◆昨日の続きである。NHK朝の連続テレビ小説「まれ」の主人公・希(まれ)は、夢が嫌いな女の子。夢ばかり追って破産した父親を反面教師に、「地道にコ ツコツ」をモットーとしている。そんな父親役を大泉洋がうまく演じているが、もう少し若ければ高田純次こそはまり役だったろう。なにしろ高田純次と言え ば、「ミスター適当男」の異名をとる。ちゃらんぽらんで、いい加減なイメージだ。ところが、その高田純次が結構いいことを言っている。高田純次の意外な名 言集(?)がネットでちょっとした話題だ。

◆例えばこんな言葉がある。<思うようにいかないのが人生というもの。「願いが叶う」とか「夢が叶う」っていう類の本がいっぱい出ているけれど、あれはい かにみんなの夢や願いが叶わないかっていう証明みたいなものだ>。その伝で言えば、「株で億万長者になる方法」とか「明日爆騰する銘柄の見つけ方」「すぐ に儲かる投資術」などケバケバしいタイトルの投資本がいっぱい書店に並んでいるが、それらはいかに株ですぐに儲けて大金持ちになるのが難しいかということ の表れであろう。

◆昨日の小欄では、夢や目標を持つのは悪くないと述べた。そうした夢や目標を叶えるために地道な努力が必要だと書いた。但し、そのために「長期計画」など を入念に練って臨むのはお勧めしない。特に投資においてはそうである。計画をたてたところで計画通りにいくことは稀だからである。先日の試合で1年5か月 ぶりにゴールを決め、Jリーグ最年長得点記録を更新したサッカーJ2横浜FCの48歳、カズこと三浦知良選手はこう言っている。<「とにかく今日を一生懸 命、精一杯やる」と思って練習を積み重ねるだけだ。そうして「気がつくとここまで来ていた」という生き方でいいんじゃないか>

◆朝ドラのヒロインの名前、「希(まれ)」の由来は、「滅多にないこと」=「夢」を追ってほしいという願いからである。夢は滅多に叶わないから夢なのであ る。それでも滅多に叶わない「希」を望むこと - それが希望である。希望がなければ大きな夢に挑戦することはできない。なんだか禅問答のようになってき た。人生とは兎角、逆説的なものである。高田純次はこうも言っている。

「やっぱり人間は難しいことに挑戦したほうがいいよ。オレはいやだけど。」

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆