがユーロ/円にも波及するなら、投機円売りの損失拡大につながる可能性がある。特にユーロ/円は、豪ドル/円などと比べると、必ずしも金利差円劣位が大幅というほどではないだけに、ユーロ下落に伴う損失を金利差でカバーできず、ポジションの手仕舞い(ユーロ売り)が広がることも考えられなくない。

【図表3】ユーロ/円と日独10年債利回り差(2024年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

以上を踏まえると、欧州政治不安を受けたユーロ下落リスクは、ユーロ/円の下落を通して、歴史的円安を主導している可能性の高い投機円売りへ影響するという観点も注目する必要があるのではないか。