自社株買いは株上昇に寄与したが…

過去10年程度、米国株市場の上昇に寄与した要因は、40%程度が「自社株買い」によるものと報告されている。多くの経営者がインセンティブによってお手盛りの「自社株買い」に動いた。

しかし、株を上げるだけのために不経済な「自社株買い」を行った企業は、今後、財務上の損失、負債の増加、将来の成長機会の減少に直面するだろう。株価上昇に賭ける投資家にとって最も大きなリスクは、FRBの金融政策ではない。怖いのは、米国株を上げてきた「自社株買い」の逆転現象であろう。

現在の米国株市場のバリュエーションは歴史的な基準から見れば依然として高い水準にある。株式市場では本質的に、大きな強気相場の後には必然的に大きな弱気相場がやってくる。バブル相場の後の極端な戻り(平均回帰)は、リスクを軽視した投資家の大きな損失につながっている。市場サイクルの前半で儲けるのは簡単だ。後半にそれを維持するのが難しい。

投資開始時期がポイント

投資においてマーケットサイクルの重要性については何度も語られている。投資において、長期的な成功を果たしたのかそうでなかったのかを分けたのは、いつ歩み始めたかということに尽きる。

例えば、ウォーレン・バフェットは1942年に投資をスタートし、1964年にバークシャー・ハサウェイを買収した。ポール・チューダー・ジョーンズは1980年にヘッジファンドを立ち上げた。ピーター・リンチは1977年からフィデリティ・マゼラン・ファンドを運用している。これら偉大な投資家たちの成功は、低いバリュエーションと高いフォワード・リターンを伴う強気サイクルの始まりを捉えたことによる。

ジェシー・リバモアが言うように、株取引には、楽に金が儲かるといった印象があり、人を魅了するが、愚かで安易な考えから相場に手を出せば、簡単にすべてを失ってしまう。相場に勝つ必要はない、勝つべき相手は自分自身である。