モトリーフール米国本社、2024年4月9日投稿記事より

米主要株価指数が過去最高値を更新し、新たな強気相場が進行中

S&P500指数は2022年に、当時の過去最高値から20%超下落し、弱気相場入りしました。しかし、その後下落を完全に取り戻し、2023年末には過去最高値を更新しました。今や強気派が優勢であり、2024年に入っても上昇し続け、年初来で9.7%上昇しています。

しかし、中には過去最高値を取り戻せていない銘柄もあります。例えば、ソフトウェア銘柄の多くはコロナ禍の期間中、投資家が在宅勤務型経済を見込んだことを受けて急騰しましたが、世の中が平常に戻ると下落しました。

データドッグ[DDOG]とアトラシアン[TEAM]はその好例です。両社の株価は2022年の安値からは回復しているものの、過去最高値と比べると、それぞれ35%安と57%安の水準にとどまっています。しかし、以下の理由からこれらの銘柄の株価は、2024年そしてその後も上昇傾向になると思われます。

クラウド監視のデータドッグ[DDOG]

デジタル化がますます進み、消費者が利便性を特に重視する世界において、企業は適応を余儀なくされています。ハイテク大手のマイクロソフト[MSFT]やアマゾン・ドットコム[AMZN]は、集中型のデータセンターを運営し、その処理能力を企業に貸し出すことで、各社が販売チャネルやカスタマーエクスペリエンスをオンライン上で、低コストで管理できるよう支援しています。こうした仕組みは、クラウドコンピューティングと呼ばれています。

しかし、クラウドは複雑さも生み出します。実店舗で商品を販売するのは単純明快で、接客係が常駐してプロセスを監視し、顧客満足度を判断することができます。一方で、デジタル化された販売チャネルには盲点があります。企業は売上が落ち込むまで、特定の地域の特定の顧客グループに対してウェブサイトがうまく機能していないことに気づきません。

データドッグのクラウド監視プラットフォームは、2万7300社を超える企業のインフラを24時間体制で監視しています。技術的な問題を検知すると即座に管理者に報告するため、企業側は売上に影響が及ぶ前に問題を修正することができます。データドッグの顧客は、小売り、エンターテインメント、ゲーム、金融サービスなど、幅広い業界にわたります。

AI搭載製品を発表

同社は先日、人工知能(AI)を搭載したバーチャルアシスタント「Bits AI」を発表しました。Bits AIは会話型インターフェースを備えており、管理者が問題を迅速に調査し、修正するのを支援します。データドッグがインシデントを特定すると、Bits AIが即座にサマリーを作成し、従業員のチャットチャンネルに情報を投稿するため、管理者は作業時間を節約することができます。

データドッグは、AI開発者向けに監視機能も拡大しています。新しいツールは、大規模言語モデルのパフォーマンスと特性を追跡し、最終製品である顧客向けアプリケーションの完成度を高めます。同社はさらに、OpenAIが提供するような既製の大規模言語モデルのユーザーを対象とした可観測性ツールを提供し、企業が利用コストを追跡するのを支援しています。

2023年に黒字転換

データドッグの2023年の売上高は過去最高の21億ドルであり、前年比で27%増加しました。利益は4,850万ドルであり、前年の5,010万ドルの赤字から黒字転換しました。この業績は、データドッグが力強い売上成長を維持するのと同時に、慎重なコスト管理によって利益を生み出す能力があることを証明しています。

AIは、これまでクラウドが果たしてきたのと同様に、企業による採用が加速するにつれて、データドッグに素晴らしい長期的成長をもたらす可能性があります。同社の年間経常収益のうち、AI開発者向けは現時点でわずか3%ですが、この割合は今後急速に上昇する可能性があるでしょう。

アトラシアン[TEAM]はソフトウェアツール開発

アトラシアンは、JiraやConfluenceといった人気のコラボレーション・ソフトウェアツールの開発会社であり、世界で30万2000を超える組織で利用されています。同社は製品ポートフォリオを拡大し続けており、AIも追い風となって、長期的に力強い成長が見込まれます。

プロジェクト管理プラットフォームのJiraは、主にソフトウェア開発者がワークフローを作成し、バグを追跡し、アップデートをリリースするのに使用します。Confluenceは組織内のあらゆる面で、チームのコラボレーションを支援するように設計されているため、幅広いユーザーに利用されています。従業員はアイデアを出し合い、戦略について議論し、重要な決定を下すのにConfluenceを使用します。また、チーム専用のワークスペースを作り、組織内の別のチームとコンテンツを分けることもできます。

AI、動画機能も付加

アトラシアンは2023年に、独自のAIモデルとOpenAIのAIモデルを組み合わせて開発したAIアシスタント「Atlassian Intelligence」をリリースしました。これはコンテンツの下書きやテキストの要約を行うことができ、JiraやConfluence上の共同作業をスピードアップすることができます。さらに、顧客や従業員に対するバーチャルエージェントとしても機能するため、企業にとっては長期的に大幅なコスト削減につながります。

同社は2023年、動画およびAIプラットフォームのLoomを9億7500万ドルで買収しました。Loomは動画やスクリーンキャストの作成を支援するツールを提供しており、買収により、ユーザーはJiraやConfluenceの投稿に動画やスクリーンキャストを添付できるようになりました。文字だけで明確な指示を伝えるのは難しいこともあるため、Loomによって重要な視覚的要素が追加され、コミュニケーション上の行き違いを減らすことができます。Loomは、動画を素早く要約し、無言の時間をなくし、チャプター名を追加することができるAIツールも提供しています。

四半期売上高は10億ドルに

アトラシアンは2023年10-12月期(2024年度第2四半期)に初めて、四半期売上高が10億ドルを超えました。前年同期比で21.5%増であり、増収率は鈍化していますが、これは同社が利益改善に向けて慎重にコスト管理を行っていることが主な原因です。第2四半期は8400万ドルの赤字でしたが、2023年度第2四半期の2億500万ドルの赤字と比べると純損失は59%も減少しています。

データドッグの場合と同様に、AIはアトラシアンにとって、長期的に大きな成長の原動力となる可能性があります。例えば、Atlassian Intelligenceは現在、JiraとConfluenceのプレミアムプランとエンタープライズプランの顧客だけが利用可能で、低価格のスタンダードプランの顧客は使えません。つまり、AI機能を使いたい企業は価格の高いプランを契約するしかなく、多くの企業はいずれ、AI機能付きのプレミアムプランを希望するでしょう。

今後数年間にわたっての中長期投資を前提とするならば、過去最高値から57%安という足元の株価はよい投資機会なのかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、アトラシアン、データドッグ、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。