先週の上海総合指数と深セン総合指数は週末にかけて大きく上昇しました。構成銘柄に中小型株の多い深セン総合指数は年初来高値を更新。週初は、国営の中国証券報が中国の政策担当者らのコメントとして中国の経済成長は着実に進んでいるとして、新たな刺激策の必要はないと報道したり、同じく国営の新華社通信が李克強首相のコメントとして、市場は景気刺激策を当てにすべきではないなどと報道し、株価にとってはマイナスのニュースが続きました。しかし、中国の内閣にあたる中国国務院が5月15日(水)深夜、都市交通、天然ガスなどの分野の投資プロジェクトの投資権限を地方政府に与えると発表。これで新たな景気刺激策への期待が一気に高まり株価の上昇につながりました。

一方、5月13日(月)には中国の4月の各種経済統計が発表されていますが、これらはどちらかというと、中国経済が伸び悩んでいることを示唆する内容でした。まず、小売売上高は前年同月比12.8%増となり、3月の12.6%増から加速したものの伸び悩んでいる印象があります。鉱工業生産は前年同月比9.3%増となり、3月の8.9%増からは加速したものの、事前の市場予想である9.5%を下回りました。また、1-4月の都市部固定資産投資は前年同期比20.6%増でしたが、こちらは1-3月の20.9%増、事前の市場予想である21%増を共に下回っています。

香港株は反落となりました。ただ、これは新たなマイナス材料が出たというよりは、3週間続いた上昇基調のあとに、利食い売りが出たといった側面が強いように思われます。したがって、調整をこなしたあと、再び上昇基調に戻ると予想します。急激な緩和策を展開している日本や米国に対して、中国は引き締め気味の政策をとっており、これが香港株の重しになるといった心理的な懸念が働いていることは事実と思いますが、中国本土の証券市場に比べて香港証券市場は外国人投資家の資金が流入しやすいため、日米の大規模金融緩和策による流動性向上の恩恵が受けられるため、今後も資金流入が続き、緩やかな株価上昇が期待できると思います。

コラム執筆:戸松信博