モトリーフール米国本社、2023年12月24日 投稿記事より

主なポイント

・アップルはバフェット氏の投資で最大の成功を収めた銘柄の1つであり、今でも最大の保有銘柄である
・しかし、成長の鈍化と高いバリュエーションにより、今後も高いリターンをもたらす可能性は低くなっている

これまで市場をアウトパフォームしてきたアップル[AAPL]を、なぜ悲観視するのか

ウォーレン・バフェット氏の実績に異論を唱えることはできないでしょう。バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の最近の大勝利を見れば、同氏の運用能力が衰えていないのは明らかです。大勝利とは、まさにアップル[AAPL]に他なりません。

「マグニフィセント・セブン」の一角を占めるアップルの株価はわずか5年間で384%上昇しており、ナスダック総合指数の125%上昇をはるかに凌いでいます。株主の中には、アップルが今後も有望な投資対象であり続けると、当然のように考える人もいるでしょう。

しかし、この考えに否定的な見方もあります。それどころか、2024年になる前にアップル株を売却するのが賢い選択だという意見もあります。その理由は以下の通りです。

割高で不利な投資環境、急成長は既に過去のものかもしれない

ある銘柄が長期の投資先として適切かどうかを検討する前に、取り巻く環境を理解する必要があります。言い換えれば、その銘柄のリターンが将来的にどこからもたらされるかを見極めることが重要です。このようなレンズを通してアップル株を見ると、アップルが長期的に市場をアウトパフォームし続けると確信するだけの、正当な理由は見当たりません。

まず、アップルは成熟した企業です。売上高が急成長した時代は、既に過去のものとなっている可能性があります。2023年9月期の売上高は前年比2.8%減でした。他のマグニフィセント・セブン銘柄を見ると、1社を除いて、直近四半期で2桁の増収率を記録しました。唯一の例外は電気自動車(EV)メーカーのテスラ[TSLA]で、第3四半期は9%の増収にとどまりました。

iPhoneは依然として、アップルの売上高の50%超を占めています。主要市場で飽和状態に近いとみられる製品に依存していることは、大幅な売上高の増加に理想的な状況とは言えません。業績を大幅に押し上げるような画期的な製品を発表しない限り、アップルの成長に大きな期待は持たない方が良いと思われます。

また、現在の株価収益率(PER)は31.8倍であり、株価は割安ではありません。アップル株の過去10年間の平均PERは20.7倍です。その意味でも、冷静な投資家であれば、アップル株が過大評価されているとの見方に疑問を持つことはないでしょう。つまり今後は、力強いリターンを期待することはできない可能性があるということです。

バフェット氏が動かない中、個人投資家たちはどう考えるのがよいか

鋭い読者であれば、バフェット氏とバークシャー・ハサウェイが依然として大株主であるという単純な事実を指摘して、上記の主張に反論するかもしれません。バークシャー・ハサウェイは現在、アップルの発行済み株式の5.9%を保有しており、1,780億ドルの価値があります。そして、バフェット氏が近いうちにアップル株を売却するとは思えません。

これには多くの理由が考えられます。バークシャー・ハサウェイは、保有するアップル株に対して四半期ごとに多額の配当金を受け取っています。また、アップルは驚くほど積極的に自社株買いを行っており、バークシャー・ハサウェイの持ち株比率は上昇し続けています。

税負担も問題になるかもしれません。バークシャー・ハサウェイがアップル株を手放した場合、複利で繰り延べられてきた莫大な税支払いを内国歳入庁(IRS)から要求されることになるでしょう。

バークシャー・ハサウェイが持つ1,570億ドル(9月30日時点)という巨額の保有現金からすると、バフェット氏は足元で、多額の資本を投じる魅力的な投資先が見つからないのかもしれません。もしアップル株を手放すとなれば、現金残高は2倍超に膨れ上がります。

バフェット氏がアップルの株主であり続けるもう1つの理由として考えられるのは、現在の規模と割高なバリュエーションにもかかわらず、アップルが引き続き賢い投資先であると同氏がシンプルに考えていることです。バフェット氏にとってアップルは永遠の保有銘柄なのかもしれません。

しかし、個人投資家の皆さんは、自分で考える必要があります。アップルは間違いなく、米国史上最も成功した企業のひとつです。しかし、事実を見る限り、同社がこの先数年間で並外れたリターンを達成するのは難しい可能性が高い、というのが現状です。

これこそが、2024年になる前にアップル株を手放すことを検討する理由です。

免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Neil Patelとその顧客は、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアップル、バークシャー・ハサウェイ、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。