モトリーフール米国本社、 2024年3月12日 投稿記事より
アップルはバフェット氏にとって、最高の投資判断の1つ
ウォーレン・バフェット氏は世界で最も優れた投資家の1人と目されており、個人投資家であれば、同氏が率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の3,640億ドルに上るポートフォリオを参考にしたくなるのも当然でしょう。
その中でも最大の保有銘柄はハイテク大手のアップル[AAPL]で、ポートフォリオ全体の43%を占めています。オマハの賢人と呼ばれるバフェット氏がアップル株を初めて購入したのは2016年初めのことで、2016年の年初から2024年3月8日までに、アップルの株価は375%という驚異的な上昇を遂げています。これは間違いなく、バフェット氏にとって最も大きなリターンを上げている投資先の1つと言えるでしょう。
バークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中で、アップルがこれほど重要な位置を占めるに至った要因を知ることで、何らかの洞察を得ることができるかもしれません。
ブランド、価格決定力、健全な財務
バフェット氏が何よりも、質の高い企業を好むことはよく知られています。2016年当時のアップルは、まさにその条件を満たしていました。
最大の優位性は、強力なブランドです。アップルは、絶大な人気を誇るさまざまなデバイスによって技術的にも文化的にも象徴的な存在であり、その代表的存在がiPhoneです。2023年度(9月期)には、iPhoneだけで2,010億ドルもの売上高を生み出しました。
バークシャー・ハサウェイの上位保有銘柄を見ると、バフェット氏が強いブランドを好んでいることが分かります。コカコーラ[KO]やアメリカン・エキスプレス[AXP]は、どちらも消費者の心を強くつかんでいるブランドであり、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオで大きなポジションを占めています。
アップルは極めて強いブランド力により、バフェット氏が好むもう1つの要素である価格決定力を発揮することができます。ユーザーは、最新機種にアップグレードする際、ためらわずにアップル製品に高い価格を支払います。また、提供するサービス内容を拡充していることもあり、同社はユーザーの関心を引き続け、ロイヤルティを維持しています。
バフェット氏が初めてアップル株を購入した前年の2015年9月期において、アップルは粗利益率39%、営業利益率30%を計上しました。これは、今見ても驚くほどの高利益率であり、この年度に生み出した営業キャッシュフローは810億ドルでした。
健全な財務実績も、オマハの賢人が投資先に求める要素です。傷一つないバランスシートのおかげで、アップルが財政難に見舞われるリスクは低減されています。アップル株が氏のポートフォリオの中でこれほど大きなポジションを占めているのは、おそらくそのためでしょう。
もう1つの重要な要素として、バリュエーションを無視することはできません。2016年1-3月当時、アップル株の平均株価収益率(PER)はわずか10.6倍でした。投資家は、バリュエーションがこれほど低く抑えられている理由を不審に思っていました。しかし、同社が持つあらゆる資質を見れば、市場が誤解していたことは明らかです。
今になって思えば、8年前にバークシャー・ハサウェイのポートフォリオにアップルを追加したことは、バフェット氏にとって迷うことのない判断だったのかもしれません。
もはや成熟企業に
アップルは素晴らしい投資先です。バークシャー・ハサウェイが今でも大きな持ち分を保有しているため、購入を考えている投資家もいることでしょう。
しかし、アップル株はこれまでに並外れたパフォーマンスを上げており、もはや割安ではありません。むしろ割高です。足元のPERは26.6倍で、2016年にバフェット氏が購入した時と比べるとはるかに高いバリュエーションとなっています。
もし、アップルの未来に大きな成長機会が広がっているのであれば、これほどのバリュエーションも正当化できるのかもしれません。しかし、現時点でそのような見通しはありません。現在のアップルは十分に成熟した企業です。2023年9月期の売上高は、前年比2.8%減でした。ウォール街のアナリストは、アップルの売上高が今後3年間で年率4.2%の成長にとどまると予想しています。
アップルは世界で最も傑出した企業の1つです。それに異論を唱える人はいないでしょう。しかし、もはや堅実な投資先とは言えないでしょう。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アメリカン・エキスプレスは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。元記事の筆者Neil Patelと同氏の顧客は、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアップル、バークシャー・ハサウェイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。