先週の上海株式市場と深セン株式市場、香港株式市場は揃って大幅続落となりました。下落の要因としては2つあります。1つは米国FRBが量的緩和縮小を示唆したことから新興国の株式市場から一気に資金が流出し、アジアの株式市場全体が大幅安になったこと。もう1つは中国の流動性逼迫への懸念です。中国の流動性逼迫への懸念について説明しますと、短期の銀行間取引金利の指標である翌日物金利が、先週週初に5%ほどだったのが、20日(木)には一時25%(過去最高)にまで異常な急騰を見せました。しかし、中国人民銀行(中央銀行)が資金供給を手控えていましたので、金融的な混乱が生じるとの懸念が拡大しました。ただ、6月21日(金)には中国人民銀行が大手銀行に資金供給を促したとの思惑が拡がり、金利は落ち着き、中小規模の銀行はとりあえず反発しています。ただし、依然として短期金利は年初来平均の2倍以上の水準でまだ完全に落ち着いたとは言えない状況です。

中国の流動性が逼迫している理由ですが、将来のバブル発生を防ぐために、中央政府が信用拡大を本気で止めようとしていることがあります。もともとは2008年の金融危機時に中国が4兆元の大規模景気刺激策を打ち出したことが原因です。これは短期的に中国経済の復調を促しましたが、その資金の多くは過剰な設備投資と、投資・投機に廻りました。銀行は業績を上げるために厳しい規制をかいくぐる形で迂回融資を行い、一般投資家向けの理財商品(高利回りの資金運用ファンドなど)の販売を推し進めてきました。しかし、それが過剰な設備投資につながり、理財商品については、保有債権を小口債券化して販売し、その資金を不動産融資に回すなど、米国のサブプライムローンと似た状況が見られ、その運用に関する不透明さ、一部のファンドで支払いが滞ってきていることなど社会的な問題になっています。

中国政府の意図はこのようなバブルにつながる不正な資金の流れを根絶しようとしていることにあります。こうして、不正な輸出入による中国への資金流入を厳しく取り締まる規制や、理財商品に対する規制を発表しているわけです。もちろん、資金が逼迫しすぎて銀行が倒産するような社会的混乱が起こるのはいけませんが、その時は中央銀行が資金を供給すれば済む話しですから日本のマスコミで書かれているような中国の金融システム崩壊といった可能性は低いと思います。しかしいずれにしても資金供給がタイトな状況は続くことになりますから、当面、株式市場は軟調に推移する可能性があります。

コラム執筆:戸松信博