◆前回ニューヨークに行ったのは2019年の秋だった。その後、コロナ禍でしばらくご無沙汰したが今回丸4年ぶりにニューヨークを訪れた。シカゴに寄ってからニューヨークに行ったせいか、ニューヨークの猥雑ぶりが目についた。それだけシカゴの街が(意外に)綺麗だったということでもある。

◆サンフランシスコほどひどい状況ではないが、ニューヨークもだいぶ荒んだようだ。街が汚いのは今に始まったことではないが、その度合いが一段と悪くなったように感じた。昔からホームレスや物乞いが多かったが、以前の彼等はじっと座っているだけだった。ところが今回は何度も、彼らのほうから近寄ってきて無心された。「俺はこんなに寒くてもTシャツしか着るものがない。2ドルくれ」要求がずいぶん具体的であった。

◆マンハッタンのアベニュー/ストリートのどこにでもマリファナの匂いが漂っていることにも閉口した。ニューヨークはまだ合法になっていないが、ハドソン川一本隔てたニュージャージー州では合法だ。ニュージャージーのオフィスや住居に行き交うものが多いため、当然のようにマンハッタンでもマリファナが「事実上」OKとなっている(つまり捕まらない)という。

◆ドラッグ中毒者なのか分からないが、奇声をあげている者、大声で叫んでいる者など異常な行動をする人間も目に付いた。現地の知り合いはスターバックスのコーヒーを手に地下鉄に並んでいると、明らかに「やばい」人が近づいてきてコーヒーカップを叩き落とされたという。治安は確実に悪化している。

◆人が多いのも昔からだが、一段と拍車がかかっていると思う。マンハッタンの渋滞が劣悪だ。前回のニューヨーク訪問についてのコラムではウーバーなどのライドシェアを利用することで歩く機会が減ったと書いた。しかし今回は渋滞で時間が読めないため、移動手段を徒歩と地下鉄に戻した。おかげでいい運動になった。

◆街中の渋滞もひどいが、JFK空港へ向かうフリーウェイの渋滞もひどい。ドライバーが怒っていた。「この渋滞は工事のせいだが、もう6年もやってるんだ。しかも、チンタラやってるから全然、工事が捗らない。渋滞の原因を作っているのが、こうしてフリーウェイに停まっている工事車両のトラックだ。だが運転手を見てみな。スマホでゲームをしてやがる。こっちのトラックの運ちゃんは居眠りだ。これじゃ工事が進むわけないよ」

◆そこにはアメリカのインフラの老朽化、人手不足、労働争議と組合の関係、いろいろな問題が絡んでいる。しかし、アメリカは、いやニューヨークは、様々な問題を抱えながらも依然として人を惹きつける都市であるには違いない。レストランやライブハウスなどはどこも満席で予約をとるのに苦労した。昔は、ふらっとジャズを聴きにいけた店も、今回は入れなかった。

◆年寄じみて我ながら嫌なセリフだが、「昔のニューヨークは良かった」との嘆息が口に出る。しかし、それでも僕はこれからもニューヨークに通うだろう。汚くなっても構わない。なぜなら「清濁併せ呑む」のが現実の世の中であり、ニューヨークはそのリアルな世界をいちばん感じさせてくれる場所だからである。ニューヨークとは一生付き合っていきたい、そんな街である。