モトリーフール米国本社、2024年5月7日投稿記事より

NYダウでトップ・年初来29%のパフォーマンス

「ぼくらのクラブのリーダーは」とは、有名なミッキーマウス・マーチの出だしの歌詞です。偶然ですが、ダウ工業株30種平均(NYダウ)を構成する30銘柄の中で、2024年のリーダーはウォルト・ディズニー[DIS]です。

ウォルト・ディズニーの株価は5月6日の終値で年初来29%上昇しており、NYダウ構成銘柄の中で最も高いパフォーマンスとなっています。同7日朝に発表された1―3月期(2024年9月期第2四半期)決算が強弱混在の内容となったことを受けて、株価は急落しました。ただ、過去3年連続でNYダウの中で後れを取ってきたウォルト・ディズニーが、ここにきて好調なのはいくつかの理由があります。

利益は市場予想比2桁の上振れ

ウォルト・ディズニーの第2四半期利益は小幅の赤字となりました。大きな足かせとなったのは20億ドルを超える営業権の減損費用で、インド事業のStar Indiaを新たな合弁事業に移行したことに関連する再編費用が主な原因です。この莫大な一時費用を除けば、調整後1株当たり利益(EPS)は前年同期比30%増の1.21ドルとなり、大幅な増益です。

アナリストはウォルト・ディズニーの調整後EPSを、18%増の1.10ドルと予想していました。同社は過去1年間ウォール街の利益予想を一貫して上回っており、過去3四半期に関しては2桁の上振れを記録しています。

出所:YAHOO!ファイナンス。EPS = 1株当たり利益 

ウォルト・ディズニーはこれまでガイダンスを発表することを避けてきましたが、今後の業績回復が利益に大きく関わって来ていることから、今回は例外的にガイダンスを発表しました。会社側は現在、今期の調整後EPSを前年比25%増と予想しています。

短期的な売上低迷は克服可能

利益が予想を上回ったにもかかわらず、5月7日の株価は下落で始まりました。主な要因は2つあります。第2四半期の売上高が予想を下回ったことと、今後の売上高は第4四半期に回復するものの、第3四半期は季節的に低迷するとウォルト・ディズニー側が警告したことです。テーマパークを中心としたエクスペリエンス部門の第2四半期売上高は前年同期比10%増でしたが、スポーツ部門の2%増やエンターテインメント部門の5%減が重石となりました。

数字をもっと詳しく見てみましょう。エンターテインメント部門の売上高が5%減少したとはいえ、デジタル配信へのシフトがうまくいっていないわけではありません。Disney+を含む消費者向けストリーミング・プラットフォーム事業の売上高は13%増加しています。対照的に、規模が縮小しているテレビ事業の売上高は8%減少しました。しかし、部門全体で5%減収となった最大の要因は、主に映画スタジオと劇場配給で構成されるコンテンツ販売/ライセンス事業が40%減となったことです。ディズニー映画の第2四半期の興行収入は低調でしたが、今後数ヶ月はシネコン向けの有望作品の公開が目白押しで、状況は大きく変わる見通しです。コンテンツ販売/ライセンス事業を除くと、エンターテインメント部門の第2四半期売上高は5%増となります。

5月7日の決算発表の中でボブ・アイガーCEOは、ウォルト・ディズニーが劇場配給をさらに縮小し、マーベルを含む一部のスタジオで量より質を重視していくことを改めて強調しました。制作される映画の本数が減れば、売上高にマイナスの影響が及ぶかもしれませんが、長期的に見て、新たなヒット作が生まれれば、消費者向け商品、テーマパークのアトラクション、関連コンテンツの開発といったエコシステムのパイプラインにプラス寄与するはずです。

6年ぶりの自社株買いも

ウォルト・ディズニーの年初来の株価上昇は、単なる一時的な反発ではありません。同社はこれまで、正しい動きをすることで株価上昇を実現してきました。2024年に入って行われた2回の決算発表で、利益が2桁の上振れとなったからだけでは決してありません。

ウォルト・ディズニーは増配に加え、6年ぶりの自社株買いを発表し、株価に対する楽観的な見方は強まっています。ただし、すべてが絶好調というわけではありません。Disney+の契約者数は世界的に減少しており、米国内のユーザー当たり平均売上高も減少しています。スポーツ専門チャンネルのESPNは、NBAの2025年秋に始まるシーズンの放映権で、これまで以上に莫大な放映権料を支払わなければならず、スポーツ番組の収益性を改善する必要に迫られています。とはいえ、コストの改善とコンテンツ制作の見直しを重視するアイガーCEOの方針は、後継者育成や長期的な事業機会にシフトする前の、短期的な戦略として正しいと思われます。

会社側は2024年度の調整後EPSを4.70ドルと見込んでおり、5月7日の取引開始時点の予想株価収益率(PER)は23倍未満です。復活に賭けるには妥当な株価水準にあると思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Rick Munarrizは、ウォルト・ディズニーの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はウォルト・ディズニーの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。