年初からあらゆる金融資産が値上がりしている。2024年3月11日時点でそれらの騰落率を比較すると、S&P500が約8%、日経平均が約20%、金が約6%、原油が約9%、ビットコインが約70%となっている。物価についても、その伸び率は鈍化はしているが、上昇が続いている。このような傾向は2020年に新型コロナウイルスが発生してから世界経済が回復に向かうタイミングでも見られた。いわば「金余り相場」だ。
新型コロナウイルスの影響で膨らんだお金の量は今もほとんど変わらない水準で市場に流通している。米国では2022年6月から量的引き締め(QT)によるFRBバランスシートの縮小が徐々に進められているが、現在においても2020年以前から30%以上拡大した状況となっている。また、当局では利下げ開始と合わせてQT停止の時期に関する議論も始まっており、経済状況によってはお金の量がこれからさらに増える可能性すら出ている。
私たちはまず、市場全体で法定通貨の価値が相対的に下がっていることを認識しなければならない。その上で、新NISA制度の開始や日経平均の史上最高値更新によって日本の投資熱が高まっている時だからこそ、日本円だけを保有するリスクについて考えなければならない。全く投資せずに日本円だけで生活している人は、金融資産の上昇による利益を享受せず、モノの値上がりによる損失だけを被っているだろう。
同じように金余り相場ではビットコインを保有しないリスクについても考えるべきである。冒頭で紹介したように、今年に入って金融資産の中で最も値上がりしているのはビットコインであり、ビットコイン投資家のリターンが他の投資家に比べて大きいことは明らかである。今後暴落する可能性を考えると、ポートフォリオの大部分をビットコインで占めるのはリスクが大きいが、小割合を含めることで全体のリターンを改善する期待ができる。
米国金利の上昇がピークを迎え、世界経済のソフトランディングも意識されている今、各国の投資家は法定通貨など安全資産からより大きなリターンが得られる金融資産へシフトしつつある。日本の投資家もこの流れに取り残されないよう、各々で日本円だけを保有するリスクとビットコインを保有しないリスクについて考えてもらいたい。