モトリーフール米国本社、2024年4月30日投稿記事より

第4四半期に複数のヘッジファンドがエヌビディア[NVDA]を売り、アマゾン・ドットコム[AMZN]を購入

エヌビディア[NVDA]は2023年、S&P500種指数の中で最も好調なパフォーマンスを見せました。AIが市場を熱狂の渦に巻き込む中、同社の株価は239%上昇しました。

しかし、第4四半期には複数ヘッジファンドの億万長者がエヌビディアから離れ、アマゾン・ドットコム[AMZN](以下、アマゾン)を購入しました。

ムーア・キャピタル・マネジメントのルイス・ベーコン氏はエヌビディアを87万3000株売却し、保有株数を99%減らしました。同時に、アマゾンの保有株数を1,000%超増やし、今やアマゾンはベーコン氏の3番目に大きなポジションとなっています。

ミレニアム・マネジメントのイズラエル・イングランダー氏はエヌビディアを170万株売却し、保有株数を45%減らしました。同時に、アマゾンの保有株数を1%増やし、今やアマゾン株はイングランダー氏の4番目に大きなポジションとなっています(オプションを除く)。

ポイント72アセット・マネジメントのスティーブン・コーエン氏はエヌビディアを110万株売却し、保有株数を66%減らしました。同時に、アマゾンの保有株数を11%増やし、今やアマゾン株はコーエン氏の最大のポジションとなっています(オプションを除く)。

イングランダー氏とコーエン氏の取引は、特に注目に値します。両者は歴史上屈指の成功を収めているヘッジファンドを率いているからです。具体的には、LCHインベストメンツによると、2023年12月現在、設定来ネットリターンでミレニアム・マネジメントは2位、ポイント72アセット・マネジメントは13位に位置しています。

しかし、投資家は、これらの取引から、エヌビディアは悪い投資先だと解釈するべきではないでしょう。どのファンドマネジャーもAI半導体製造会社のポジションを完全になくした訳ではなく、むしろ、保有株数を減らして、アマゾンを含む他のAI銘柄に再配分しているのです。

3つの市場で強い存在感

アマゾンは、eコマース、デジタル広告、クラウドコンピューティングという3つの重要な成長エンジンを持っています。具体的には、北米と西ヨーロッパで、売上高ベースで最大のオンライン・マーケットプレイスを運営しており、市場シェアを拡大し続けています。モルガン・スタンレーのアナリストは、アマゾンが2027年までにアリババを追い越し、eコマースの売上高で世界をリードすると予想しています。

リテールに強いアマゾンは、当然ながらリテールの広告市場を独占しており、アルファベット[GOOGL]のGoogle、メタ・プラットフォームズ[META]に次ぐ世界第3位のアドテック企業の座についています。しかし、イーマーケターによると、アマゾンはメタよりも急速に市場シェアを拡大しており、実際のところGoogleは押され気味です。

最後に、アマゾンウェブサービス(AWS)は、第4四半期に業界2番手のMicrosoft Azureに市場シェアを2%ポイント奪われたものの、依然としてクラウドインフラとクラウドプラットフォームサービスの市場を独占しています。つまり、アマゾンは、企業がAIプロジェクトを後押しするためにクラウドインフラを採用するにつれて恩恵を受けるという、独自の立場にあるということです。

3つの主要事業でAI活用

多くのリーダーと同様、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは、AI(特に生成AI)をゲームチェンジャーになり得る技術だとみています。ジャシー氏は、「生成AIは、クラウド(それ自体がまだ初期段階にあるが)以来、もしかしたらインターネット以来となる最大のテクノロジー変革かもしれない」と直近の株主宛レターに綴りました。

Eコマース:アマゾンは2月に生成AIショッピング・アシスタントのRufusを発表しました。Rufusは当初、アマゾンのモバイルアプリを通して米国の一部の消費者にのみ提供されていましたが、現在はより幅広い層に展開されています。Rufusは、アマゾンの商品カタログ、カスタマーレビュー、ウェブ上の情報に基づいて質問に答えたり、おすすめの商品を提案したりするアシスタントです。さらに、アマゾンは倉庫の在庫とラストマイル配送の最適化にも機械学習モデルを活用しており、どちらも物流ビジネスの効率化に貢献しています。

デジタル広告:アマゾンは最近、ブランド各社が自社製品に関連した魅力的なライフスタイル画像を作成することができる生成AIツールを導入しました。これにより、企業はコスト効率の高い広告キャンペーンを打ち出すことができるようになりました。特に、キャンペーンを成功させるのに苦労しているメディアバイヤーのうち、75%が「独創的なコンテンツの作成」を最大の課題として挙げています。アマゾンは、こうした課題をAI搭載の新たな画像ジェネレーターで解決します。

クラウドコンピューティング:AWSは2023年、生成AI市場シェアでOpenAIとマイクロソフト[MSFT]に次いで第3位でしたが、AIの各レイヤーにわたる製品開発により、地歩を固めることができると考えます。インフラ層では、AI学習および推論用のカスタムチップが、エヌビディアの画像処理装置(GPU)に代わる安価な選択肢を提供します。プラットフォーム層では、Amazon Bedrockがカスタム生成AIアプリケーションの構築を可能にします。そして、アプリケーション層では、Amazon Qが非技術者やソフトウェア開発者のタスクを自動化します。

投資家は、AWSを注視すべきでしょう。アマゾンはeコマースとデジタル広告の分野で市場シェアを拡大すると見込まれていますが、クラウドの分野では、OpenAIとの独占提携もあってマイクロソフトが急速に手ごわい競争相手になっています。

市場は「今後5年は年間11%成長」を予想

ストレイト・リサーチによると、オンラインの小売売上高は2030年まで年率8%増加する見込みです。一方、グランドビューリサーチはデジタル広告とクラウドコンピューティングの売上高が、年率それぞれ15%、14%増加すると予想しています。さらに、ブルームバーグは、生成AIへの支出が同期間に年率48%増加すると予想しています。

これらを合わせると、アマゾンは10年後まで2桁台の売上高成長率を遂げる可能性が高いと考えられます。実際、市場は同社が今後5年間で年11%売上高を伸ばすと見込んでいます。そう考えると、売上高の3.3倍という現在のバリュエーションは合理的であるように見えます。辛抱強い投資家は、今アマゾンに少額でも投資しておくと安心でしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アマゾン・ドット・コムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。フェイスブックの元市場開発担当ディレクター兼スポークスマンであり、メタ・プラットフォームズのMark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerbergは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、アマゾン・ドット・コムとエヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はアリババ・グループ・ホールディングの株式を推奨しており、下記のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロングとマイクロソフトの2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。