2024年1月10日に米国でビットコインの現物ETFが承認された。ブラックロックを含む11銘柄すべての申請が承認された直後には、ビットコインの売り買いが交錯し、ボラタイルな値動きとなった。期待先行で価格が急上昇してきたためイベント通過後の売りが警戒されたが、前日に起きたSEC(米国証券取引委員会)の誤報騒動で一時的な急騰と急落を経験したからか、大きな調整売りがかえって入りづらい状況となった。執筆現在もビットコインの相場は荒い値動きのまま方向感に乏しい展開となっている。

出所:Tradingviewよりマネックス証券作成

昨年6月に米国でブラックロック等の複数の企業がビットコインの現物ETFを申請してから、SECと申請企業の間で話し合いが続いていたが、それがようやく決着を迎えた。機関投資家を中心とする幅広い投資家層の参入を促す材料として大きな注目を集める現物ETFが承認された今、果たしてどれほどの影響を市場に及ぼすだろうか。今後の相場予想を考える。

ビットコイン現物ETFはどこまで相場を押し上げるのか?

米国でビットコインの現物ETFが実現した後、ビットコインの価格は短期的な調整局面を迎えるとの予想が強まっている。

ブラックロックによる申請が話題となった2023年6月頃、あるいは同社申請のETFが米国証券保管振替機関の適格リストに掲載されていることなどがきっかけで承認期待が一気に高まった同年10月頃、ビットコインの価格はBTC=393万円(27,000ドル)前後で推移していた。そこから直近にかけては約75%プラスとなるBTC=691万円(47,500ドル)付近まで上昇しており、その期待はすでに織り込み済みであるとの見方が大きい。米国でビットコインの先物ETFが承認された2021年10月を振り返ってみても、承認から約1ヶ月後に上昇ピークを付けた後、FOMCのタカ派的な内容も影響してだが、大きく下落している。今回も期待先行で急ピッチの上昇が続いているため、承認後に上昇した場合も何かの悪材料を受けて調整売りが強まる可能性はある。米国ではビットコインの現物ETFが承認され、次はイーサリアムの現物ETFも承認されるのではとの思惑が強まっており、アルトコイン物色の過熱感も一つの指標になるだろう。

一方、米国でビットコインの現物ETFがスタートし、ビットコインの価格は中長期的に上昇していくとの予想は一致している。

そもそもビットコインの現物ETFがこれだけ期待されているのは、金をはじめとするコモディティがETF化によって時価総額を大きく伸ばしてきた歴史があるからだ。特にビットコインと比較されることの多い金は、2004年に現物ETFが承認されてから金融市場における取引が拡大し、約20年後となる今では当時の価格から約5倍となる1オンス=2,000ドル付近で安定して推移している。

ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]は、ビットコインが金を代替する資産クラスに成長した場合、BTC=2124万円(146,000ドル)が長期的な価格目標になると指摘したレポートを過去に発表している。また最近ではスタンダードチャータード銀行が現物ETFによってBTC=2910万円(200,000ドル)に達する可能性があると予測しており、ビットコインも現物ETFの承認から5年、10年、20年という期間を経て現在の価格から数倍以上の水準で推移するようになることは十分に考えられる。

過度な期待からの調整局面を迎えても、新規参入による市場拡大で中長期での上昇を期待

このように直近のビットコインは現物ETFに対する過度な期待が消化されることで短期的に下落するリスクが高まっている。その中で高値掴みをしてしまったと不安になる投資家も増えるだろう。しかし、この先に調整局面を迎えた場合でも、ETFを介した投資家参入によって市場が徐々に拡大することを考えればむしろ絶好の買い場であり、中長期的な上昇に備えて定期的な積み立てを続けることで下落リスクを軽減することができる。

そして次の大相場を引き起こす大きな材料として意識されるのは、今回で4回目となるビットコインの半減期である。現在のマイニングペースでは5月初旬に半減期を迎える予定となっている。現物ETFの過熱感が落ち着いた後、2月か3月にはメディアやSNSで「半減期」というキーワードを目にする機会も増え、織り込みが本格化するだろう。現物ETFの承認を受けて需要サイドが大きくなっている分、半減期で供給ペースが低下することで価格上昇を期待しやすくなっている。そのため過去3回の傾向に従って半減期にかけては買いが強まる可能性が高い。

このように米国でビットコインの現物ETFが承認されたことで、今回も半減期アノマリーが継続する期待が高まっている。半減期についてはまた別の機会に触れたいと思うが、2024年のビットコイン相場展望記事でも述べたように、今年はより多くのお金が金融市場から暗号資産市場へ流入し、上昇相場が継続することが期待される。