2024年4月5日(金)21:30発表(日本時間)
米国 雇用統計

【1】結果:非農業部門雇用者数は30.3万人増で予想を上回るー失業率は低下

非農業部門雇用者数(前月比)
結果:+30.3万人 予想:+20.1万人
前回:+27.0万人(27.5万人から修正)  

失業率
結果:3.8% 予想:3.9%
前回:3.9%

平均時給
(前月比)
結果:0.3% 予想:0.3%
前回:0.2%(0.1%から修正)

(前年比)
結果:4.1% 予想:4.1%
前回:4.3%

労働参加率
結果:62.7%
前回:62.5%

【図表1】非農業部門雇用者数(左軸)と失業率(右軸)
出所:Bloombergのデータを基にマネックス証券作成

【2】内容・注目点:移民の増加等を背景に労働参加率が上昇―賃金上昇に落ち着き

2024年3月の米国非農業部門雇用者数は前月比+30.3万人と、市場予想の+20.1万人と前回結果+27.0万人(+27.5万人から修正)を大きく上回る結果となりました。失業率は3.8%とこちらも市場予想と前回結果を下回る結果となり、米国の労働環境が依然として堅調であることを示しました。

雇用者増が多く見られた業界は、建設、医療、政府部門です。前月比30.3万人増のうち、政府部門での増加が7.1万人と大きく目立ちます。

また、雇用者数変化(農業部門含む)を属性別にみると、パートタイマーが前月比+69万人であるのに対し、フルタイムで働く正社員の数は前月比-6千人と減少しました。

【図表2】雇用者数変化(フルタイム・パートタイマー別)
出所:Bloombergのデータを基にマネックス証券作成

つまり、今回の増加の原因はパートタイマーの増加によるものということになります。一般的にパートタイマーは正社員に比べて景気に応じて雇用を調整しやすく、経済の悪化時期に増えやすい傾向があります。今回の30.3万人増という数字は、中身を見るとヘッドラインの数字から受ける印象ほど強くはない結果であることが分かります。

また、労働力人口の出身地のデータを見ると、米国以外が出身(移民)の労働力人口が3229万人で前年比145万人増であるのに対し、米国生まれのネイティブの労働人口が1億3567万人で前年比で27万人減少しています。つまり、雇用者数の増加は、移民の増加によりもたらされているということがわかります。

一方で、労働参加率は62.7%で前月の62.5%から0.2ポイント上昇しました。また、非農業部門の給与の平均時給は34.69ドルで、前年比+4.1%と、前月の+4.3%から低下しました。労働市場は依然として逼迫しているものの、移民の増加を背景とした労働参加率の上昇により、労働供給が増加したことで賃金上昇に落ち着きが見られます。

【図表3】労働参加率と平均時給(前年比)の推移
出所:Bloombergのデータを基にマネックス証券作成

【3】所感:賃金上昇鈍化を受け株価上昇―今後のインフレ動向に注目

予想を上回る数字の結果を受けて、米金利は上昇で反応しました。雇用環境の堅調さを示す結果となったことから、米国金融当局が政策金利を急いで下げる必要性が薄まり、利下げ期待の後退を織り込んだ反応とみて良いでしょう。

米金利の上昇により、為替も米ドル高・円安方向に反応し、発表前の151.29円から一時151,75円まで上昇しました。

その一方、株式市場は金利高に反して、NYダウ、S&P500、NASDAQともに上昇しました。労働参加率の上昇と、平均時給の伸びが鈍化したことで賃金インフレへの懸念が後退し、ハイテク株を中心に押し目買いが入ったことが原因と考えられます。株式市場は楽観的な反応を示したものの、市場では足元利下げ予想が後退しており、CMEのFedWatch Toolによると6月の利下げ確率は五分五分を示しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、「物価の安定」と「雇用の最大化」の2つの責務を負っており、金利政策判断においては、その両面を意識しています。
今回の雇用統計が、米国の雇用環境の強さを示す内容であったことから、次の焦点はインフレの動向に移ります。4月10日には米消費者物価指数(CPI)、4月11日には米生産者物価指数(PPI)の公表があり、その結果にも注目したいところです。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐