「5つのP」を基準に、運用会社を考える

投資信託を購入する場合、資産配分を決める→商品を選ぶという順番で考えるのが一般的です。それはそれで良いのですが、商品を選ぶ前に、投資信託を設定・運用している運用会社(=委託会社)についても関心を持ってみてはいかがでしょうか。

なぜかというと、商品を設定・運用する会社次第で商品も変わってくると思いますし、運用会社の運用哲学なりがあって、それに沿った商品が並んでいるというのが本来の姿だと考えるからです。

一般的に、運用会社を評価するチェックポイントとして「5つのP」が知られています。これは投信評価会社や金融機関などの機関投資家が運用会社を選定する際にチェックする項目として挙げられるものです。

具体的には次の5つです。

1.Philosophy(フィロソフィー):投資哲学
2.Process(プロセス):投資プロセス
3.Portfolio(ポートフォリオ):投資対象の選定と構成比率
4.People(ピープル):運用体制
5.Performance(パフォーマンス):運用実績

これら1~5のポイントに沿って、運用会社についても検討すると良いでしょう。

例えば、運用会社のトップやファンドマネジャーの話を聞いて、1の「投資哲学」に共感したという場合もあるかもしれません。しかし、1だけでそのファンドマネジャーが運用する投資信託の購入を決めてしまうのは時期尚早です。

2の「投資プロセス」(例えば株式投信なら、どのようなプロセスで投資する企業の選定を行っているのか)や、3の「ポートフォリオ」(1と2に沿った中身になっているかなど)、5の「投資成果」(実際の運用成績は?)なども、併せてチェックしましょう。

また、4の「運用体制」ではファンドマネジャーやアナリストの育成方法や評価方法なども確認したいところです。要は、1~5のどこかにフォーカスするのではなく、トータルでバランス良く、調べて吟味することが大事です。

自分に合った運用会社を見極める4つの視点

では、どのような点を見れば、「5つのP」のポイントがより理解できるのでしょうか。

1.運用会社の公式サイトを参考にする

以前、海外の運用会社のインベストメントセミナーに参加する機会がありましたが、その運用会社の公式サイトでは、運用哲学のところに「投資哲学」や「投資スタイル」、「運用プロセス」などがしっかり記載されていました。公式サイトにこのような開示情報があるかないか、ある場合にはしっかりした内容が書かれているのかを確認しましょう。

2.目論見書を確認する

投資信託の交付目論見書の「委託会社情報」や「ファンドの目的・特色」の箇所を読んでみましょう。運用会社によっては、投資哲学や運用基本理念、運用コンセプトなどが詳しく書かれているものもあります。

3.本を参考にする

運用会社の経営者やファンドマネジャーなどが執筆した書籍の他、新聞や雑誌などでインタビューが掲載されることがあります。そのような記事を読んでみても良いでしょう。

4.セミナーに参加する

運用会社や販売会社主催のセミナーに参加してみるという方法もあります。上記の1~5について、わからないことがあったら、積極的に質問してみても良いでしょう。

日本の場合、大手金融グループの傘下にある資産運用会社が多く、会社としての投資哲学や運用プロセス、運用戦略などを開示している会社は少数ですが、徐々に改善しつつあります。

また、2023年9月には日本における第1回「モーニングスター・ファンド・アワード第1回のファンド・アワード」を発表しましたが、リターン・リスクといった定量評価に加え、「運用会社」「運用プロセス」「運用担当者」など定性評価を加味したグローバル基準での評価を行っています。このようなアワードも参考になるかもしれません(※)。

最後に、あるファンドマネジャーの方が理想のファンドは「運用担当者や(所属する)運用会社の社員が買いたいと思うような投資信託」と以前話されていたのがとても印象に残っています。

運用会社やファンドマネジャーに話を聞く機会があったら、「(自分が運用している)投資信託を持っている?」「金融資産の中で比率はどれくらい?」などと質問してみても良いかもしれません。米国の投資信託では運用担当者の経験・実績や、運用する投信の保有の有無なども開示されています。日本でも、このような開示がより進む方向にいくと良いと考えます。


(※)2023年9月28日 日本における第1回「モーニングスター・ファンド・アワード」最優秀・優秀ファンド発表
https://ibbotson.co.jp/about-us/news-release/