FOMC 政策金利据え置き/2024年利下げ予定は2回に変更
先週のS&P500は2.93%下落、ナスダック100については、2.34%の下げで終わり、両指数共に3週連続の下げとなりました。
9月20日のFOMCでは、市場の予想通り政策金利は据え置かれました。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)が2024年4回かけて行うと想定されていた利下げが2回に変更になりました。またパウエルFRB議長が、米国経済のソフトランディングは基本ケースではないかもしれないというコメントをしたことで、FOMC(米連邦公開市場委員会)の前日4.36%だった米10年債利回りは, パウエル議長の声明後4.4%を超えてしまい、先週22日(金)には一時的に4.5%を超えてくる展開となりました。このような金利の上昇が、株式市場を押し下げた要因と考えられます。
また、先週は原油価格が2022年11月以来、10ヶ月ぶりの高値をつけ91ドルを超えたことも金利の上昇に拍車をかけました。
市場の懸念1:自動車業界のストライキ
米国ではUAW(全米自動車組合労働)とデトロイトの大手自動車メーカー3社との労使交渉が合意に至らず、9月15日に3社の3工場でストライキに突入し、今も交渉が続いています。
先週22日(金)には、ストライキの対象となる施設が全米20州、38か所に拡大されることになりました。およそ18,600人以上の組合員がストライキに参加しているようです。UAWに加盟しているメンバーは全体で15万人いると言われています。UAWは、自動車メーカー3社は2023年前半だけで合計210億ドルの利益を上げていることを指摘し、4年間の契約期間で約40%の賃上げを求めています。
これに対し、企業側は約20%の賃上げを提案しています。アメリカ労働統計局によると、自動車業界の労働者の平均時給は約28ドルで、これは前年よりも約1ドル増加した額です。給与は、労働者がその自動車メーカーで働いてきた年数によっても異なるのですが、UAWはこの二層式の賃金体系を撤廃することも条件としています。2007年以降に入社した人たちは、時給は最大で約17ドルまでとなっており、確定給付型の福利厚生も享受できていません。また、UAWはすべての従業員に対する年金制度、週4日32時間という労働時間、さらに有給休暇の拡大も求めています。
米国でこのような賃上げの要求が起きる理由は、自動車メーカーの好業績に加えて、UPSやアメリカン航空など、他の労働組合が2023年同様の賃上げ交渉に成功したことによる影響を受けています。バイデン大統領は9月26日に現地を訪れて、組合員を支持する姿勢を示すとSNSで発表しました。 トランプ元大統領も、9月27日に予定されている2回目の共和党大統領候補のディベートには今回も参加せず、バイデン大統領の翌日組合員を訪れるとしています。このストライキは、2024年の大統領選挙の票の確保と、政治的に利用されつつあります。
市場の懸念2:2018-2019年以来の「政府閉鎖」リスクの高まり
また、米国の2024会計年度(2023年10月から2024年9月)の予算に関する下院の議論が難航する中、10月1日から一部の政府機関が資金不足となり「政府閉鎖」が起きるリスクが高まっています。この背景には、バイデン政権に対し予算を大きく削減するよう迫る共和党の保守的なグループが、短期的な資金供給を提供する「暫定予算」への支持を拒んでいることが挙げられます。
「政府閉鎖」が起きると、政府が行っているサービスが一時的にストップしてしまいます。
1995年-1996年の政府閉鎖の時には、社会保障とメディケア(65歳以上の高齢者や、特定の障害を持つ人々への国営健康保険プログラム)が影響を受け、給付金受け取り対象者への小切手の支給は続けられましたが、給付の確認やカードの発行は中止。1日に1万人以上のメディケア申請者が一時的に拒否されるということがありました。
2018-2019年の政府閉鎖中には、航空交通管制官や交通保安庁(TSA)の職員が給与なしで働くこととなったため、航空旅行に大きな影響が出ました。TSAの職員の一部が出勤しなかったため、旅行者はより長い待ち行列に直面し、セキュリティチェックポイントが閉鎖されました。さらに、10名の航空交通管制官が不在となったことで、一時的にラガーディア空港でのフライトが停止、それにより主要な空港で遅延が生じたりしました。
歴史的に弱い9月の米国株、大きく下がるが驚きに値せず
米国ではこのような出来事が起きつつ、9月に入ってからの米国株が弱含んでいます。そもそも9月の米国株は歴史的に弱い月となっており、その中でも9月18日から月末までの最後の10日間のマーケットが1年間で最も下がりやすい10日間です。
2023年9月最初の10日間でS&P500は1.27%下落しました。1928年からのこの間の平均変化率は0.36%の下げで、最後の10日間については、1.11%の下げとなっています。しかし、今回のように最初の10日間の下落率がこれまでの平均を下回るとすると、最後の10日間の下落率は平均で1.66%となるのです。そういった意味では、このところの下げは驚くには値しないとも言えるでしょう。