先週の振り返り=「日本株高=円安」に変化の兆し
米ドル/円、最大値幅はほぼ1円程度の小動きに
先週の米ドル/円は150円台前半の小動きに終始しました。米ドル高値は150.7円、一方安値は149.6円で、最大値幅はほぼ1円程度にとどまりました(図表1参照)。手掛かり材料が乏しく日米金利差も大きな変化がなかったこと、2月19日(月)が米国、そして23日(金)は日本の主要な金融市場が休場で取引参加者が少なかった可能性があること、さらに日経平均がバブルの高値を更新するなど株式相場に関心が高まる中で、為替相場への関心が相対的に低下したことなどの影響が考えられました(図表2参照)。ただし、株高との関係で言えば、年明け以降続いてきた「日本株高=円安」の連動に変化が出た点は少し注目してみたいところです。
海外投機筋の円売り一段落が、米ドル安・円高への後押しとなるか
2023年以降、日本株が一段高に向かう局面では、「株高=円安」が連動する傾向が見られました。主に2023年4~7月、そして2024年1月以降の2つの局面でした。これは、日本株一段高のリード役の1つと見られた海外投資家が、円安に伴う為替損失を回避するべく日本株買いと円売りを同時に行うことが一因と見られてきました(図表3参照)。
2023年7月「日本株高=円安」が一段落した後に、米ドル/円は145円程度から137円台へ急反落に向かいました。これは海外投資家の円売り一巡の影響もあったのでしょうか。
2023年7月と今回の違いは、今回は先週にかけて日本株の一段高が広がる中で円安はそれに追随せず、両者のかい離が目立ってきたという点です。これは、円がすでにここ数年の最安値圏まで下落してきたことにより、さすがにさらなる下落余地は限られる可能性があるとの判断から、海外投資家も為替損失回避の円売りを止め始めた可能性を感じさせます。
そもそもCFTC(米商品先物取引委員会)統計などを見る限り、海外の投機筋の米ドル買い・円売りには「行き過ぎ」懸念が強くなってきました。2023年7月も、投機筋の円売り越しが12万枚程度で拡大が一巡した後に、上述のように米ドル/円は比較的大きく反落に向かいました。そして先週にかけて、投機筋の円売り超しは再び12万枚以上に拡大しました(図表4参照)。
米ドル買い・円売りの主導役の1つである海外投機筋の米ドル買い・円売りの一段落が、米ドル高・円安の一巡、そして米ドル安・円高への動きを後押しすることになる可能性は少し注目してみたいところです。
日本株の短期的な「上がり過ぎ」懸念も強まる
上述のように「日本株高=円安」は、最近にかけてかい離が目立ってきましたが、そもそも日本株自体さすがに短期的な「上がり過ぎ」懸念も強くなってきたので、このまま円安を置き去りにした形で日本株高だけが続くことにも自ずと限度があるのではないでしょうか。日経平均の90日MA(移動平均線)かい離率はプラス10%を大きく上回り、経験的には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いことを示しています(図表5参照)。
日本に限らず、米国も含めて株価が短期的な「上がり過ぎ」の反動により下落に転じ、米国などの金利低下を後押しするようなら、日米金利差を通じて米ドル高・円安が一段落し、米ドル安・円高に転換する可能性が高まることになるでしょう。
今週の注目点=GDPコアデフレータ発表など
今週の注目は、2月29日(木)にFRB(米連邦準備制度理事会)が注目するインフレ指標のGDPコアデフレータの発表です。前年比の伸び率が前回の2.9%から2.8%へ鈍化するとの予想になっていますが、1月米CPI(消費者物価指数)などが予想外に上昇し、インフレ再燃への懸念が浮上、米金利上昇を後押ししたこともあり、予断は許せないでしょう。
そして金曜日からは3月に入り、2月の米経済指標の発表が本格化します。米景気は、年明け以降も3%前後という「緩やかな景気回復」が続いており、「米金利低下=米ドル安」も基本的に限られる状況に変わりないと見られていますが、果たしてどうでしょうか。
以上のことから、「株高=円安」の流れにどの程度の変化が出てくるかが当面の焦点であり、それに変化がなければ「米金利上昇=米ドル高」がすぐに大きく崩れる可能性は低そうです。そうしたことを踏まえて、今週の米ドル/円の予想レンジは148~151.5円で想定したいと思います。